見出し画像

JOG(477) 「戦後体制からの脱却」を進めた安倍首相

外交、教育、防衛と、安倍政権は「戦後体制からの脱却」を着々と進めていた。


過去号閲覧: https://note.com/jog_jp/n/ndeec0de23251
無料メール受信:https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=172776

■1.着々と進む「戦後体制からの脱却」■


郵政民営化に反対して離党した「造反組」議員の復党問題で、安倍首相に対する支持率が、発足直後の64パーセントから47%に急落した、と伝えられている。安倍首相はこの問題を中川秀直・自民党幹事長に一任したのだが、世論調査では、この問題に対して首相が指導力を「発揮したとは思わない」との回答が67パーセントに達した。その後も、タウン・ミーティングでのやらせ質問や、政府税制調査会・本間正明会長の官舎入居問題などで、逆風が強まっている。

 しかし、マスコミがこれらの問題に騒いでいる間に、今国会に提出された21法案はすべて成立した。その中には約60年ぶりの教育基本法改正、防衛庁の「省」昇格の重要法案が含まれていた。安倍内閣の掲げる「戦後体制からの脱却」は、内閣発足わずか3ヶ月で大きな第一歩を記したと言える。

「戦後体制」と言えば、その代表は共産党や社民党、民主党左派などの左翼政党、そして朝日新聞やTBSに代表される一部の左翼的マスコミである。これら「戦後体制」を代表してきた勢力が、「戦後体制の脱却」を掲げる安倍政権を目の敵にしてきたのも、けだし当然であろう。

 今回はこれら一部マスコミや野党と戦いつつ「戦後体制の脱却」を進めた安倍政権の足跡を追ってみよう。

■2.安倍憎しの「ゲリラ活動!?」■

 朝日新聞やTBSは、従来から何とか安倍政権の誕生を阻止しようと、異様な熱意を燃やしてきた。

 朝日は平成17(2005)年1月12日、NHKが4年も前に放送した従軍慰安婦に関する番組で、中川昭・経産相(当時)と安倍・内閣官房副長官(同)が圧力をかけて番組を改変させたと報じた。

 NHKは7時のニュースで「朝日の虚偽報道」と反撃し、中川・安倍両氏も「事実無根」と訂正・謝罪を要求した。朝日は何ら根拠を示せず、窮地に陥った[a]。朝日はその後も頬被りを続けているが、この失敗以来、いよいよ安倍憎しの情を募らせたようだ。

 安倍氏が小泉前首相の後継として注目を集めると、朝日は対抗馬・福田康夫氏に6月20日付け社説で『福田さん、決断の時だ』と決起を促した。7月5日、福田氏が正式に出馬しないと表明すると、23日付け社説では『安倍氏独走でいいのか』と歯ぎしり。「福田がダメなら小沢だ」とばかり、9月11日、民主代表選の前日に小沢ビジョンをスクープし、夕刊一面トップで『民主、格差是正を全面、保守取り込み狙う』と派手に持ち上げた。

 しかし朝日の怨念空しく、安倍首相が誕生すると、9月21日社説では『不安一杯の船出』、同27日付社説では『果たしてどこへゆく』と、不安をかき立てた。しかし、新首相への世論支持率64パーセントという逆風の中では、「負け犬の遠吠え」に過ぎなかった。

 一方、TBSはテレビならではのイメージ戦略で安倍氏を攻撃した。7月21日の「イブニング・ファイブ」では、満洲での731部隊による細菌戦計画の番組中、何の関係もない安倍氏の顔を大写しにして、「ゲリラ活動!?」のテロップを流した。

 安倍氏が不快感を示し、総務省も調査に入ると、TBSは「偶然」と謝罪したが、報道局長の事前チェックも入るはずの報道番組に、こんな「ミス」が見逃されるはずもない。安倍氏の祖父、岸信介元総理が満洲国の官僚だったことから、731部隊との関係を示唆し、安倍氏のイメージダウンを図ろうという卑劣な戦術だった。公共の電波を使うマスコミ機関が、ここまでやるのは、無法な「ゲリラ活動!?」としか言いようがない。[1,p61]

■3.「侵略戦争」村山談話の継承と空洞化■

 一方、国会内では野党が、安倍首相に歴史観に関する集中質問を続けた。なんとか安倍首相から問題発言を引き出して、足下をすくおうという魂胆だろう。

 まず10月3日、共産党の志位和夫議員が平成7(1995)年の村山談話について、「国策を誤り、戦争への道を歩んだという認識を共有するのかどうか」と問い糾した。首相は村山談話を継承する、としつつも、こう付け加えた。

 一方、先ほど申し上げましたように、政治家の発言は政治的、外交的な意味を持つものであることから、歴史の分析について政治家が語ることについては、やはり謙虚であるべきだと考えております。

 さらに社民党の福島みずほ議員が、翌4日の参院本会議で同様な質問を繰り返すと、 

 侵略戦争という概念については国際法上確立したものとして定義されていない・・・

 村山談話を継承しつつも、「侵略戦争」の国際法上の定義はなされていない、歴史について語ることは政治家は「謙虚」になるべき、と談話の内容自体を空洞化させる発言を行った。

■4.「従軍慰安婦」河野談話の継承と空洞化■

 さらに10月6日、志位議員が旧日本軍が「従軍慰安婦」の強制連行に関わったという河野談話について質問すると、首相は、それを継承すると答えつつも、

 いわゆる狭義の強制性と広義の強制性があるであろう。つまり、家に乗り込んでいって強引に連れていったのか、また、そうではなくて、これは自分としては行きたくないけれどもそういう環境の中にあった、結果としてそういうことになったことについての関連があったということがいわば広義の強制性ではないか。・・・

 今に至っても、この狭義の強制性については事実を裏づけるものは出てきていなかったのではないか。

 また、私が議論をいたしましたときには、吉田清治という人だったでしょうか、いわゆる慰安婦狩りをしたという人物がいて、この人がいろいろなところに話を書いていたのでありますが、この人は実は全く関係ない人物だったということが後日わかったということもあったわけでありまして、そういう点等を私は指摘したのでございます。

 ここでも河野談話を継承すると言いつつも、「家に乗り込んでいって強引に連れていった」というような「狭義の強制」は事実として否定している。

■5.安倍首相の尻尾をつかめなかった野党■

 村山談話や河野談話は政府として公式に出してしまったものだから、それをいきなりひっくり返したら、それこそ一部マスコミや野党が鬼の首をとったように大騒ぎし、そうなれば中韓も首相を迎えるわけにはいかなくなったであろう。

 そこで、安倍首相は、両談話を継承するとしつつも、「侵略戦争」の定義が確立していない、とか、強制と言っても狭義のものではない、として、実質的に空洞化を図ったのである。

 この巧妙なアプローチに、野党は安倍首相の尻尾を掴むことができずに、集中攻撃も不発に終わった。

 その後、下村博文官房副長官が講演の中で、個人的見解としつつも、河野談話について「もう少し事実関係をよく研究し、時間をかけ客観的に科学的な知識を収集して考えるべきだ」と述べた。

 現実主義的なアプローチの中で、時間をかけて粘り強く自らの信念を貫くのが安倍流のようだ。村山談話や河野談話の見直しが徐々に進んでいけば、これも「戦後体制からの脱却」の重要な一歩である。

■6.靖国に「行くか行かないか、は言わない」■

 政権誕生から2週間も経たないうちに、安倍首相は10月8日に中国を訪問し、翌9日には韓国を訪れた。

「靖国参拝をやめない限り、中韓は首脳会談に応じない」というのが、一部マスコミの決まり文句だったが、安倍首相は「靖国神社に参拝したか、しなかったか、するか、しないかについて申し上げない」という態度で押し通した。それでも中韓が訪問を受け入れたことで、この一部マスコミの決まり文句は誤っていた事が明白になった。

 靖国に関しては小泉前首相が最後まで折れなかったことで、中韓はこれ以上、靖国を外交カードにすることをあきらめたわけで、その機を逃さずに利用した安倍首相の政治的判断が奏功したのである。

 これを一部マスコミは「曖昧戦術」と批判するが、「曖昧」で悪いことはない。もともと「一国の首相が戦没者の追悼をするのを、他国がとやかく言うこと自体がおかしい」と言うのが日本側の主張なのであって、安倍首相が参拝について曖昧にしたまま、中韓が首脳会談を受け入れた、ということで、日本側が主張を押し通した形となったわけである。

■7.「曖昧」にしておくことが、双方の政治的利益に適う■

 中国側は胡錦濤国家主席、呉邦国全人代委員長、温家宝総理とトップが会談に応じた。会談後の記者会見では、冒頭から靖国参拝に関する質問があったが、安倍首相はこう答えている。

 靖国神社の参拝については、私の考えを説明した。そしてまた、私が靖国神社に参拝したかしなかったか、するかしないかについて申し上げない、それは外交的、政治問題化している以上、それは申し上げることはない、ということについて言及した。その上で、双方が政治的困難を克服し、両国の健全な発展を促進するとの観点から、適切に対処する旨述べた。私のこのような説明に対して、先方の理解は得られたものと、このように思う。

 中国側の要望も「政治的障碍を取り除いて欲しい」ということで、さすがに「靖国参拝をやめよ」などとは言っていない。「政治的障害」にさえならなければ、靖国参拝について、行ってもよいとも、いけないとも言わない。こちらも「曖昧戦術」なのである。

 現時点では「曖昧」にしておくことが、双方の政治的利益に適うわけで、「一国の首相が戦没者の追悼に行くことを、他国がとやかく言うこと自体がおかしい」という国際常識にようやく立ち戻ったわけである。

■8.外交における「戦後体制の脱却」■

 靖国問題以外については、中韓に対して安倍首相が明確な主張をしている点を見落としてはならない。中国側との会談の後の日中共同プレス発表では、こう公表されている。

 日本側は、戦後60年余、一貫して平和国家として歩んできたこと、そして引き続き平和国家として歩み続けていくことを強調した。中国側は、これを積極的に評価した。

 首相は記者会見において、北朝鮮問題、拉致問題、東シナ海資源開発問題などについても、首相から考えを説き、中国側から理解が示された、と述べている。従来、日中間の最大の問題とされていた歴史問題は、「歴史を直視し、未来に向かい」、および「日中有識者による歴史共同研究を年内に立ち上げる」という2点だけで片付けられている。 

 日中関係の正常化を必要としていたのはむしろ中国側であり、小泉前首相への靖国批判で上げた拳の下ろし所を探っていた中国が、首相交替という機会に素早く乗ったのである。中国の「君子豹変」に、日本の一部マスコミは2階に上がったまま梯子をはずされた形となった。

 一方、韓国との首脳会談では、「豹変」しない盧武鉉大統領が、冒頭の40分以上も、慰安婦、歴史教科書、靖国神社に替わる国立追悼施設など、従来通りの主張を繰り返したが、安倍首相は一切取り合わず、そうした歴史認識を文書に表そうとした韓国側の要求を拒否した。かくて韓国とは共同の文書発表すら行われないという異例の事態となった。

 いずれにせよ、首相就任直後の電撃的な中韓訪問は、その内容においても、従来の歴史問題への謝罪から始まる戦後の対中韓外交を完全に脱皮し、主張する外交に転換した、という点で画期的なものであった。これは外交面における「戦後体制からの脱却」であった。

■9.着々と進む「戦後体制の脱却」■

 12月15日、改正教育基本法が成立。日教組は国会前のデモ行進などで組合員約1万5千人を動員した。平日の授業も放り出しての教員のデモで、支出総額3億円というから、ただ事ではない。

 日教組がこれだけしゃかりきになったのも理由がある。従来法の「不当な支配に服することなく」という文言を、日教組は文部科学省や教育委員会の施策や指導に反対する根拠としてきたのだが、今回「教育は、、、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」と追加されて、法律に基づく教育行政は「不当な支配」に当たらない、と明記された。

 これでようやく教育が法の支配のもとに行われることとなった。この当たり前のことが戦後60年も放置されてきたわけである。

 さらに安倍首相は12月19日夜の記者会見で、憲法改正について「歴史的な大作業だが、私の在任中に何とか成し遂げたい」と明言した。その改正手続きを定める国民投票法案に関しては、翌年の通常国会で成立を目指す考えを示した。

 そもそも憲法改正には国民投票が必要だと現行憲法には書いてあるが、その投票のための法律すら戦後60年間も制定されずに来ていたのは、どう見ても異常である。

 外交、教育、防衛、そして最終的には憲法へと、占領軍が残した「戦後体制」の脱却に、安倍政権は着々と取り組んでいた。現在の政治家には、その努力の継承を期待したい。

(文責:伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(401) 北風と朝日
 ある朝日新聞記者が北朝鮮擁護のために でっちあげ記事を書 いたという重大疑惑。
【リンク準備中】
b. JOG(339) 安倍晋三 ~ この国を守る決意
 政治家は「国民の生命と財産を守る」という ことを常に忘れてはいけないと心に刻みました。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 西村幸佑他『「反日マスコミ」の真実』★★、オークラ出版H18
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4775508385/japanontheg01-22

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

■「「戦後体制からの脱却」を進める安倍首相」に寄せられたおたより

ネコノミストさんより
 安倍首相については、「格差容認」の経済方針だけが目に付いて、支持できませんでした。(そもそも、公共財の提供を通じて、富を効率的かつ公平に再分配するのが政府の役割ではないか。その役割を放棄して、日本経済が良くなるものか、と) 

 しかし、本号を通じて、外交についてはかつての過ちを覆すに十分の辣腕を揮っていることを知りました。脱戦後体制については、頑張ってもらいたいと思います。 

 それにしても、マスコミは安倍首相の快挙を、全く伝えようとしていませんね。反論することすら、焦点を当てる結果になることを、彼らなりに学んでいるのでしょうか・・・

■ 編集長・伊勢雅臣より

 マスコミは「支持率急降下」などと囃し立てていますが、登場直後の70%が異常で、下がっても50%近くというのは、退陣前の小泉内閣と同水準です。ちなみに小泉内閣の在任中の平均支持率は50%で、わずか8ヶ月で退陣した細川内閣に次いで戦後第2位です。でも、安倍首相には国民の人気取りなどに気をとられず、国家百年の計のもと、「戦後体制からの脱却」を着々と進めていただきたいと思います。 

© 平成18年 [伊勢雅臣]. All rights reserved.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?