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「いないいないばあ」をネクストレベルに押し上げたい。
人はなぜ笑うのか。
とある理由により最近この件について考えることが多い。
それこそ脳科学や心理学のアプローチで語られている本を手に取ることもあれば、学術論文を参照することもある。難解ゆえに一向にページ数は進まないが。
それは一旦置いといて、巷ではこれに対してある程度流通している説がある。「笑いは攻撃の意識から来ている」というものだ。
動物の世界において歯を見せるというのは威嚇行為であり、誰かが無様な姿を晒したり、それこそいじめを行ったりといったことがまさに笑いの根底にあると。
この論自体は別に積極的に否定する立場ではないが、全ての笑いをこれで説明するのは無理があるのではないかと考える。
であれば窓辺に佇んで黒髪を靡かせる美少女はなにゆえ「登校中に猫がいて、挨拶したらにゃーと返事をした」だのという友人のどうということもない話に笑えるのか。
赤ちゃんは周りの大人たちが彼をあやそうと「いないいないばあ」をした時、楽しんでいると見せかけて「こいつ俺がそんなしょうもないことで笑うと思ってるの?愚かすぎん?」と嘲笑しているのか。僕はそうは思えない。
最近親戚の1歳くらいの子供と戯れる機会があったのだが、このくらいの歳の子は「いないいないばあ」をすると効果覿面に笑う。何がそんなに面白いのかわからんが、これは実体験である。
どこで聞いて誰が言っていたのかも全く思い出せないが、乳幼児くらいだと顔を覆って隠していることすら正確に認識することができなくて、「いないいない」では目の前から忽然と対照が消えたと錯覚する。その空間をまじまじと見つめていると「ばあ」で登場した時に認知の不協和が起こり笑いが生まれるのだという。ただし「いないいない」を3秒以上続けるとむしろ怖いらしい。
実際親戚の子の前で、本気の「いないいないばあ」を見せてやろうと思い、その時たまたまフード付きのパーカーを着用していたのだが、フードを頭からすっぽり被って「いないいない」をしたところ、「ばあ」に行く前に許容時間をオーバーしたらしく大号泣された。これは多分時間だけでなく顔を完全に覆い隠してしまったことも恐怖心に拍車をかけたのではないかと思う。
さっきまであんなに喜んでいたくせに。
それまでは初めて会った僕に警戒心を抱きつつも興味を示して甘えてきていたのに、以降二度と近づかれなかった。ごめんて。でも僕も傷つくて。
なんの話だったか。
ああ、笑いは必ずしも攻撃的本能からきているわけではなかろうということが言いたかった。それよりもやはり僕は「予測と異なる事態が起こるから笑う」というのが本質的に思える。
であれば、だ。
「いないいないばあ」を大人になった僕は今更面白がることはできないわけだが、それを逆手にとって大人にも通じるギャグを生み出せるのではないかと考えた。いや、むしろ乳幼児から卒業し「いないいないばあ」では満足できなくなった子供にも通じるかもしれないと思っている。
実証実験の機会は未だにないが、その案というのは端的にいうと「いないいないばあ」の真逆をするという物だ。
「いないいないばあ」は「いないいない」で顔を隠し、「ばあ」でパッと顔を晒すことで乳幼児の笑いを掻っ攫う。つまり、「いるいる」と顔を曝け出した状態から「じい」で顔を隠せばよい。名付けて「いるいるじい」である。
考えれば考えるほど実証実験がしたい。3歳から5歳くらいの子供の前でこれを披露してどんな反応をするのか見てみたい。おそらくバカウケのはずだ。天地がひっくり返り戸籍がブラジル人になっていたとしても気付かぬほどに子供たちは大爆笑しているだろう。
小島よしおやなかやまきんに君でさえ太刀打ちできないほどこのギャグは爆発的な人気となり、女子高生を中心に僕の写真集はバカ売れし、石破首相とトランプ大統領の間に挟まれ「いるいる〜じいっ!」と顔を覆った瞬間が産経新聞の一面に張り出され円高が始まる。
しかし残念ながら僕の周りには適切な年齢の子供が見当たらないのでその効果を確かめる機会はなかなか訪れない。世界にとっては明確な損失だ。そこは本当に申し訳ないと思っている。
代わりにこの実証実験を、周りに手頃な子供がいる人たちに託したい。オープンソースだ。著作権フリーだ。なんなら芸人としてデビューしても文句は言うまい。子供達の笑顔は君の手にかかっている。あとは任せた。
・・・なんの話だったか。
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