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男子高校の実態
私立高校は各土地から生徒がやってくる為、
入学してすぐに争いが勃発する。
実はこれチカラ関係を明確にする大切な儀式のようなもの。
『おうコラ!なにガンつけてんだ!てめぇどこだ?』
と、あちらこちらで因縁をつけあってやりあってる。
”どこだ?”と言うのは自分が住んでいる地元がどこで、
どのグループに属しているかって事。
俺はそういうのにまったく興味がなかったため、
知らん顔して平和な日々を過ごしていた。
ところがある日、事件が起きた!
なんと俺に因縁をつけてきた野郎が現れたのだ。
そいつは違うクラスの奴で中学時代は番長だったらしく、
とにかく偉そうに振る舞っていた。
あれは団体訓練と名付けられたハイキングの時だった。
休憩中に俺が同じ中学の仲間とふざけて遊んでいたら、
『テメェさっきからうるせぇんだよ!俺の昼寝の邪魔なんじゃ!』
と急に後ろから首を締められた。
俺は取り敢えず奴の腕を力ずくで引き離し、
『この野郎、何すんだよ!俺が何かしたかよ?』
『うるせぇっていってんだ!てめぇブッ飛ばすぞ』
『あん?上等だやってみろや。吐いた唾飲み込まんとけよ』
『面白い事いうじゃねえの?お前の方こそあとで泣き入れんとけよ』
『言っといてやるが俺はメチャクチャ強えぞ!』
『ほぅ、少しは楽しませてくれそうだな。暇つぶしくらいにはなるかな?』
『言ったからな。どうなっても知らんぜ?』
そう言ってその場を去った俺だったが、
後で聞いた話だが、奴と同じクラスにいる、
俺と同じ中学出身の奴が色々と奴に言ってたらしい。
『おまえ本当にあいつと喧嘩するのか?やめておいた方がいいと思うぜ。俺あいつが中学の時に喧嘩したの見た事あるけど、物凄く強いぜ。おまえよりデカい奴をやったんだけどパンチを一発もくらわず、圧倒的な強さだった。運動神経もウチの中学ではダントツだったし、チカラも強くて腕相撲大会でも優勝してたしな!』
『あいつそんなに強いのか?』
『強いなんてもんじゃねぇよ!強すぎるくらい。しかも怒ると鬼のようになって容赦がない。相手が謝ってるのに動けなくなるか、土下座しないとやめないらしいぜ。悪いことはいわねぇから今のうちに謝っちまった方がいいぜ』
『バカ言うんじゃねぇ。俺だって負け知らずじゃ!面白い。相手にとって不足なしってことじゃねぇか!』
『俺、知らねぇっと!』
こんな会話が事前にあったようだ。
さて、麓に下りて団体訓練も現地解散になり、
いよいよ奴との対決が迫ってきた。
当人同士よりも周りの奴らの方が盛り上がっていて、
どちらが強いのかとか、どっちが勝つかで賭けをしたりしている。
まったく外野は呑気なもんだぜ。
実際に喧嘩をする場合はやる場所が重要になってくる。
人目につかず、ある程度の広さがないとならない。
どこでやるかを探し歩いていたが、
適当な場所が見つからないでいたら、
外野の奴らが『もう適当にその辺でやったら?』とか言い出した。
俺は『お前らは当事者じゃねぇから警察に通報されてもつかまらねぇからいいが、こっちは慎重に選ばんとヤバいんだよ!外野は黙ってろ!』
と言い返したが、確かにもう直ぐ日も暮れるし、
外野の奴らもガヤガヤしだしている。
『.....早く場所きめねぇとヤバいな!』
しかし田舎とはいえ駅前だから家が密集していて、
都合の良い場所がない。
俺は仕方がないので通報される危険を承知の上で、
『あ〜なんか面倒くせぇ!もういい。ここでやろうぜ!』
と民家の駐車場を指差した。すると....
『俺はどこでもいいぜ』と奴が言ったので、
『よし。決まった!』
そして俺たちは民家の駐車場の中に入っていった。
対峙し合う俺たちはどちらも仕掛けず様子をうかがっていた。
喧嘩で重要なのはこの間だ。
睨み合った時に相手の力量や自信や不安を読み取る。
ここで大体の結末が見えるのだ!
”なるほど、体格もいいしチカラは強そうだけど、俊敏な動きは出来そうにないな。こりゃいわゆるパワーヒッターだな。それなりに喧嘩はこなしてきたようで自信はあるようだが、内心ビビってる感があるな?ここに来るまでに誰かに何か吹き込まれたか?こりゃ勝ったな。さてこっちから喧嘩のキッカケを作ってやって一気に大技で決めてやるか!”
そこで俺は言った。
『フッ...どうした?かかってこいよ!』
『何にやけてんだよ!俺は相手から来ねぇとやらねぇ太刀なんだよ!お前の方こそサッサとかかってこいや!』
『ふ〜ん。あっそ!』
と言い放った俺はいきなり奴に右キックを喰らわした!すると、
『おっ!きたか!』と余裕のあいつ。
カチンときた俺は、
『この野郎!なに余裕かましてんだ。1分で眠らしてやる!』
『ほう。やれるもんならやってみろや!』
と言いはなつと同時に奴の右ストレートが俺の顔面に飛んできた!
それをヒラリとかわし、逆に奴の顔面に右フックを叩き込んだ。
普通ならこの一発で終わるのだが、なるほど番をはってることだけはあり、
ぐらりとはしたが倒れないで、再び向かってきやがった。
俺は次が決めどきのチャンスだと直感し、
必殺の”空中変形二段蹴り”を繰り出した!
これは俺が開発した必殺技で、空中に飛び上がりながら左足を相手の顔面の前まで真上に高く蹴り上げ、その左足を引きおろすと同時に右足で遠心力を使い、空中回し蹴りを相手の側頭部に体重を乗せくらわす、一発必殺の大技だが、はずせば地面に足をついた時に、相手に背を向けるような体勢になるため、とてもリスキーな”諸刃の剣”の技なのだ!だから技を出すタイミングがとても重要になる。
だが俺の必殺技は見事に奴の左側頭部に思いきり決まった!
”よし!完璧に決まった!”
これにはさすがの奴も真横に吹っ飛んだ。
そして詰めの攻撃として更に顔面に思いきり蹴りを入れた。
すると.....
『まった!まった!まってくれ!俺が悪かった謝るからやめてくれ!』
『ふざけんなこの野郎!俺に喧嘩を売ったことを一生後悔させてやるよ!』
『ごめん!本当に俺が悪かった。許してくれ!』
『だったら土下座せい!』
『................土下座だけはできん』
『ほぅ、だったら死ねや!』
と俺は再び奴の腹めがけてキックをみまった!
『わかった!わかったよ!するからやめてくれ!』
『さっさとせんかい!』
あいつは一瞬ためらい、すごく悔しそうにその場で土下座した。
『.....すまなかった。俺が悪かった...ゴメン...』
男が土下座するのは完全屈服した証。死ぬほどツラい。
『.....わかればいい。もういい、頭を上げろ』
『お前メチャクチャ強いな。これほど強い奴は見たことないぜ。何か格闘技とかやってんのか?』
『そんなもんやってねぇよ』
『何もしてないで何でこんなに強いんだ?』
『そんなことは知らん!いいか次はこんなもんじゃすまさねぇからな!』
『あぁ......わかった』
『お前にも立場ってもんがあるだろう....だから今日、俺とお前は喧嘩しなかったと言うことにしておいてやるよ』
『え?お前はそれでいいのか?お前にも立場があるだろ?』
『そんなもんねぇよ。俺はただ自由に生きていたいだけさ。だから俺の前に立ち塞がっって、行くてを邪魔する奴は排除してるだけだ。お前らがどう生きようと、何をしようと俺には関係ねぇし、興味もねぇが俺の邪魔だけはするな』
『......わかった』
『いいかお前らもよく聴け!もしこの事が他に漏れた場合はここのいる全員をブチのめすからな。少しでも他の奴から、この事が俺の耳に入ったら誰がチクったかは問題じゃねぇ、全員ブチのめすからな!嘘じゃねぇぞ。前にも同じような事があったが情報が漏れたので、その場にいた全員を半殺しにしてやった事がある。嘘だと思うなら俺の過去を知ってる奴にでも聞いてみろ!俺はやると言ったら必ずやるからな!覚えておけ』
そう捨て台詞を残して俺はその場を立ち去って行った。
余談だがその後この事が外部に漏れることはなかった....
奴とはその後もとして現在も交友は続いている。