001 リチウムイオン二次電池の容量について
みなさんどうもこんにちは。
今回は電池の容量について、基本となる知識をなるべくわかりやすく解説していこうと思います。
みなさんは電池の容量についてmAh(ミリアンペアアワー)という値を
一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
スマートフォンやパソコン、ワイヤレスイヤホンなどあらゆる機器で
電池容量を比較する場合に電池の容量の大小の目安となっていますね。
では、具体的にこの値が何を表していて、何によって決められているかはご存知でしょうか?
結論かいら言いますとmAhは1時間あたりにどの程度電流を流せるかの値で
正極活物質によって電池容量mAhが決まっています。
この材料のおかげでみなさんお使いの様々なデバイスが動いているのですが
実はリチウムイオン二次電池においては基本的なことを知っていれば
自分で大まかな値を算出することも容易にできるようになります。
別に自分で計算できなくてもいいのでは?と思いの方もいらっしゃると思いますが
すでに始まっている電気自動車、IoT化の急速な進展によって
電池が私たちのより身近な存在になることが予想されます。
その際に電池の基礎となる知識を抑えておくことで
みなさんがデバイスの性能の良し悪しを比較される際の一助となると思い記事を作成しております。
なるべく専門的な知識をわかりやすく噛み砕いで解説いきますので
ご一読いただけると幸いです。
それでは今回はリチウムイン二次電池の電池容量について以下の流れで解説していきます。
ポイントは以下の点です。
○ファラデー定数=96500(C/mol)
○それを3600で割る≒26805.5(mAh/mol)=この値さえ覚えればOK!
(別に覚えなくてもOK!)
○あとは充放電に寄与する活物質のLiの数とモル質量がわかればOKです!
以下の流れで電池容量を算出できます。
LiCo02(コバルト酸リチウム)の場合
Liの数=1
モル質量=97.87(g/mol)
ファラデー定数≒96500(C/mol)≒26805.5(mAh/mol)
理論容量=(Liの数✖️ファラデー定数)/ モル質量
=(1✖️26805.5)/97.87
≒273(mAh/g)
実容量はLi=0.5
≒137(mAh/g)
例:電池容量3000mAhの電池をLiCoO2で作る場合
137(mAh/g)✖️21.9(g)=3000(mAh)
なので21.9gを正極に使用すればセルが作れるということになります。
1 正極活物質について
簡単に言ってしまえばプラス極に入っている材料のことです。
この材料にリチウムがどの程度含まれているのかで
リチウムオン二次電池は電池容量が決まります。
そして正極活物質とセパレーターを介して負極活物質があり
この正負極の間でリチウムが行き来することで、充電と放電が起きています。
例えていうなら正極活物質がピッチャー、負極活物質がキャッチャー、
リチウムがボールといったイメージがわかりやすいでしょうか。
このピッチャーがどれくらいの球数を投げることができるか(Liの数)によって
リチウムイオン二次電池の電池容量が決まります。
代表的なものを以下に記載します。
1 LiCo02(コバルト酸リチウム)
=通称LCO ノーベル賞のグッドイナフ先生のところで研究していた水島さん(東芝)が発見
2 LiNi0.33Mn0.33Co0.3302
=通称三元系 LCOの親戚 現在の主流の活物質
3 LiFePO4(オリビン酸鉄リチウム)
=通称LFP 安全性、コスト面に優れる
正極活物質にについても今後個別で記事を作成していきます。
この対の材料としてマイナス極に入っている材料は負極活物質と言いますが
こちらはリチウムを受け取る役割ですのでセル容量に直接は関係しません。
細かいことを言えば、受け取る量が多ければそれだけ負極の材料を減らせるので
トータルで見た電池の容量としては向上するのですが、こちらは別の機会に解説しようと思います。
2 Liの数、モル質量、ファラデー定数、遷移金属元素の価数変化
LiCoO2はLiの数は1です。
そしてモル質量は97.87(g/mol)
モル質量の計算方法は検索すればすぐに出てきますので割愛します。
そしてここで重要なのが遷移金属元素の価数変化です。
漢字を見ていると難しそうに見えてしましますが、大丈夫です。
遷移金属元素というのは CoやNiなどいわゆるレアメタルの部分です。
ここではCoのことですね。
そして価数というのは元素固有に割り当てられている数字でして
例えばLi=+1、O=-2という形です。
イオンとなった際の電子の数を形式的に表しているのですが
ここで大事なのはLiCoO2のトータルで0にするという考え方です。
Li=+1、O=-2✖️2=-4ですのでこのままだと-3です。
ですので Co=+3でちょうど0になります。
充電していない初期の状態では LiCoO2のCoは3価であることがわかります。
では充電をしてLiを引き抜くとどうなるでしょうか。
Li=+1ですので、 CoO2ではトータルの値が-1となってしまいます。
そこでCoの価数が変化し+4(4価)となり、これでトータル0となります。
このLiが引き抜かれた後にCoなどの価数が変化してトータルで0とする考え方を
専門用語では電荷保証と言います。
つまり正極活物質を充電する際には
Liの数の減少とCoやNiといった元素の価数の増加が同時に起きています。
正極活物質にLiだけが多くあったとしてもこの価数変化に対応できる元素がなければ
Liを引き抜けない=充電できませんので、この元素も非常に重要であることがわかります。
3 理論容量と実容量
理論容量の計算にはファラデー定数を用います。
この定数は電子1molあたりの電荷を表していますが
ここでは単位をmAhに変換する必要がありますのでクーロン(C)に注目します。
C=As(アンペアセカンド)です。
1クーロンは1アンペアが1秒で流れた場合と定義しているんだなと
何となく理解していただkれば大丈夫です。
F≒96500(C/mol)=96500(As/mol)
さらにAをmA、sをhに変換するためには3600で割り、1000をかけることになりますので
ファラデー定数≒96500(As/mol)≒26805.5(mAh/mol)となります。
これで単位にmAhが入りましたね。
あとはLiの数とモル質量で理論容量がすぐに計算ができます。
LiCoO2はLiの数は1、モル質量は97.87(g/mol)
理論容量=(Liの数✖️ファラデー定数)/ モル質量
=(1✖️26805.5)/97.87
≒273(mAh/g)
実容量はLi=0.5
≒137(mAh/g)
ここで出てきた実容量についてですが
LCOではLi=1を引き抜くと結晶構造が崩れてしまうため
実際にはLi=0.5程度の充電に抑えて使用する必要があります。
大体の正極活物質はこのように理論容量限界まで使用することはできずに
構造が崩れない範囲で使用されています。
以上、正極活物質の電池容量計算のポイントをまとめると
○ファラデー定数=96500(C/mol)≒26805.5(mAh/mol)=この値さえ覚えればOK!
○あとは充放電に寄与する活物質のLiの数とモル質量がわかればOK!
ということになります。
今後新しい物質についても解説させて頂こうと思いますので
ご興味ありましたら読んでいただけると嬉しいです。
今回は以上となります。
読んでいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?