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JOG(1145) EUをぶち壊す移民難民の破壊力

 欧州各国の国民共同体はメルケル首相の「難民ようこそ」政策によって破壊されつつある。


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■1.NGOの船がシャトル便のように救助した難民を運んでくる

『世界一安全で親切な国日本がEUの轍を踏まないために 移民 難民 ドイツ・ヨーロッパの現実2011-2019』の著者・川口マーン惠美さんが講演で「朝鮮半島で有事が起これば、日本にも難民が押し寄せますよ」と話しても、「聴衆は誰もピンときていなかった」という。

「日本海は波が荒いからボロ船では越えられない」と言う人もいたが、確かにアフリカから難民が地中海を渡って船で押し寄せるのに比べれば、日本海を越えてくるのは難しいだろう、と私自身も考えていた。それが愚かな希望的観測であることを、川口さんは欧州の事実をもって論破する。

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 しかし、EUに押し寄せている難民たちも、実は、自力で地中海を渡ってくるわけではない。・・・彼らは密航斡旋業者に大金を支払い、木の葉のような船に乗り込まされる。
 救助は、以前は偶然通りかかった商船や漁船、EUの国境警備隊などが行ったが、今では、民間船は難民を助けて連れてくると密航幇助(ほうじょ)に問われるようになったため、救助できない。そこで、その代わりに大活躍しているのがNGO(JOG注:非政府組織)の船だ。
 大型で立派な船も多いところを見ると、このNGOの「遭難救助」活動の裏には、それをちゃんと経済的に援助している人たちがいるようだ。「救助」に際して、NGOと犯罪組織が連携している可能性も疑われている。いずれにせよ、NGOの船はあたかもシャトル便のように、救助した難民をせっせとイタリアやマルタに運んでくる。[1, p3]
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 いくら日本海の波が荒くとも、どこかのNGOが立派な船を出して、難民を拾い上げ、対馬や北九州に運んでくるだろう。朝鮮総連など、その役を引き受けそうな組織は日本国内にも事欠かない。

■2.難民を送り込む斡旋業者

 津波のように押し寄せる難民に業を煮やしたイタリア政府は、2018年6月、いつものように難民を乗せて来航したNGO船「アクアリウス」号の入港を拒否した。この船は難民を救助してヨーロッパに連れてくることを目的として、フランスのNGOがチャーターした船で、2016年だけで1万人以上もの難民をイタリアに運んだ。

 しかし、入港拒否も通じない手口もある。

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 たいていの斡旋業者は、沖合に出たところで、自分たちだけ小型のモーターボートなどで逃走し、遭難のSOSを出し、あとはイタリア海軍に救助させるという方法を取るようになった。安い老朽貨物船なので、船など放棄しても暴利は残る。
ひどい業者になると、船を故意に壊したり、乗客を海に飛び込ませたりして、難民船が難民とともに出発港に戻されないようにしていたという。[1, p63]
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 こうして航行不能になった船に残った難民、あるいは海に飛び込んだ難民は、助け出す他に手はないだろう。2014年には危険な地中海ルートでEUに到着した難民が18万人に達し、犯罪組織にとっては「人間密輸」は麻薬や人身売買よりもすっと儲かるビッグ・ビジネスに成長していた。

■3.難民を送り返すのも難しい

 辿り着いた難民は送り返せば良いではないか、と多くの日本人は思うが、事態はそれほど甘くない。確かに現在の国際的な取り決めでは「政治的に迫害されている人たち」以外は難民資格は認定されず、庇護されないことになっている。しかし、このルールが守れるかどうかは別の問題だ。

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 当時のドイツでは、到着する難民があまりにも多く、難民資格のある人とない人を区別できないまま、自己申告の通りにどんどん入国させた。その際、シリア人、アフガニスタン人は、政治亡命が認められやすかったため、他の国から来た経済難民までがシリア人やアフガニスタン人に化けた。
それどころか、テロリストも入国したので、そのあとEUのあちこちで無差別テロが起こった。ある国の治安を乱し、弱体させたければ、早い話、難民を大量に送り込めばよい。[1, p5]
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 たとえ母国に送り返そうとしても、母国が特定でき、しかもその母国が入国を認めなければならない。2017年にドイツで検挙された外国人犯罪者のうち三番目に多かったのがナイジェリア人だったが、そのうちの重罪犯でさえナイジェリア政府が引き取りを拒むため、母国送還ができないでいる、という。

■4.「ドイツ人は理性を失った」

 欧州への移民が激増したのが2015年だった。前年の約60万人が、いきなり132万人へと倍以上となった。引き金となったのがドイツのメルケル首相の難民受け入れのメッセージだった。

 当時、イラクやシリアからの難民がトルコからエーゲ海を渡り、ギリシャを経由して、陸路ハンガリーに押し寄せていた。徒歩でやってくると言っても、スマホで犯罪組織に支払いさえすれば、食料や水の補給もできたし、スマホの充電を商売とするスタンドまで登場した。

 ハンガリー政府は突貫工事で高さ4メートルの鉄条網の壁を作ったが、ドイツなどEU諸国は人権無視だと非難した。その鉄条網の隙間を抜けて、難民は続々とハンガリーに入ってきた。

 そんな時に、ニュースに流れたのが、シリア人の3歳児の遺体がエーゲ海の海岸に打ち上げられた写真だった。この写真は後にフェイクだと報道されたが、ハンガリーからオーストリアに向かって続々と歩む難民たちの光景とともに報道されて、ドイツ国民に衝撃を与えた。

 9月4日、メルケル首相は「ハンガリーにいる難民を受け入れる」と発表し、その日のうちにブタペストからミュンヘンに8千人もの難民が列車で到着した。ミュンヘン市民の多くが中央駅に出向いて「ドイツへようこそ」「我々は難民を愛す」などといったプラカードを持って歓迎した。

 この映像が中東やアフリカの若者をヨーロッパに向けて突き動かした。9月、10月の2ヶ月で31万8千人の難民がドイツに到着した。地中海経由でEUに入った難民も10月だけで21万8千人と、前年1年分より多かった。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、この極端な難民増加を「ドイツの寛大な難民政策のせい」とした。

 ドイツ国内でも、この無謀な難民受け入れに、年間20万人程度の上限を作らなければ大変なことになる、という意見は強かった。しかし、メルケル首相は「受け入れ人数の上限は作らない」と頑固に言い張った。あるイギリスの政治学者は「目下のところイギリス国内では、ドイツ人は理性を失ったという印象が支配的だ」と語った。

■5.メルケル首相の「理想」

 川口さんの見解では、メルケル首相は理性を失ったのではなく、彼女なりの計算があるらしい。2018年にベルリンで開かれた第2回アフリカ会議で、アフリカ諸国の発展のための10億ユーロの投資ファンドの設立とともに、さらなる「難民ようこそ政策」を発表した。

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 そのうえ、メルケル首相は、すでにドイツに入っているアフリカ難民のうち、難民資格を得られなかったアフリカ人に対して、労働ビザ、および大量の学生ビザを発行し、産業界の経営者たちを感動させた。
産業界にとっては、ドイツ政府がビザを出した見返りに、アフリカ諸国との商談が軌道に乗るのも喜ばしいが、それ以上の得策は、難民の中の優秀な人たちが母国送還を免れ、合法労働者、あるいは、留学生に切り替わることだ。学生の中の何割かは、いずれ質の良い労働者や技術者になるだろう。[1, p106]
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 移民も難民も流入の仕方が違うだけで、入ってしまえば同じ労働力だ。ドイツ産業界としては無数の難民から優れた頭脳と、平凡な頭脳・技術でも安価な労働力を得られれば、自らの競争力強化を図れる。労働力にならない難民を養うコストや犯罪の増加は国と国民の負担なので、自分たちには直接関係ない。

 こんな「難民ようこそ政策」で支持率が大幅に下がっても、他のEU諸国からの批判が高まっても政策を堅持するメルケル首相の頭の中にあるのは、別の「理想」ではないか、と川口さんは疑う。

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 彼女の心の奥深くにある理想の世界が、国境が消え、あらゆる民族が混在し、ドイツという国も消滅した、ひたすらグローバルな世界なのだとしたら、彼女の行動の謎はすっきりと解ける。
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 国家という共同体をぶち壊し、「ボーダーレス」の世界を作るには、難民の破壊力を利用するのが最も効果的だろう。

■6.「難民ようこそ」政策へのEU諸国の反発

 メルケル首相の「難民ようこそ」政策は、他のEU加盟国との軋轢(あつれき)を生み、また国内外で保守政党の支持率を上げている。

 保守派で、難民受け入れの上限設定を主張している「ドイツのための選択肢」(AfD)」への支持率は着実に上昇し、2017年以来、連邦議会では野党第一党となった。メルケル首相は地方選連敗の責任をとって、党首を辞任し、2021年での政界引退を表明している。

 フランスのマリーヌ・ルペン氏率いる「国民連合」は当初からメルケル首相を批判し、難民の受け入れ人数を制限すべく、EUの難民政策修正を求めている。フランス国民も、すでにフランスで定着している移民も含め、ルベン氏の政策を支持し、国民連合は第一党に躍り出た。

 イギリス人がEU離脱を決心した大きな原因の一つが、やはり移民だと言われる。2004年のEUの東方拡大で、ポーランドなどから大量の移民が流れ込み、このままEUに留まっていては、移民・難民の受け入れを自国で制御できなくなる、そうなれば自国の主権さえ失われていく、と危惧したようだ。

 東欧諸国もドイツの姿勢を冷ややかな目で見ている。ソ連の抑圧を経験しているので、人権を守るにも、まずは自国の平和と繁栄が大前提、という現実が見えている。EU議会の副議長の一人であったポーランド人は、こう語っている。

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 メルケル首相が難民に国境を開いたのは、ドイツの歴史のセンシティブな部分と関係しているのだろうからドイツの勝手だが、それをEUレベルで行えというのはおかしい。EUの規定に、マルチ文化にならなければならないなどとは書いていない。ポーランド国民は、祖国を、現在、フランスの多くの街で見られるような風景にするつもりはない。[1, p76]
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 メルケル首相の難民政策こそ、EUの結束を内部から揺さぶっているのである。

■7.「ナチスへの道」?

 上記の発言で、「ドイツの歴史のセンシティブな部分」という表現に留意する必要がある。川口さんはこの点をこう説明している。

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 ドイツ人は、自分たちが外国人に何かを要求したり、禁止したりすると、またしても碌(ろく)でもないこと(ホロコーストの二の舞)につながり、全世界の人々から非難されるのではないかということを、本能的とも言えるほど強く恐れている。
とりわけ政治家は、外国人排斥者と言われることだけは絶対に避けたいと思っており、自ずと、外国人の犯罪は問題視しないほうが安全という保身のバイアスが強く掛かる。そこで、見て見ない振りをすることを正当化するため、外国人の存在を、「多文化共生」とか「アイデンティティーの尊重」とかいう言葉で飾り立てることになった。[1, p150]
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「難民ようこそ」政策に異を唱える人々はナチス扱いされかねない。AfDの地方議員が覆面をつけた三人の男に襲撃された際でも、「同議員が移民に対する憎しみを振りまいたので、襲撃されたのは自業自得であり『ナチは出ていけ』運動は正しい」とする論調まで現れた。

 多くのドイツのマスコミも、外国人排斥と見なされないよう、移民による犯罪はなるべく頬被りし、その一方でAfDを「極右」政党と報道することが多い。2019年1月には憲法擁護庁が、AfDを監視対象とするかどうかの検討調査を開始すると発表した。

「ナチス」という自虐史観に囚われて、移民難民に関する公正な報道も自由な議論もできないドイツの風潮は、「朝鮮植民地化」という自虐史観から、在日の犯罪や不法な生活保護受給を報道・議論することすら「ヘイト」と見なされる日本の状況とそっくりである。

■8.移民・難民の破壊力

 川口さんの本を読んでいると、こうしたドイツの移民難民政策の失敗は我が国ではほとんど報道されていないことに気がつく。こうした事実も踏まえずして、日本国内では人手不足という経済要因だけで、移民政策が主張されている。

 この点については、左派政党、左派マスコミも同様で、国民国家という現在の体制をぶち壊すには、移民難民の破壊力こそ、最も効果的なのである。「革命は銃口から生まれる」としたマルクス主義の暴力路線が失敗したあと、彼らが期待しているのは、移民難民の大量流入によって、日本国の枠組み根底から破壊することだろう。

 中国には他国を乗っ取るために大量の移民を送り込む「洗国」という伝統的戦術がある[a]。そんな戦術を持つ人口大国が隣りに存在する、という点では、我が国はEU以上の危機に直面しているのである。 幸いなのは、ヨーロッパとは違って、我が国の危機はまだ顕在化していない、という点だけである。

 この危機を乗り越えるには、移民難民の破壊力を理解して、自分たちの共同体を守ろうという日本国民の意思が必要不可欠である。
(文責 伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(974) 移民問題、二つの進路 (上)「洗国」への道
「洗国」とは他国に数十万人規模の流民を移住させて、やがてその国を乗っ取るという、シナ大陸で多用される手法である。
https://note.com/jog_jp/n/n3d57f2aba14a

b. JOG(975) 移民問題、二つの進路 (下)「大御宝」への道
 国民が安心して結婚し、子供を産み、仕事ができる社会を作れば、労働移民は不要となる。
https://note.com/jog_jp/n/n48aaa350aabd

c. JOG(143) 労働移民の悲劇
 ぼくたちには何のチャンスもありません。ドイツに夢を抱いていたことが間違いでした。
https://note.com/jog_jp/n/n5d4730735976

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
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  1. 川口マーン惠美『移民 難民 ドイツ・ヨーロッパの現実2011-2019 世界一安全で親切な国日本がEUの轍を踏まないために』★★★★、グッドブックス、R01
    http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4907461232/japanontheg01-22/

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