こだわり(好きなこと)
好きなこと。発達障害者にとって、それはしばしば「こだわりの強さ」とセットで表れます。「好きな服は〇〇社、綿100%のスタンドカラーのシャツ」と言ったら、他のシャツは一切含まれません。ずっと同じシャツばかり着続けているといった例は、感覚過敏も含め、身近に見られることでしょう。
しかしこの話をすると、先回りして「こだわりなんて言うけど、要は面倒くさいってことでしょう?」なんて自らおっしゃる当事者さんもいます。残念なことです。発達障害者のこだわりは、なぜ問題視されがちなのでしょう?
思うにポイントは「こだわりを発揮する対象と場面」にあります。
先日まで満開だった、桜を例に挙げましょう。街中で見かける並木の桜は、主にソメイヨシノという品種です。この花びらはほとんど白。「桜=ピンク」というイメージと比べ、かなり淡い色味です。
多くの方は「でも桜だからピンクだよね」で済ませるでしょう。ところが発達障害の我々が、色にこだわりを持っていた場合そうはいきません。
「全然違います。その理屈だと桜色もマゼンタも、みんなピンクじゃありませんか」……こう言い張る様子が容易に想像できます。
これがお花見の席だとしたら、確かに余分な情報かもしれません。では、お花見のポスター制作の場面だったら? 写真の加工が必要な場面だったらどうでしょう? 微妙な色の表現にこだわりを持つことは、むしろ重要なことのはずです。
おわかりですよね。このとき変化しているのはこだわりの対象ではなく、こだわりが提供される場面です。
発達障害者のこだわりは、多くの場合「他のでもいいけれどこっちのほうが好き」とは違います。こだわりが感覚過敏や得意・不得意の偏りと強く関係している場合、無視したり取り除いたりすることは、本人の体調や日常生活にまで影響を及ぼします。
どうしても譲れないことについては、こだわりが役に立つ場面を選んで活動する……それも自他のための、立派な工夫と言えるのではないでしょうか。