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ドイツの総選挙の結果を見て
1. はじめに
2025年2月23日にドイツで総選挙がありました。
結果は、与党のSPDが敗北、CDU・CSUが一応、勝利したものの約28.5%の得票率しか得ることができなく、完全な勝利とは言えない状況です。
今回の選挙結果は、経済の停滞や移民問題、ウクライナ情勢や米欧関係などに対する国民の不満が反映されたものとされています。
特に、ウクライナ問題に関しては、支援疲れや自分たちの経済も停滞している中、ウクライナを支援している余裕がないこと等が印象づけられました。
また、移民問題でも、ドイツ国内の移民が事件を起こし、移民に対して、反対運動が過激化する傾向になってきています。
極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は20.5%の得票率を獲得し、第2党に躍進しています。
事前にイーロンマスクがAfDを支持して、選挙応援していたこともあり、AfDが圧勝かと思われたが、案外得票率を伸ばさなかったことには驚きました。
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2. 今後の連立政権
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CDU・CSUが第一党になったとはいえ、過半数に達していないから、連立先を見つけることになりますが、党首のフリードリヒ・メルツ党首はAfdとの連立は明確に否定しています。
そうなると、他党、特に緑の党との連立が予想されますが、それでもCDU・CSUが約28.5%、緑の党が約11.8%の得票率となっており、過半数には達しないため、安定政権を築くのは困難となります。
したがって、現時点では単に緑の党だけを連立相手にするのではなく、他の与党候補との協議が不可欠となると考えられます。これにより、連立全体で議会の過半数を上回る形にして、政府の安定性を確保する狙いがあると言えるでしょう。
2-1. CDUと緑の党の政策の違い
CDU(キリスト教民主・社会同盟)と緑の党の政策の違いは、連立交渉を難航させる可能性が高いです。特に 気候変動政策、経済政策、社会政策、移民政策 などの分野で大きな違いがあり、これらが交渉の障害となるでしょう。
〇気候・環境問題
緑の党 は、環境政策を最優先に掲げており、二酸化炭素(CO2)排出削減、再生可能エネルギーの推進、化石燃料や原子力の段階的廃止を強く支持しています。一方で、CDU は経済界との結びつきが強く、過度な環境規制による産業への影響を懸念しています。
対立点: 気候変動対策のスピードと企業規制の度合い
妥協の可能性: CDUがより柔軟な環境政策を受け入れる代わりに、緑の党が産業界の影響を考慮する形で調整する可能性
〇社会政策
緑の党 は、LGBTQ+の権利や男女平等政策、多文化共生を強く推進しています。一方、CDU はより保守的な立場をとり、伝統的な家族観やキリスト教的価値観を重視する傾向があります。
対立点: ジェンダー政策や社会的平等の進め方
妥協の可能性: CDUが一部のリベラルな政策を受け入れる一方で、緑の党が急進的な改革を抑える可能性
〇経済政策
CDU は財政規律を重視し、減税政策や企業の競争力強化を優先する傾向があります。対して、緑の党 は福祉の拡充や公的支出の増加を推進しており、特に環境関連の投資を強化することを求めています。
対立点: 財政規律 vs. 政府支出の拡大
妥協の可能性: 一部のグリーン投資(環境インフラ)をCDUが受け入れる代わりに、緑の党が財政規律をある程度尊重する形
〇移民政策
緑の党 は移民受け入れの拡大や難民支援を積極的に進める立場です。対して、CDU は移民政策をより厳格化し、統合の強化を求めています。
対立点: 難民受け入れの規模と移民政策の厳格さ
妥協の可能性: CDUが一部の移民政策を緩和する代わりに、緑の党が統合政策の強化を受け入れる形
2-2. 連立交渉のシナリオ
CDUと緑の党は、政策の根本的な価値観が異なるため、連立交渉はかなり難航する可能性があります。しかし、現実的に過半数を確保するには 「黒緑連立(CDU+緑の党)」 が有力な選択肢の一つとなります。妥協点を見つけるには、以下のような形が考えられます。
環境政策で緑の党に譲歩し、CDUが産業界の影響を抑える形で合意
財政規律の維持をCDUが優先し、緑の党が社会・環境投資の一部を削減
移民政策では、統合政策を強化する形で妥協
社会政策では、CDUが部分的なリベラル政策を受け入れ、緑の党が急進的な変更を抑制
ただし、これらの妥協が成立しない場合、CDUは社会民主党(SPD)との交渉に切り替える可能性もあるでしょう。
今回の選挙結果を考えると、連立交渉は長期化する可能性が高く、最終的にどの政党が連携するかによって、今後のドイツの政策方針が大きく変わることになります。
3. 金融市場の影響
〇為替市場
日本市場が開いた後は、ご祝辞相場からかユーロ高になっています。
しかし、後場あたりから、徐々にユーロ安になっているのが、現状です。
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もちろん、ユーロ安になっているのは、ドイツの総選挙だけが原因ではありませんが、欧州の状況が、トランプ大統領による関税、ウクライナとロシアの和平で蚊帳の外に置かれている事実等を暗示しているかもしれません。
〇株式
一方、株式を見ると、ドイツの株価指数DAXは、大きくヒゲを付けた後、現在上昇しています。
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記事作成時、米国市場は開いていないため、どうなるかまだ不明ですが、株式はご祝儀相場で上がっていると考えられます。
しかし、これからのドイツ政治次第ではまだ下がっていくことも十分に考えられます。