2b 露出の三要素の1〜シャッタースピード

⚫基本的には「1秒の何分の1の時間、シャッターを開いているか」がシャッタースピードの表記。

⚫シャッターダイヤルの数列で、シャッターの「段」を覚えよう。

⚫動きのある写真を表現するために、シャッター速度をコントロールする。

⚫手ブレ、被写体ブレを防止するためには、できるだけシャッタースピードを速くする。


さて、カメラで正しい露出を得るためには、シャッタースピード、レンズ絞り、ISO感度という三つの要素をコントロールする必要がある、ということを前項でお話しました。この三つを「露出の三要素」と言うわけですね。

では、ひとつひとつ順を追って解説していきましょうか。まずは 「シャッタースピード」のお話からです。

現代のカメラでは、基本的にシャッタースピードは「1/x秒」という表現の仕方をします。1秒の何分の1の時間、シャッターを開いているか、ということですね。

それより長いシャッタースピードは単純に「1秒」「2秒」という単位です。さらに、カメラマンがレリーズボタンを押している間だけシャッター幕が開いている「Bulb(バルブ)」というモードもありますが、それら「スローシャッター(ロングシャッターとも言う)」は特殊な撮影の範疇に入ります。基本的には「1/x秒」がシャッタースピードということになります。

なぜスローシャッターが特殊撮影なのか、といいますと、まずスローシャッターではシャッターが開いている間カメラマンが静止していられないので、カメラを保持するために三脚などを使用する必要がありますね。

さらに、完全に動かない被写体ならいいですが、ほとんどの被写体というのはそんなに長い間止まっていてはくれません。自然の風景だって、風が吹けば葉っぱなど動いてしまいますしね。

なので、自然にピントの合った写真を撮れるシャッタースピードの範囲というのはおのずと決まってくるものなのです。その範疇を越えるスローシャッターに関しては、いろいろと撮影準備が必要な特殊撮影、ということになるのです。


シャッタースピードの「段」

画像1

さて、いまワタシの手元にある富士フイルムX-Pro2を見てみますと、シャッタースピード設定ダイヤルには1秒から1/8000秒までの数字が刻まれています(カメラの方の表示では分子の数字は省略されていますので、シャッタースピード250とあったら、それは1/250のことです)。

この数字の並び、一見規則的なものにも見えますが、よくみると途中で倍数になってないところがあったりして、不思議な数列ですね。

また、250のところには「X」 が付記されていたりして、謎は深まります。

これは、数学的な倍数ではなく、「光の量」の倍数になるような数字なのです。1/250のシャッタースピードの2倍の光を取り入れるには、ワンクリックシャッタースピードを遅く、1/125にすればいい、ということになります。

これを、カメラ用語として「1段」と言います。この場合は「1段明るくした」というような言い方になります。共通用語として、覚えておくと便利な言い回しですね。

もちろん、この「1段」の中間の数値にもシャッタースピードを設定することはできます。しかし、「露出の三要素」のバランスをそれぞれ補完する方法として「段」で考えると分かりやすくなるので、まずとりあえずは基本として、このシャッタースピードの数列の形を覚えておくといいと思います(絞りの「段」については次項でご説明します)。

あと、250Xとありますが、これは、カメラで指定する 「ストロボシンクロ速度」を表します。ストロボをつけた撮影のときに、このカメラがストロボの光と同調するシャッタースピードは、1/250ですよ、という目印です。

ストロボの設定を「ハイスピードシンクロ」にしない限りの通常のシャッタースピードは、1/250にして撮影します。

まあ、これはまだ先のお話になりますので、余談として……。


​スローシャッターとハイスピードシャッター

適正な露出を得るためのシャッタースピード、という考え方から一歩進んで、作品作りのためのシャッタースピードを考えてみましょう。

実際のところ、動きのある被写体に対したとき、シャッタースピードはまず最初に考えなければならない問題です。

たとえば、よく使われる例題としては、流れる水の撮影がありますね。滝や噴水など、動きのある水の風景を撮ろうとしたとき、シャッタースピードの設定いかんでは、その写真が一瞬を切り取った静止したモノにもなりますし、水の動きを表現したダイナミックなモノにもなります。

水の流れを静止したものとして捉えることができるのが、ハイスピードシャッター、水の動きを表現するのがスローシャッターです。これはもう、作例をご覧いただくのがいちばん分かりやすいですね。

画像2

F2.5  1/250  ISO6400

画像3

F5.0  1/15  ISO2500

一見してすぐおわかりいただけると思います。

人間の目が見ている景色は、たぶんこの2枚の中間くらいのカンジでしょうか。それを、ハイスピードで切り取っても、スローで流しても、それぞれ写真ならではの面白い表現ができますね。

ちなみに、下のスローシャッター、1/15とかなりスローですが、手持ちです。カメラは富士フイルムX-Pro2、手ブレ補正はありません。しっかり構えればこれくらい手持ちでいけるよ、というプチ自慢です。ごめんなさい。


​手ブレ、被写体ブレを防ぐシャッタースピード

作品表現としてのシャッタースピードが 「積極的選択」だとしたら、ブレを防ぐためのシャッタースピードは 「消極的選択」かもしれませんね。

かつて大昔のカメラでは、現在のような高速シャッタースピードは得られませんでした。なので、カメラには三脚は必須でしたし、被写体はある程度の時間、じっと静止して耐えていることが求められました。

いまではそんなことはほぼありませんが、それでも記念撮影のときなど、「はい、チーズ!」という掛け声は、いい表情してね、と同時に、はい止まって!と同義語でもあります。

現代の技術革新によって、シャッタースピードは飛躍的に高速になりました。しかし、それでもカメラマン自身の「手ブレ」そして「被写体ブレ」は失敗写真の大きな原因です。

特に、手ブレは気付かないくらいの「微ブレ」が写真の画質を落としているケースも多く、なかなか悩ましい問題です。

いまどきのカメラには、レンズかボディに 「手ブレ補正」機能が付いているのがあたりまえになってきましたが、この手ブレ補正の効きの目安として「何段分の補正」なんていい方をします。

これは、先ほど述べた「段」の考え方を基にしてます。たとえば、1/60のシャッタースピードで手ブレ補正が3段分です、とあったら、それは1/500のシャッタースピードと同じだけのブレなさを保障します、ということです。

ということは、ですよ。逆に考えれば、ブレを防ぐためには単純にシャッタースピードをできるだけ速くすればいいということになります。

なので、先ほどのように画作りのための意図がある場合以外には、「露出の三要素」の範囲内でできるだけシャッタースピードを速くしてあげる、というのは、ブレを防ぎ失敗写真を減らすための基本的な考え方でもあるのです。


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