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いま、会いに行きます……片頭痛は挨拶を欠かさない律儀な奴

片頭痛とは16年の付き合いになるが、意外にも律儀な奴で、訪問前の挨拶を欠かされたことは1度もない。
決まって訪れる20分前に、「これから伺います」と合図を出してくるのだ。
その合図が、なかなか粋である。
虹を出すのだ。
虹を出して訪問を知らせるなんて、なんだかファンタジー世界に出てくるオシャレでキザな奇術師のような奴ではないか。
視界に突然、小さな虹が出現したら、それがあと20分で片頭痛の激痛が始まるという合図だ。
虹は徐々に、その面積を拡大する。
はじめは、少し見えづらいが書類やパソコンのモニターは確認できるというレベルで、10分も経つと虹が煩わしく最早、文字などは読めなくなる。
15分ほどで視界の8割は虹で埋まる。とてもじゃないが車の運転や、危険な機械操作などはできない。
車の運転中に前兆が始まった場合、虹が小さいうちに車を安全な場所に停めるのが賢明だろう。
この虹は医学的診断名では「閃輝暗点(せんきあんてん)」という。
片頭痛には前兆があるタイプとないタイプがあるが、閃輝暗点は典型的な片頭痛の視覚性前兆だ。
「なんだか光がキラキラして目が見えづらくなるときがある」「その後、頭痛が起こる」という症状がある人は片頭痛かもしれない。
神経内科で診てもらうことをお勧めする。
誰か身近な人物がこのようなことを訴えたときは、片頭痛を疑い、病院へ行くように言ってほしい。
ある日、カッパが運転する車で、上司と取引先に向かっている時に前兆が始まった。
片頭痛については以前から説明もしていたし、診断書も提出していたので「これから視界が塞がれてしまうので車を停める」と告げた。
だが上司はそれを認めなかった。いくら説明しても
「客との商談が嫌だから逃げているんだろう?」
「その逃げ癖を直さないと大人になれないぞ」
と、まるで的外れなことしか言わない上司に、言いようのない悔しさと悲しさを覚えた。
その後のことは思い出したくもない。
片頭痛を抱える人が「前兆が始まったので少し休みたい」とあなたに言って来たら「え? なに? 前兆? ぷぷ、なに中二病みたいなこと言ってんの?」などと思わずに、本人がこれから始まる激痛に備えられるように休ませてあげてほしい。
本当の地獄は、20分後に始まるのだから。

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