Elad Gil インタビューメモ

https://www.youtube.com/watch?v=nLA90pa-34A

Elad Gilは、シリコンバレーで20年以上にわたって起業家、経営者、投資家として活躍してきた。最初に経営した会社は120人規模まで成長したが、5回のレイオフを経て13人にまで縮小し、3回目のレイオフでGil自身も解雇された。その後、Googleに入社し、自身の会社を立ち上げるために退職。2009年にTwitterが買収したデータインフラの会社だ。買収時、Twitterはわずか90人の会社だったが、Gilは2年半で1,500人規模まで拡大するのを助けた。投資家としては、Airbnb、Coinbase、Figmaなど、40社以上のユニコーン企業に出資している。

GilがMITで博士号を取得した後、シリコンバレーに移り住んだのは、テクノロジーを通じて人類に長期的な影響を与えることが最善の方法だと考えたからだ。当初は学者になり、病気の計算機的理解などに取り組もうと考えていたが、個人では生物学の分野で大きな影響を与えることは難しいと悟った。そこでテクノロジー企業を通じて有意義なことができると考え、シリコンバレーに来た。

2004年に入社したGoogleは猛烈なスピードで成長しており、3年半で1,500人から15,000人規模へと拡大した。6〜12ヶ月ごとに倍増し、3年で13,000人を採用するという驚異的な成長ぶりだった。組織構造も急速に変化し、上司と部下の関係が入れ替わることもあった。当時、ラリー・ペイジがミドルマネージャーを全員解雇したため、エンジニアリング部門のディレクターは50〜100人もの部下を抱えることになり、部下の仕事内容を把握しきれない状況だった。これを利用して、Gilはマネージャーに知られずに人々をモバイルプロジェクトに誘い込み、初期のモバイルチームを立ち上げた。

シリコンバレーで学んだ教訓の1つは、ネットワークの重要性。PayPalの初期メンバーは、ピーター・ティール、イーロン・マスク、リード・ホフマンなど、のちに著名な起業家や投資家となった。皆で助け合いながら成長していく文化がある。Googleの初期メンバーも、Pinterest、Instagramなど多くの企業を生み出し、次世代の有力な経営者となった。シェリル・サンドバーグ(Facebook COO)、デニス・ウッドサイド(Dropbox CEO)などがGoogleの出身だ。

もう1つの教訓は、大志を抱くことの大切さ。ラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンが腹を立てる主な理由の1つは、考えが小さすぎることだった。1億ドル規模の市場向けのアイデアを提案すると、「なぜ100億ドル規模の市場ではないのか」と問い詰められた。常に大きく考えることを求められた。また、イノベーションを強く推進し、自分の手掛けているものが何か特別で違うものであることを求められた。

急成長するスタートアップや企業の従業員である限り、物事は概してうまくいくので、自分自身のキャリアについてあまり心配する必要はない。同僚が突然上司の上司になるような変化が起こっても、会社は成長と変化を遂げているので、チャンスはたくさんある。

Gilは常に起業したいと考えていたが、当時はYコンビネーターのような仕組みがなく、起業方法に関する情報を得るのは難しかった。エンジェル投資家や投資家からの資金調達先も限られていた。今日とは状況が大きく異なり、起業ははるかに容易になっている。

Gilの会社では、位置情報に関するAPIを中心とした製品を開発していた。当時はStripeのようなAPI中心の製品はほとんどなく、先駆的な取り組みだった。位置情報データを豊かな方法で操作できる機能を提供したのだ。しかし、Googleから出てきたばかりだったため、SEOの世界観から抜け出せず、過去のために作ってしまったという過ちを犯した。大企業出身者がよく陥る失敗だ。常に1〜2年先を見据えて、「なぜ今なのか」を意識すべきなのだ。

「なぜ今なのか」は技術的なものかもしれない。Uberが登場する前は、GPSを使うたびにモバイルキャリアに1ドルの料金がかかっていた。iPhoneの登場でその制約がなくなり、Uberのようなサービスが可能になったのだ。規制によって「なぜ今なのか」が生まれることもある。Samsaraは、トラックにドライブレコーダーの搭載が義務付けられたことで成長した。ヘルスケアなどでも、規制の変更が新たな事業機会を生み出すかもしれない。

Gilの会社は、Twitterとの協業を検討していた。当時、Twitterは大規模な開発者エコシステムを持っており、同社のサービスがその上に載ることで、すべての開発者に使ってもらえると考えたのだ。魅力的なビジョンに惹かれ、最終的には買収に応じることにした。Twitterは、開発者エコシステムを持っていたこと、エンジニアにとって素晴らしいキャリアの場になること、財務的にも魅力的だったこと、そして世界を変えるインパクトを与えていると感じたことが決め手だった。

キャリアの初期は、ある程度は傭兵的でなければならない。でないと何も成し遂げられないからだ。状況に合わせて軌道修正する必要があり、物事に哲学的になってはいけない。キャリアの中盤では、より伝道者的であるべきだ。コミュニティの構築に貢献し、より大きな目標に集中すべきだ。キャリアの後期には、純粋に仕事への愛情からやるべき。

多くの初期企業の創業者は、早い段階で売却していただろう。ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、Googleを100万ドルで売ろうとしたが、買い手が見つからなかった。だから続けざるを得なかったのだ。Facebookも10億ドルでYahooに売却寸前だった。ほぼすべての企業で、創業者が早期に売却しようとした時期があるのだ。

共同創業者は必須ではない。マイクロソフト、アマゾン、アップルなど、一人の創業者か不平等な創業者関係の企業は多い。良いアイデアを持っている必要もない。偶然起業した人や、何かを始めたくてさまざまなことを試した末に成功したという例は数多くある。

資金調達は、事業に本当に必要なものかを見極めるべきだ。利益を出していて順調なのに、なぜわざわざ資金調達するのかと疑問に思う会社も少なくない。Zapierなどはブートストラップで成功している。マイクロソフト、デル、ヤフー、eBayなども、長らくブートストラップで事業を行っていた。一方、Instagramのように資金調達したものの、あまり使わなかった例もある。資金を有効活用して市場に早期参入し、シェアを獲得することも重要な戦略の一つだ。リップリングのマーカー・コンラッドは素晴らしい起業家で、大規模な資金調達によって市場の制覇を目指している。両方のスタイルが機能し得るが、事業の種類によって適切な方法は異なる。顧客から早期に料金を徴収でき、顧客生涯価値が高ければ、ブートストラップが可能かもしれない。

CEOの役割は、会社の方向性を定め、リソースを適切に配分し、優秀な人材を確保することだ。初期は従業員の悩みを聞く心理学者のような役割も担う。スタートアップのCEOはストレスフルな職務だが、自身のペースをコントロールすることが求められる。

取締役会については、創業者は上手く活用すべきだ。人材採用、戦略策定、M&Aなどに役立ててほしい。初期は取締役会メンバーの関与度が高いが、徐々に変化していく。一方で、取締役の中には自身の利益を優先し、会社に悪影響を及ぼす者もいる。慎重に選ぶ必要がある。以前に一緒に働いたことのある人に、その取締役会メンバーについて意見を聞くのも一案だ。

シリコンバレーがイノベーションのメッカとして機能している理由は、野心的な人材が集まり、互いに助け合う文化があり、企業作りのノウハウが蓄積されているからだ。Gil自身、テクノロジーの進歩に貢献し、より良い世界を作ることを使命としている。テクノロジーは人類に計り知れない恩恵をもたらしてきた。それに携わることが自身の重要な役割だと考えているのだ。

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