シナジーマーケティングが副業解禁!顧客への価値を最大化することを目的とする制度作りとは?
ジョブサーフは、副業を希望する社員の皆さまと社会課題解決を目指すソーシャルセクターを繋ぐ、マッチングプラットフォーム「JobSurf」を運営しています。
今回は実証実験として、JobSurf の利用社員を輩出いただいたシナジーマーケティング株式会社の取締役副社長の奥平さんに、副業制度作りにおける考え方について話を聞きました。
シナジーマーケティング株式会社 取締役副社長
奥平 博史 さん
シナジーマーケティング株式会社(以下、シナジーマーケティング)の副業制度はどのような目的で導入されましたか?
副業制度については、このコロナ禍で「新しい働き方」を本格的に推進していくという取り組みのなかの1つの施策として今年2021年3月から制度を設けました。
シナジーマーケティングが定める新しい働き方のテーマとしては、「顧客への価値貢献を最大化するために、個人と組織がこれまで以上に高いパフォーマンスを発揮できる働き方へ」というものを定めています。
経営原則にもある、「社員の成長を支援し、物心両面において社員の豊かな生活の実現」を目指すためにも、これまで当たり前とされてきたさまざまな制約を見直し、より一層、個人、組織の能力を解放し、顧客への価値貢献をこれまで以上のものに変えていってもらいたい、という考え方で制度を新設していきました。
そのような中で、社員の成長機会を最大限にするための手段として、副業はこれからの働き方にとって重要な取組みであるとの考えに至り、制度導入に踏み切りました。
また、副業制度以外では、在宅勤務をいち早く取り入れ、2021年2月時点での出社率は大阪オフィス10.5%、東京オフィス6%と、業務性質上、出社して業務を行う必要がある社員以外は、ほぼ全員が在宅勤務前提で業務をおこなっています。
また業務時間の合間での家事やお子様のお迎えなど、一時的に業務を離れる場合に利用する分割勤務制度も取り入れ、就業規則にも反映するといった取り組みをおこなってきました。
コロナ禍のなかで、比較的早いタイミングで「新しい働き方」の取り入れ方を進めていらっしゃるように感じますが、どのように判断を進めていったのでしょうか?
早いかどうかについては、もっと早い会社もあるので評価しにくいところではあるのですが、コロナ対策に留まることなく最終的にどの状態を目指すのかといったゴール設定を強く意識し議論を重ねてきました。
根底にあるのは、短期的な利益の拡大ではなく、社員にとって会社をより安心して長く活躍できる場にしたいという想いです。そのためには、新しいルールにも固執することなく、社会や事業の変化に応じて常にアップデートを行っていきたいと考えています。
当時は私も、これからの働き方について、さまざなまセミナーに出て事例を集め、他社の経営者の方にどこまでの対応をしているかについて相談をさせてもらっていました。
多くのアドバイスをもらうなかでゴールイメージを定めてプロジェクトメンバーに共有しつつ、複数の選択肢を洗い出してもらい、そこから絞っていった感じですね。
そのなかで特に議論の中心となるのは「場所」の問題でした。
まずは在宅勤務ができる環境を整えていこうとするなかで、特に当社においては個人情報を取り扱う事業ですので、問題になるのはセキュリティです。
在宅でどの程度の情報の取り扱いをOKとするのか、というルール整備を優先的に進めていきました。
次の段階として、場所を選ばずどこでも仕事が出来るという制度の最終調整段階に入っています。ただこちらについては段階的に実施しようとしています。
あくまで目的は「顧客への価値貢献の最大化」なので、自由と責任を履き違えてしまうことがないように、ルールの線引きについては引き続き慎重に議論を進めています。
制度が出来る前は副業NGだったのでしょうか?
いえ、制度が出来るまでも、個別に相談があったものに対して都度判断のうえ許可をしていたことはあったのですが、明確なルール・制度は存在しておらず曖昧な状態になっていました。
実は少し前まで、社内では副業に関して帰属意識などの観点から否定的な意見が多かったのですが、やはり今回のコロナの影響で一気に時代が変化したことで、経営陣自体が意識を変え、集中的に議論を進めて正式に制度化といった背景があります。
基本的に就業時間以外を会社が拘束するのはおかしいと考えていて、業務時間外については自由であって良いと思うんですよね。
もちろんある程度のモラルの中で成立するものではあるのですが、基本的には個人の自由ですし。
制度として作っていくなかでは、最低限のルールは設けてはいますが、会社の考え方や性善説に基づいて設計して進めてきました。
副業については申請制ということですが、判断軸はどのようなものですか?
本業への厳密な関連性は求めていないものの、その副業が本人の成長に寄与するかどうかを判断軸としています。
社外に出て、異なる環境で仕事をしたり、事業を営むことでスタンスや知識、スキルが向上、幅広い意味合いで能力開花に繋がり、結果的に本業に対する見え方が変わり、事業への貢献に寄与することもあると考えているためです。
当社の場合まずは申請制から始めていますが、今のところ申請が上がってきたものに関しては全て承認しています。
副業制度を開始してから現在まで、どの程度の方が副業を始めているのでしょうか?
制度を開始してから現時点(2021年7月)で、合計12名副業をおこなっています。全体の約5%ですね。
内訳としては下記の通りで、自身で事業を運営されている方から、新規事業支援などさまざまな領域で活躍されています。
副業制度において、どのような効果を期待しますか?
期待する効果としては2つあると考えています。
1つは、副業での経験が新たな成長の起点となってもらいたいということです。
基本的に人の成長というのは実際の仕事によって何かの気付きがあり、足りていないものに気づいてギャップを埋めていこうと努力したり、失敗や成功を経験するなかで、新たなビジョンやキャリアステップを描いていくという、実際に経験した仕事が成長の起点になるというケースが大半であると考えています。
そう考えたときに、会社のなかで経験できる仕事ってやはり限りがあるんですね。
当社とは異なる分野で仕事をしてもらうことで、当たり前だと思っていたスキルが実は社外では重宝される、逆に社内で通用してきたことが外に出てみると全く通用しない、そんな経験を経て新しい感性を磨いたり、インプットを促進していくといった動きに繋がればと考えています。
それは副業だからこそ得られる経験だと思いますね。
もう1つの期待することとは何でしょうか?
人事領域の責任者という観点でもともと抱えていた課題として、シナジーマーケティングで働き続けるなかで、社内のみで成長機会を持続的に獲得していくことに限界を感じ、退職していく社員が一定数発生していました。
特に優秀な社員であればあるほど、成長機会を貪欲に求める傾向があるので一定期間で離れていってしまうことがあります。
そんな成長機会を求める社員に「退職」以外の選択肢として「副業」を提示することで、シナジーマーケティングに残りながら外でどんどん機会を得てもらうという動きをしてもらえればと考えています。
最後に、ジョブサーフに期待することはなんですか?
ジョブサーフさんが担っていくべきこととしては、「副業の民主化」、つまり企業に対しても個人に対しても副業をもっと当たり前にしていく、ということだと解釈しています。
人事の責任者として目標設定などに携わっていると非常に感じることなのですが、人は誰しもが可能性を秘めていて、何かのきっかけがあれば可能性が一気に解放されるんですね。
そのきっかけというのが人によって全く異なるので、その中の1つとして「副業」が何かしらのきっかけとなって可能性が解き放たれる人も出てくると良いなと考えています。
一方で会社側からすると、いわゆる副業するデメリットというのも考えなければならないので慎重に進めていかないといけないし、個人としてもまだまだ副業は一般的ではないので、副業機会そのものを経験している数は限られているというのが現状です。
今後はより一層「副業」が一般的になっていければと思いますし、ジョブサーフさんがその役割を背負っていってもらえればと思います。
奥平さん、ありがとうございました!