丸紅はホワイト企業か?人的資本データから分析
はじめに
この記事では、総合商社の丸紅株式会社を「ホワイト企業」として多角的に評価します。転職検討者や人的資本データを重視する経営者・人事部門にとって有益な情報を提供することを目的とします。
厚生労働省が定める「ホワイト企業認定制度」の評価基準に加え、下記7項目も考慮し、総合的に判断します。これらの項目は、従業員の満足度や企業の持続可能性を高める上で重要な要素であり、ホワイト企業であるかどうかの判断基準として広く認識されています。
健全な経営と優れたビジネスモデル:収益性、成長性、市場における競争力など
平均年収:業界平均との比較、年収推移
ワーク・ライフ・バランスへの配慮:労働時間、休暇取得、育児・介護支援など
人材育成への投資:研修制度、自己啓発支援、キャリア開発支援など
ダイバーシティ&インクルージョン:性別、国籍、年齢、障害の有無などに関わらず、多様な人材が活躍できる環境づくり
労働安全衛生への取り組み:労働災害防止、健康増進、メンタルヘルス対策など
採用活動:公正な採用プロセス、多様な人材の採用
経営成績
丸紅は、2023年3月期連結決算で、過去最高の純利益5,430億円を達成しました。(有価証券報告書)
資源分野の好調に加え、非資源分野も堅調に推移しており、この堅調な業績は、総合商社としての多角的な事業ポートフォリオと、グローバルな事業展開によるリスク分散が効果的に機能している証左と言えます。
食料、電力、小売などの非資源分野における成長も、資源価格の変動リスクを軽減し、安定的な収益基盤を構築する上で重要な役割を果たしています。
2024年3月期は、世界景気の減速や事業環境の巡航化を前提に、連結純利益4,200億円と減益を見込んでいます(有価証券報告書)。
これは、将来の成長を見据えた戦略投資による先行投資分を織り込んだものであり、中長期的な成長に向けた戦略を重視した経営判断と言えるでしょう。
エネルギー転換や脱炭素化といった社会課題への対応も、今後の成長ドライバーとして期待されます。
待遇面
丸紅の平均年収は1,654万円です。(有価証券報告書より)
周知の事実ですが、総合商社業界の平均年収は高く、他業界と比較しても高い水準です。
ワーク・ライフ・バランス
丸紅はワーク・ライフ・バランス推進に注力しており、月間平均残業時間は約17時間と、全業種平均(16.6時間、令和3年就労条件総合調査)と比較しても低い水準です。(有価証券報告書) これは、業務効率化や働き方改革への継続的な取り組みの成果と言えるでしょう。
有給休暇取得率は約60%で、厚生労働省の目標値70%には届いていませんが、前年度から上昇しており継続的な改善が見られます。(有価証券報告書) 取得率向上に向けて、会社として取得しやすい環境づくりや意識改革を推進していく必要があるでしょう。
男性の育児休業取得率は約88%、女性の育児休業取得率は100%と非常に高い水準であり、育児と仕事の両立を支援する体制が整っていると言えるでしょう。(有価証券報告書)
また、離職率は2.8%と低く(有価証券報告書)、社員の定着率が高いこともホワイト企業の指標の一つです。
人材育成への投資
丸紅は人材育成に力を入れており、1人当たり年間約52時間の研修時間を設けています。(有価証券報告書)
研修体系は階層別研修、専門スキル研修、語学研修、海外研修など多岐に渡り、社員のキャリアステージやニーズに合わせたきめ細やかなプログラムが提供されています。
新入社員研修から経営幹部育成まで、長期的な視野に立った人材育成に注力していることが伺えます。(有価証券報告書)
また、MBA取得支援やビジネススクール派遣など、自己啓発を支援する制度も充実しており、社員のキャリア形成を支援する体制が整っています。
費用については非公開ですが、充実した研修内容から、人材育成への投資額は大きいと推測されます。
投資額やその効果に関する情報開示は、企業の人的資本へのコミットメントを示す指標となるため、積極的に開示していくことが望ましいでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョン
丸紅はダイバーシティ&インクルージョン推進にも積極的に取り組んでおり、多様な人材が活躍できる企業文化の醸成に努めています。女性活躍推進法に基づく行動計画を策定し、女性のキャリア形成支援や管理職登用に取り組んでいます。(有価証券報告書)
女性管理職比率は約8.2%で、(有価証券報告書) 業界平均や他社事例と比較して低い水準です。
管理職登用における課題を分析し、具体的な目標設定と達成に向けた取り組みを強化していく必要があるでしょう。
障害者雇用率は2.73%で、法定雇用率は満たしているものの、更なる向上が期待される水準です。(有価証券報告書)
障害者雇用促進に向けた取り組みや、働きやすい職場環境づくりを推進していくことが重要です。
外国人従業員比率は約19%(社員比率から推定)で、グローバルに事業を展開する丸紅にとって、多様な文化や価値観を持つ人材の活用は不可欠です。
国籍や文化、言語の壁を越えて、多様な人材が活躍できるインクルーシブな職場環境づくりが重要です。
労働安全衛生への取り組み
丸紅は、社員の安全と健康を最優先に考え、労働安全衛生への取り組みを積極的に推進しています。
労働災害の発生を未然に防ぐための安全教育やリスクアセスメントを徹底するとともに、健康診断やストレスチェックの実施により、社員の健康管理にも力を入れています。
休業災害度数率は0で、安全管理体制が適切に機能していることを示しています。(有価証券報告書)
健康診断受診率は国内100%、海外98.3%と非常に高く、社員の健康への意識の高さが伺えます。(有価証券報告書)
また、ストレスチェックの実施率も高く、メンタルヘルス対策にも積極的に取り組んでいることが評価できます。(有価証券報告書)
これらのデータは、丸紅が社員の健康と安全を重視していることを示す重要な指標と言えるでしょう。
採用活動(新卒&キャリア入社)
丸紅は、新卒採用とキャリア採用双方を積極的に行い、多様な人材の獲得に努めています。
新卒採用においては、ポテンシャル重視の採用方針を掲げ、人物面を重視した選考プロセスを通じて、多様なバックグラウンドを持つ学生を採用しています。
これにより、将来の丸紅を担う人材の多様性を確保し、新たな視点や発想を取り入れる土壌を築いています。
キャリア採用においては、即戦力となる経験豊富な人材に加え、専門性の高いスキルを持つ人材の採用を強化しています。
異なる業界や職種での経験を持つ人材を採用することで、組織の活性化や新たなビジネス創出を促進しています。
2024年3月期における採用活動の実績を男女別に見てみると、新卒採用では男性38名、女性28名、キャリア採用では男性33名、女性24名となっています。(有価証券報告書)
中途採用比率は55.9%と、新卒採用者数とキャリア採用者数をほぼ同数採用しており、社外からの多様な人材や経験の流入を促進し、組織の活性化に繋げていることが分かります。(計算式:(採用者数102名 - 新卒採用者数45名) / 102名=55.9%、キャリア採用比率=(キャリア採用数57名)/(新卒採用者数45名+キャリア採用者数57名)=55.9%)
このように、丸紅は採用活動においても、多様性を重視した戦略的な取り組みを行っており、今後の企業の成長を支える優秀な人材の確保に期待が持てます。
まとめ
丸紅は、財務状況の健全性、ワーク・ライフ・バランスへの配慮、人材育成への投資、ダイバーシティ&インクルージョン、労働安全衛生への取り組みなど、多岐に渡る分野で優れた実績を残しており、ホワイト企業としての評価が高い企業と言えるでしょう。
しかし、女性管理職比率や障害者雇用率の向上、有給休暇取得率の向上など、更なる改善が期待される点もあります。これらの課題に継続的に取り組むことで、より一層、社員にとって働きがいのある企業となり、企業価値の向上にも繋がるでしょう。
丸紅のホワイト企業分析は以上になります。参考になりましたら、スキ・コメント・フォローをお願いします!
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