夏を迎えるこの時期に ー「挑戦」という言葉の弊害についてー
この「挑戦」という言葉をあなたは多用する人でしょうか?
では、次に、
この「挑戦」という言葉でモチベーションが高まる人でしょうか? もしくは、
力が入り過ぎちゃって、動けなくなってしまうタイプでしょうか?
さて、「挑戦」と「実験」という言葉を辞書で調べてみますと下記のようにあります。
「挑戦」:
1 戦いや試合をいどむこと。
例:「―に応じる」「世界チャンピオンに―する」「―状」
2 困難な物事や新しい記録などに立ち向かうこと。
例:「世界記録に―する」「エベレスト登頂に―する」
「実験」:
1 事柄の当否などを確かめるために、実際にやってみること。
また、ある理論や仮説で考えられていることが、正しいかどう
かなどを実際にためしてみること。
例:「化学の―」「―を繰り返す」「新製品の効能を―する」
2 実際に経験すること。
「挑戦」を否定する気はありません。ただ、この「挑戦」という言葉、上記の辞書の例をご覧頂くと分かりますように、「一大決心」や非常に準備が必要な大きなことに取り組む、まさに「挑む」というようなイメージではないでしょうか。つまり、気軽に取り組める雰囲気ではないことです。このように捉える人は、動けなくなってしまうのです。
一方、「実験」はどうでしょうか。比較すると、失敗することがどこか前提としてあります。多くの場合、その失敗から新たなこと(実験では主にデータですが)を得られたら十分です。ただ、そこまで全力で取り組んでみたり、準備してみたりは重要です。実際にどんな世界でも、「実験」のための準備に本当に力を使います。実験をするために何億という機材を買ったり、いろんな人を動かすものもあります。
しかし、主にお子さんや(その家族)だけの問題の「受験」はこれほど大きな「お金」というコストは不要です。
また、勉強だけでなく、スポーツでも、練習は「実験」の積み重ねです。
例えば、こうやってみたけど思うところにサッカーボールを蹴れなかった。ではどういう足の踏み込みがよいのか、と考えて、違う方法をやってみる。こうやって上達していきます。
「挑戦」という言葉で動けて、いろんな成果を出してきた方は、上記のことを忘れないで欲しいと思います。世の中は、ここまで書いてきたようにそのように動ける人ばかりではないのです。「挑戦」と言った瞬間に身構えて動けなくなる人がいるのも現実です。
だからこそ、もっと気軽に動ける言葉に変換してみてはどうでしょうか。
お子様の中学受験も「実験」くらいに捉えておけば、そこから得られるものは多くあります。
学校の勉強以外の外の世界を経験できる「受験」は、真剣に取り組んだからこそ、悔しいという気持ちを味わったり、自分の強みが分かり、自信を得ることもあります。また、一生の友人を得ることも出来たりします。
そして、この「実験」が成功か失敗かはその時点では分かりません。何十年後かに分かる可能性があるだけです。ひょっとしたら、死ぬ直前に分かることもあるでしょう。それは「結果」が出た以降のその人の人生が決めるからです。
最後に、覚えておいて頂きたいことは、
それほど「言葉」の力は強い
ということです。
だからこそ、普段使う言葉にもっと意識を持って頂きたいと思います。