商船三井はホワイト企業か?人的資本データから分析
今回は。海運業界の大手、株式会社商船三井の人的資本データを分析し、働く職場として魅力的か?ホワイト企業診断をしていきたいと思います。
今回の情報ソース
2023年3月期の有価証券報告書および企業ホームページに掲載されている社会データを主に参考にしました。
平均年収
商船三井の平均年収(単体)は15,933千円(約1,593万円)となっています。これは日本の大手企業としては高水準ですね。
海運業界は景気変動の影響を受けやすく、年収も変動する傾向にありますが、この水準は従業員にとって魅力的な待遇と言えるでしょう。
従業員数
連結:9,795人
単体:1,670人
商船三井は、連結で約1万人、単体で約1,700人の従業員を抱える大企業です。海運業の特性上、グループ会社や海外拠点を多く持つことが反映されています。
離職率
自己都合離職率(単体):2.6%
この数字は非常に低く、従業員の定着率が高いことを示しています。従業員の満足度が高く、長く働くには適した環境であると思われます。
研修制度について
従業員一人当たりの平均研修時間(単体):38時間
従業員一人当たりの研修費用(単体):
陸上職員:249,000円
海上職員:179,000円
陸上職員と海上職員というカテゴリに分かれているのは、海運業ならではですね。
陸上職員はいわゆるホワイトカラー職で、特に彼らには積極的に投資していることがわかります。
中途採用に関して
キャリア採用人数(単体):85人(全体の54%)
いわゆるJTCでも、もう全体の半分がキャリア採用で人材を獲得する時代になったのは、ここ数年の大きな変化と言えます。
商船三井の求人ポジションを見てみると、「造船プロジェクトマネジメント」といった海運業界ならではのものもある一方、「経営管理」「経理」「DX企画推進担当」というような、他業界からもチャレンジできるポジションもありました。(2024年10月現在)
海運業という、グローバルかつスケールの大きな業界で働きたいという人はエントリーしてみてはいかがでしょうか?
女性活躍推進について
女性管理職比率(連結):15.0%
女性管理職比率(単体):6.3%
男性の育児休業取得率(単体):55.9%
連結ベースでの女性管理職比率は比較的高いですが、単体の数字は正直低いです。海運業は、伝統的に男性社会のイメージが強いですが、今もそれが続いていることが読み取れます。
男性の育児休業取得率は非常に高く、男性の育児参加を積極的に推進していることがわかります。ワークライフバランスの向上に取り組んでいる証拠と言えるでしょう。
労働環境
年間平均総実労働時間(単体):1,935時間
月間平均残業時間(単体):14.7時間
労働時間は一般的な大企業と比べて標準的な水準です。月間平均残業時間も比較的少ない方です。労働時間面ではホワイトだと言えます。
従業員満足度
エンゲージメントサーベイ回答率(連結):90.9%
これは異常なくらいに高い数字です。良く言えば愛社精神が強いと言えますが、裏を返すと、社外よりも社内を見ている人が多い内向きのカルチャーの可能性がありますね。
ただ、そういう会社は社風が合えば、めちゃめちゃ働くのが楽しいので、社風が合うかどうかが、この企業で働くことのポイントとなるかもしれません。
注目すべき追加データ
1. 障がい者雇用
障がい者雇用率(単体):3.2%
法定雇用率(2.3%)を大きく上回っており、多様性の確保と社会的責任を果たしていると評価できます。
2. 年齢層別従業員比率
単体データでは、30代が全体の36.6%を占め、次いで50歳以上が21.3%となっています。比較的若い世代が多く、経験豊富な社員とのバランスが取れていることがわかります。
こういった人口バランスを保っている日系企業は正直珍しいです。日系の伝統的大企業にありがちな「働かないおっさんの大量発生している」という状況ではないのは、30~40代にとってはいいことですね。
3. 平均勤続年数
単体の平均勤続年数は14.2年です。これは安定した雇用を提供していることを示しています。これも非常に長い方で、居心地の良さ、クビにならない安心な環境があると言えます。
4. 労働安全衛生
LTIF(Lost Time Injury Frequency):0.26(当社保有・管理船及び傭船を含めた当社グループ運航船船員)
海運業界は事故と隣合わせの仕事ですが、この数値は比較的低く、安全な労働環境の提供に努めていることがわかります。
5. 有給休暇取得率
単体の有給休暇取得率は59.3%です。まだ改善の余地はありますが、半数以上の従業員が有給休暇を取得していることは評価できます。
ホワイト企業としての総合評価
株式会社商船三井は、以下の点からホワイト企業としての要素を多く持っていると評価できます:
高水準の平均年収
非常に低い離職率
従業員教育への積極的な投資
中途採用の積極的な実施
男性の育児休業取得率の高さ
適切な労働時間管理
障がい者雇用率の高さ
安定した雇用(長い平均勤続年数)
労働安全衛生への取り組み
一方で、以下の点については改善の余地があります。
女性管理職比率(特に単体)の向上
有給休暇取得率のさらなる改善
総合的に見て、商船三井は従業員を大切にし、長期的なキャリア形成を支援する企業文化を持っていると言えます。海運業界特有の課題もありますが、ワークライフバランスや多様性の推進にも取り組んでおり、ホワイト企業としての要素を十分に備えていると評価できます。
特に、障がい者雇用率の高さや男性の育児休業取得率の高さは、社会的責任を果たし、従業員のワークライフバランスを重視する姿勢の表れとして高く評価できます。また、低い離職率と長い平均勤続年数は、従業員の高い満足度と会社への信頼を示しています。
一方で、女性管理職比率の向上など、ダイバーシティの面でさらなる改善の余地があります。これは海運業界全体の課題でもありますが、今後の取り組みが期待されます。
結論として、株式会社商船三井は、従業員の待遇、教育、安全、多様性などの面で多くの優れた取り組みを行っており、ホワイト企業としての評価に値すると言えるでしょう。ただし、完璧な企業はなく、常に改善の余地があることを認識し、今後も継続的な取り組みが必要です。
ちなみに、商船三井は決算関連の企業分析は「妄想する決算」さんが詳細に解説しているので、一緒に読むと、企業の理解が深まります。
このnoteではこれからも多様な企業の、人的資本データについて分析し、ホワイト企業度を評価していきます。参考になりましたら、スキ・コメント・フォローをお願いします!
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