猫に学ぶ発達障がい3 ~本人だけにわかるこだわり編~
我が家の猫は、窓の外を眺めるのが好きです。日当たりの良い午前中、部屋にある大きな窓のところで丸くなり、道行く人や車を見送っています。たまに野良猫が通りかかったときは毛を逆立てて唸っているところを見ると、縄張りを見張っているつもりもあるのかもしれません。
そんなある休日の朝、私は服や小物にアイロンをかけておりました。高温になる器具ですから、何にでも興味を示す猫が触っては大変です。アイロンのスイッチを入れる前に、私は猫を廊下に出して、部屋の戸を閉め切っておりました。
にゃあにゃあと廊下で鳴き声がしています。私は知らないふりでアイロンをかけ続けます。十分、ニ十分が経つうちに、いつしか廊下からの鳴き声はやんでいました。
猫は諦めたのかって? そんなわけがありません。
アイロンを片づけてから迎えに行くと、猫はとても怒っていました。毛皮をふくらませて私の足を前足で抱え込み、かぶりついたかと思うと後ろ足で猛烈な猫キック。よくも閉め出したなと言わんばかりの抗議がしばらく続きました(靴下が厚手で本当に助かりました)。
そうして私の靴下を痛めつけたあと、部屋に戻った猫がどうしたか?
特別なことはありませんでした。猫はいつものように窓辺に座り込んで、外を眺めはじめました。
そこでようやく気づきました。猫はいつもの場所でいつもの時間に、縄張りを確かめたかったのです。猫にとっては縄張りの安全も、その安全を守るための見張りの時間も、私の想像以上に大切なことだったのです。そんな大切な時間を、アイロンかけごときが邪魔するなんて、猫にはまったく納得のいかないことだったのです。
私たち発達障がいの人は、猫と同じというわけにはいかないかもしれません。
自分のこだわりをよく知って、他の人に伝えられるよう準備しておくこと。こだわりをやわらげたり他のことに使ったりできるよう工夫してみること。こうした解決方法をいくつか持っておくことで、私と猫の間に起こったような誤解と喧嘩をあらかじめ防ぐことができると考えているのですが……いかがでしょう。