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ハワード・S・ベッカー『アウトサイダーズ』まとめ


真のアウトサイダー:強姦、叛逆罪などの犯罪。
違犯行為には何らかの固有の逸脱性
逸脱に関する常識的見地をそこに前提を置く科学理論はひとつの重要な変数を見逃している
 

題:逸脱に関する定義の構築-何が欠落しているか?

統計学的見地
-「逸脱は標準からの極度の頻度のズレ」
→トウモロコシの茎の丈-標準からの偏差
一般的でないものを偏奇としても記述する事が出来る。
→しかし、価値に関する多くの問題点を度外視している事によって問題を単純化している。
→規則違反に対する問題関心からは程遠い

医学的見地
-「逸脱を基本的に病理的なものと判断し、疾患の存在を指摘」
→逸脱と呼ばれる行動の種別を記述するのに、病理学の概念とアナロジーとして用いるとなると問題は大きい。

機能主義的見解
-「何をもってして社会が安定するか」
→現象の政治的局面を無視している。

相対論的見解
→逸脱は集団規則への順応の失敗
→規則決定の際に生ずる曖昧さについて問題視
逸脱-何らかの合意に基づく規則に対する違反
→ある規則を破った人々は同質のカテゴリーに属すると仮定
→逸脱は社会によって生み出されるという事実を無視している。
→逸脱は、ある人間の行為に対する他者による反応の結果
→同質カテゴリーを扱っているとは仮定できない。

⇒逸脱者というラベルを張られた人間の共通点は何か?
そのラベル、そしてアウトサイダーの烙印を押された経験


ベッカーの逸脱

「ある社会集団とその集団から規則違反者と目された人間との間に取り交わされる社会的交渉の産物」

逸脱者の個人的・社会的特性よりも、彼らがアウトサイダーとみなされるに至った過程

・判定に対する彼らの反作用(リアクション)への関心

「逸脱とは行動それ自体に属する性質ではなく、ある行為の当事者とそれに反応する人々との間の相互作用に属する性質」

ある集団が社会内の他集団に対して、自分たちの設けた規則を課そうとする事実

いったい誰が、自己の設けた規則を他の人々に押し付ける事が出来るのか。

それが成功する諸要因は何か。

規則を作り、それを他の人々に適用する力量の差異
=本質的には権力の差異(年齢、性、人種、階級の相違)
・規則は葛藤や紛糾のまと、社会の政治的過程の一領域
 

逸脱と認定されない行動

同調行動-単に規則に従い、しかも他社からもその様に認定された行動

誤って告発された行動-実際には違反行為を犯していないのに他者からその様に目された場合。
 
隠れた逸脱-不正行為はなされているが、誰もそれに気づいていない。
→この類型はパーソナリティなものに関するもの。
 


経歴の条件依存性

社会構造という客観的事実+個人の有する知見・動機、欲求の変化

逸脱経歴
第一段階-非同調行為の遂行
→何らかの特定規則軍に対する違反行為
→数多くの非同調行為が、非同調を意図しない人々によってなされる。
→規則が存在する事についての無知


何故ある種の人々は逸脱的動機付けを持ち、他の人は持たないのか。

心理学的理論:逸脱者の動機付けと行為の原因は幼児体験にあり、心理的平衡を保持するために充足しなければならない無意識的欲求が、幼児体験によって算出される。
 
社会学的理論:「緊張」の社会的構造化の起源
→個人が非合法的手段に訴えるのは、彼の社会的位置が強制した困難を解決する為であり、葛藤しあう要求を持つ。

→大前提として、行為者は逸脱行動を行う動機があると仮定。

→さらに、結果として逸脱行為を犯すに至った人間のみが、逸脱的衝動を有する、という根拠はない。

人間は見かけに比べ、空想の中では極めて逸脱的。

逸脱者が、非難の対象となる活動を欲した原因を問う代わりに、なぜ因習的な人々は自分のうちに潜んだ逸脱衝動に従わないのか?
 

「正常な人間」

-因習的な制度と行動に次第に包絡されてゆくコミットメント
→ある種の関心が、形式的にそれとは無関係な行動ラインを遂行してゆく過程。
逸脱者の教育による同調行動によって、新たな逸脱者が生まれる。
 
「正常な発達」-コミットメントの量を増やしてゆく過程
→自己のうちに逸脱衝動を発見した時、それが自分に及ぼす多方面の影響を想像する事により、その衝動を抑制する事が出来る。
 

では、非同調者はどの様にして因習的なコミットメントの脅迫力を回避できるか。

・成長過程の途中で因習社会とのもつれた絆を振り切ってしまった場合
→非行少年は法律遵守への強い脅迫力を自覚している。
→法律制度や一般社会によってではなく、非行少年自身によって妥当なものとしてみなされた逸脱の正当化
 

逸脱集団は個々の逸脱者以上に、その立場を合理化する傾向を持つ。
→自己正当化の理論的裏付け(イデオロギー)
 

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