NBAクリーブランドキャバリアーズのアントニオ・ラングTACから学ぶNBAのスカウティング
こんにちは!
デフバスケットボール女子日本代表監督の伊藤丈泰です!
今回はZOOMにて「NBAのスカウティングについて」というテーマでお話を聞きました。
いつも魅力的なセミナー主催してくださるコーチ東頭さんには感謝です。
日本に13年間選手やHCとしてバスケットボールに携わっておられた方なので、「日本へ恩返しを」という気持ちがとても伝わってきた内容でした。
また冒頭の説明ではバスケットはお互いから学ぶことがとても大切だとも言われており、一緒に向上していくことの大切さを再認識することができました。
1.スカウティングとは
まずNBAでは対戦相手のことを事前に分析します。
このことをスカウティングと言います。
クリーブランド・キャバリアーズ(以下キャブス)はチームワークスと言うアプリを使って選手たちと共有しているそうです。
そしてHCにはアドバンステープと言って、15分程度の対戦相手の特徴やセットオフェンスが編集さてたビデオクリップを渡すようです。
2.ディフェンスのゲームプラン
そのアドバンステープを見た後のHCのチームづくり。
まずはディフェンスのゲームプラン①〜⑤を考える。
①トランジションの時はどうするか。
②ポストディフェンスはどうするか。
③ピックアップポイントについて、どう考えるか。
④ピックアンドロールに対して、どう守るか。
⑤オフボールアクションに対して、どう守るか。
まず、①は誰がプッシュしてくるのか。
②であれば誰がポストアップするのか。そして、ファウルしないでフィジカルで守ることを徹底する。
③は、できるだけ高い位置でピックアップする。
④はチェイスアクションや、どう守かを考える。
⑤は最近だとドリブルハンドオフに対して、どう守るかを考える。
3.オフェンスのゲームプラン
対戦相手がピックアンドロールに対して、どう対応するのかを見てオフェンスは考えると言う。例えば、相手が頻繁にスイッチをしてくるのであれば、どう攻めるかといった具合に決めていく。
インサイドのスクリナーのディフェンスが足がなく、下がって守るようであれば「ダウンヒルドライブ」といってオンボールのユーザーがスピードに乗った状態でドライブを仕掛ける。
相手がゾーンディフェンスを仕掛けてくる場合にも、ピックアンドロールを使うと言う。
4.スカウティングのアドバンステープの創り方
まず、自分たちと同じ守り方をするTEAMを選ぶこと。
そして、そのTEAMの作戦がうまくいったgood DFとうまくいかなった場合のBAD DFの映像を準備する。
キャブスは基本的にはファイトオーバー。
ピックアンドロールディフェンスではスイッチ、ショウ、トラップを仕掛ける。もちろんNBAにはたくさんの守り方が存在する。
相手のシュートに対しては必ずいいコンテストをする。
まずは体をぶつける意識。フィジカルの強さが大切である。
全体の試合映像とパーソナルビデオという個人に向けた映像を準備して、ウォークスルーを行う。
とにかく相手の傾向を抑えることを重視する。
試合前に相手の情報にアジャストする際は、ティーチングスピードといって、ゆっくり丁寧にやる。
本気の練習の強度で毎回ウォークスルーはできない。
短時間でも相手の鍵となるアクションを取り出す。
全てのセットプレーを洗い出してウォークスルーをすると言ったようなことはしない。
そして、対戦相手の個人的によくする傾向にある好きなプレーを分析する。
また、練習では4対4のシェルディフェンスをよく行う。
相手が誰であれ、自分たちのスタイルは崩さないようにしている。
キャブスでは1人がオフェンスリバウンド、4人はハリーバックをするのが基本的なコンセプト。
とにかくプレーオフや相手チームにとんでもないスーパースターがいない場合は、自分たちの基本的なコンセプトは変えずに挑む。
常に自分たちの長所を生かすことを考える。
自分たちのいつもの戦術を変えて、相手チームが苦しむのであれば変更する時はある。
相手チームのことについては、試合直前まで考えない。自分たちにフォーカスして、どうやって自分たちが向上していくかを考えることが大切。
5.ラング氏のコアバリュー
①PLAY HARD(特にディフェンスで)
②自分勝手ではなく、TEAM PLAYをすること。
③ディフェンスは手強く、手堅く。
④オフェンスは柔軟に。
⭐︎スペースを広くとって、スピーディーなオフェンスを目指している。
最近、フェニックスサンズのコーチから「ブレンダー」を学んだ。
ブレンダーとは、ミキサーのようにボールをどんどん回すこと。グルグルとペイントタッチをたくさん仕掛けること。
フリースローも大切にしている。
サイドラインやベースラインからのプレーもすぐに準備ができる大切なこと。
ディフェンスについては、とにかくTEAMのルールの徹底が大切である。
選手がやってはいけないこと。
それは大きく2つある。
一つ目は一生懸命やらないこと。
二つ目は自分勝手なプレーに走ること。
上記二点に関しては、コートでやったらベンチに座るべき。
6.ディフェンスの評価の仕方
プレーをしているときにチャートをつける。
つまり、点数化する。
例えば、シュートに必ずコンテストしに行った。
TEAMでディフェンス時に手を使うことを強調しているから、ボールに触る(ディフレクション)の回数も数えている。
数値化していくと面白いことがわかる。
ディフレクションが増えることによって、勝率が比例して上がることがわかった。
さらに細かく分析していくと、ピックアンドロールの時に、どこに手を置いているかなども数える。
またボックスアウトが徹底できているかを見る際には、ガード陣のリバウンド総数もみる。
コースに入ることを徹底させたいなら、オフェンスチャージングの数とか。
ただ、NBAはコーチがチームに14人もいる。
必要な数を伝えたら、すぐにわかる。
だから、ディフェンスでどのプレーの数字を大切にするか優先順位を考えることが大切である。
TEAMとして、1Q20点以内に抑える。
個人として、ファールは1Qで2個以内に抑える。
もちろんケビン・デュラントのような選手であれば1試合で10本フリースローを獲得するような選手であれば、9本にする8本にするなどの数値の目標を立てるのもいい。
7.キャブスのカルチャーを少しだけ…
キャブスがこだわっているのは、ファーストパスを出すのをショットクロックが残り18秒までにするというルールを設けている。
スリーポイントのアテンプト(総数)は大切。
8.質疑応答
・とにかくスカウティングでは傾向を大切にする。
自分たちが何をするかを考えることが前提。
ウォークスルーとビデオが大切。
ビデオは10〜15クリップくらい。相手がしてきそうなことをイメージできていることが大切。
それを克服するために5対5の1往復とかやらせると有効。
・NBAはHCが全ての練習を司るわけではない。
・なぜ5対5ではなく、4対4をよくやるのか?
それはバスケットボールは2対2、3対3がほとんど。
4対4はスペースも広く、ディフェンスが難しくなる。
ハーフで2箇所で回すなど、ローテーションも組みやすいから。
・NBAはプレイヤーズリーグ。
レブロンジェームスやカワイレナードなど、どんな選手にもウィークポイントはある。
スカウティングをしっかりして、選手任せにすることなくHCが決めていくこと。
ただ、スカウティングした内容を対戦相手が上回ることがある。
アジャストするために、
①バスケットボールIQが高い選手に自発的に解決策を考え実行させること。
②タイムアウトでHCがコートの中の選手に解決策を伝えること。
③PGやフロアリーダーを直接呼んで伝える。
などのやり方がある。
「日本人に合うNBAのスキルとは?」
・どのポジションの選手もパスもシュートもできるようにしておくこと。
⭐︎特にフィニッシュが大切。
→日本人はフィジカルが強い相手に対して、どう向かっていくか。
例えばフローター、逆足ステップ、ユーロステップなど。
⭐︎状況判断をうまくする
⭐︎シューティングを向上させること。
コンビネーション
→2人組のトレーニング。
ピック&ロールやドリブルハンドオフ。
ポケットパスのスキルトレーニングなんかも大切だね。
ピック&ロールの戦術レパートリー。
ドリブルハンドオフ。
選手にとって苦手なところをカバーできる戦術を採用する。
⭐︎スペインピックの守り方。
→まずスタックでスタートする。
バックスクリーンをかけに行くDFに対して、
「ドロップしろ!!!」と声をかける。
そして、ガード同志でスイッチをして終わり。
これだけでなく、アグレッシブにトラップディフェンスをかけて止めることもある。
スクリーナーのディフェンスを下げてドロップしてくる相手に対して、
どうカウンターをするかオフェンス側は準備しておく必要がある。
9.「チームビルディング」について
ラングコーチがよく使う名言。
それは、「三本の矢」の話。
チームの大切さを説くときにとてもわかりやすく伝えられる。
チームで遠征に行くなら
博物館にみんなで行くなどして絆を深める。
ハドルで使う言葉もいくつか準備をしておくといい。
→①1・2・3「コンピート!」
②1・2・3「ディフェンス!」
③1・2・3「タフネス!」
④1・2・3「アンセルフィッシュ!」
⑤1・2・3「コミュニケーション!」
など、今のTEAMが直面している問題に対して最適なハドルを組む。
・ポストアップは大事か?
→現代では、ピック&ロールからのポストアップが簡単である。
クロススクリーンからのポストアップもよくある。
ミッドピック&ロールもコーチKが得意にしている戦術である。
⭐︎選手のモチベーションアップのさせ方について
・とにかく次の試合に向けて切り替えをすぐにする。
・毎試合クリップ動画を見せる。
→いいプレーをすれば、いいクリップ集になる。
「コミュニケーション」については、アメリカの選手も最近喋らないそう。
だから、コーチにも喋るな!と言う時間を作る。
そうすることで、選手が自分で練習を盛り上げることができる。
また、喋る練習は練習の1番最初にするようにする。
ディフェンスのチャートはディフレクションなど数値化していたが、オフェンスはどうなのか?
→1試合を通して、以下の数字は追いかけるようにする。
①スリーポイントの総数 35本
②アシストの総数 20本
③ターンオーバーの総数 14個以内
④レイアップシュートの数
⑤フリースローの総数 何本
以上、4300文字!
最後までお読みいただきありがとうございました!
書ききれなかったことは、またアップしたいと思います。
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