それでも、文章を書く、ということ
前回 ⇒ ブログ収益化における「営業モデル」と「作家モデル」の違い
なんにしてもそうだが、継続して取り組む、ということは人間にとって最も難しいことの一つである。三日坊主、などという言葉もあるが、三日ももたずに飽きてしまうなんてことはザラにある。日記を書く、というのも三日坊主の代表選手みたいなものだろう。
ブログサービスというものが始まった2000年代初頭、誰に頼まれるわけでもなく日記のようにブログを書いていたが、それもごく初期の頃だけであって、いつのまにやら更新しなくなってしまった。 私のような経験をした人は多いに違いない。
そんなブログであるが、ただ単に日記として使うだけでなく、収益を発生させる道具として注目されるようになった。いわゆるアフィリエイトというやつだ。その際、稼ぎ方のパターンとして「作家モデル」と「営業モデル」の2種類あることは前回の記事で紹介したとおりである。
実際にやってみて分かったのだが、収益を得るには営業モデルの方がはるかに簡単だ。その理由も前回書いた。意外だったのは、仕事だと割り切ることでかえってモチベーションが維持できたという点である。収益を生む記事を書くことにフォーカスすることで、やるべきことがはっきりしてくる。毎月の売上という目に見える形で反映されるので、執筆作業もはかどる。自分の思ったことをありのまま伝える「作家モデル」では、こうはいかなかっただろう。
こうやってブログの収益化をコツコツとやっていたわけだが、これは今から5年以上前の話であって、いまのアフィリエイトの難易度は当時よりもはるかに高くなっていると思う。なにせ日本語を書ける人なら誰でも参入できるため、競合の数が多くなりすぎた。その中にはプロのWebマーケターも多数いる。素人が勘と根性でなんとかできる時代ではなくなったのだ。それに、Googleの検索アルゴリズムも当時から大きく変わった。読者の弱みやコンプレックスにつけ込んで高額商品を売るようなサイト、具体的には美容・健康や金融関連に関しては素人の適当な記事が検索結果に出ることは少なくなった。こうしたサイトにおいて最も重視されるのは信頼性なので、専門家が書いた記事が上位表示されるようになったのだ。一般消費者にとっては素晴らしいことであるが、アフィリエイターにとっては死活問題だ。
アフィリエイトブームの頃は、カリスマと呼ばれるようなアフィリエイター達がいたるところで活躍していた。ある人はセミナーを開き、またある人は有料メルマガの会員を増やした。そうした人たちも、ブームが去るにつれて少しずつ表舞台から消えていった。
姿を消したという点においては、作家モデルのブロガーも同様だ。むしろ、こちらの方が生き残りは厳しいかもしれない。皮肉なことに、個人が影響力を持つという意味においては5年前よりも今の方が上であろう。それは例えば、インスタなどを駆使したインフルエンサーであったり、動画で情報を発信するYouTuberであったりと、名前を変えて活躍している。それはつまるところ、ブログだけで食べていこうとしている作家モデルの難易度が格段に上がったことを意味する。個人の名前でファンがつくのは、文字通り作家くらいしかいなくなってしまったのかもしれない。
営業モデルの前提が崩れ、作家モデルの難易度が上がって、それでもなお私はいまこうして文章を書いている。多分、この話題だけで1万字近くなっているはずだ。誰に頼まれるわけでもなく、自分の考えを整理し、文章という形で残すという作業自体を楽しんでいるということに、今更ながらに気づいた。それは多分、文章を書くということが私の人生における「持ち場」だからなのだと思う。
研究者を志していたときも、研究者をあきらめて勤め人として社会人になったときも、いつもどこかで自分の人生における持ち場を探していた。常に意識していたのは、自分にとって未知の世界に飛び込み、知的好奇心を満足させるようなワクワクする体験ができるかどうか、だった。例えるならば何もない荒野を前にして、一から村を作っていくような、そんなイメージである。そこで得た経験なり苦労話なりを自分なりの方法で整理し、分かりやすく伝えていく。それが私が考える私の人生の持ち場、ということになる。
そうやって考えると、文章を書くという作業はこのイメージにピッタリとあてはまるのだ。真っ白な原稿用紙を前にして、何を書くかのか自由に決めることができる。いや、もうすでに書きたいことは決まっている。研究者として、サラリーマンとして、あるいは一児の父として、自分が見聞きしたことを、自分なりの視点で整理してまとめていく。そしてその作業自体もまた、自分の人生そのものとして積み上げられていく。
収益を気にする必要はない。アクセス数も気にする必要はない。だけれど、何かの縁でこのnoteのどこかの記事に検索で訪れてくれた人がいるのであれば、その人にとって何らかのお土産を残していけるような記事が書けたらいいなと思う。
というわけで、週一回、毎週土曜日に何らかの記事を更新してい着たいと思います。良縁になれたらと思いますので、ご興味のあるかたはフォローしていただければと思います。
(了)
まとめて読む
(1) 文章を書く、ということ
(2) アフィリエイト狂騒曲
(3) 仮想通貨で狂い咲き。
(4) ブログ収益化における「営業モデル」と「作家モデル」の違い
(5) それでも、文章を書く、ということ(本記事)