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台南の味、蝦仁飯 歴史と文化の融合

東洋の風味は、複雑で深い歴史と緊密に結びついている。それは、時の流れや記憶の中に絶え間なく存在する。台南を思い浮かべると、その地の料理はまるで歴史書のよう。異なる時代のエピソードを伝えてくれるかのようだ。



「蝦仁飯(エビ入りのチャーハン)」は、日本でいうと「海老入りチャーハン」とも呼ばれる一品。優しく塩味と甘さが広がるその味わいは、歴史と文化の中に染み渡るよう。この料理は1922年に、葉成という名の料理師によって生み出された。彼は日本で修業を積み、日本と台湾の料理技法を組み合わせることで、このユニークな味を創り上げた。


一般的なチャーハンとは一線を画すこの料理の真髄は、2時間以上も煮込んだかつおのだしと、エビの出汁を合わせたことによる深い味わい。実際には、これは「炊き込みご飯」に近い。そして、そのエビには、台南への敬意と愛が込められている。



特に夏から秋にかけて豊富に捕れる「火燒蝦」は、台南の伝統的な小吃の中でも一際目立つ存在。青鯤鯓でエビを天日干しにする姿を目にすると、この街の努力と粘り強さが伝わってくる。


そんな風景の中、5、6人の優しい顔をしたおばあちゃんたちが、毎朝忙しくエビの殻をむいている。それはまさに愛のシンボル。彼女たちの手仕事が、蝦仁飯に家庭の温かさをもたらしている。



これはただの料理ではない。伝統であり、記憶である。日本からの旅行者がガイドブックを頼りにここを訪れ、この料理を味わうとき、彼らが感じるのはただの美味しさだけでなく、背後に隠れた深い歴史や文化も同時に味わっているのだ。



現在、蝦仁飯と言えば、葉成師匠だけでなく、「吉成飲食店」とともに年月を重ねてきたあのおばあちゃんたちの顔が浮かぶ。彼女たちの物語とこの料理は、台南という街にとって、欠かせない宝物となっている。
東洋に住むあなたへ、次回台南を訪れた際は、ぜひこの蝦仁飯を試してみてください。歴史の深い味わいが、舌の上で踊り、後を引く余韻を楽しむことができるでしょう。

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