『ザ・スイッチ』

『ハッピー・デス・デイ』2部作を手掛けたクリストファー・ランドン監督の新作はこれまた同じく学園を舞台にしたSFスリラー。女子高生と殺人鬼の身体の入れ代わりをリアルにコミカルに見せるが、どれも想定内で新鮮味には欠ける。

 

 

大林宣彦監督の『転校生』やリンジー・ローハンとジェイミー・リー・カーティスの『フォーチュン・クッキー』、それこそアニメ映画の『君の名は。』など身体の入れ代わりによるラブコメディはいくつかあるが、女子高生とオヤジ殺人鬼とかけ離れた身体の入れ代わりがこの映画のミソとなる。

 

女子高生とオヤジのボディーチェンジは新垣結衣と舘ひろしW主演のテレビドラマ「パパとムスメの7日間」でも見られるネタで女子高生の心を持つオヤジの演者の力量が試されるが、今回オヤジボディーを演じたヴィンス・ヴォーンはこの部分はクリア出来ている。ゴツい身体でチアリーディングダンスを踊ったり、女の子みたいな走り方をするサマはコミカルで、元のパワフルさはそのままで、これを上手く使っている。

変わって殺人鬼の心を持った女子高生の方は赤い革ジャンとメイクと無表情フェイスでなんとか乗り切っている。元の気弱な女子高生の非力さはそのままで、その不便さも上手く組み込んでいる。

 

ただ、元の気弱な女子高生ミリーの立ち位置が微妙。ある中だがミリーを溺愛する母親と警察官の仕事に没頭する姉との家族関係は良く描けていたが、ブリスフィールド高校内のカースト演出が弱い。アメフト部や意地悪そうな女子軍団はいるが、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』から比べると男子&女子生徒、先生、親などどれももうひと押し足りない。おそらく、女子高生とオヤジ殺人鬼のボディーチェンジが主となるので、この分学園描写がかなり薄まってしまった。2020年のハズだがあんまり現代っぽさもなく、80年代の『フットルース』とたいして変わらない気もした。

加えてメインのボディーチェンジも押さえている所は押さえているがどれも予想の範囲内。終盤、ちょっとだけ「おっ」と思えた部分もあるが、よく考えるとかなり無理がある展開で逆に減点ポイント。

 

『ハッピー・デス・デイ』の出来が良すぎた分、全てにおいて想定内で、インパクトが弱い。物凄くハードルを下げて、暇なら金をドブに捨てる気分で見る以外ない。

 

 

評価:★★

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