オリンパスはホワイト企業か?人的資本データから分析
はじめに
本レポートでは、株式会社オリンパス(以下、オリンパス)を「ホワイト企業」として多角的に評価します。
シュテファン・カウフマン代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)が違法薬物の購入に関する疑いを受けて辞任したことは衝撃的でした。
しかし、今回は、企業としての本質的な数字を今回は評価していきます。
評価にあたっては、厚生労働省の「ホワイト企業認定制度」の評価基準に加え、健全な経営と優れたビジネスモデル、ワーク・ライフ・バランスへの配慮、人材育成、ダイバーシティ&インクルージョン、労働安全衛生の管理徹底といった項目を考慮します。
データソースとして、オリンパスの直近の有価証券報告書(2024年3月期)、企業コーポレートサイト、厚生労働省「ホワイト企業認定制度」の公示情報などを活用します。
経営成績
オリンパスは、2024年3月期に売上高8,819億円、営業利益1,866億円を達成しました。(有価証券報告書p.33)。
医療事業を主軸とし、内視鏡と治療機器の2つのセグメントで世界的なシェアを誇ります。2024年3月期より科学事業を非継続事業に分類し、医療分野に経営資源を集中させています。(有価証券報告書p.33)。
従業員一人当たり売上高は、約3.2億円と非常に高い水準です。(従業員数2,727名で算出)。
これは、オリンパスのビジネスモデルが労働集約的ではなく、高付加価値製品・サービスの提供により収益を創出していることを示唆しています。
待遇面
オリンパスの平均年収は、約965万円です。(有価証券報告書p.11)。これは、日本の製造業平均を大きく上回る水準であり、高い待遇であると言えます。また、年収推移についても、安定的に増加傾向にあります。(有価証券報告書p.2)。
男女間の賃金格差は70.7%と開示されています。(有価証券報告書p.12)。日本の製造業全体で考えると、女性の管理職比率が低いことから、男女間賃金格差が生じやすい傾向にあります。オリンパスでも女性の管理職比率が低いことが影響しており、改善の余地があると考えられます。
オリンパスは、職務等級制度をベースとした人事評価制度を導入しており、公正な評価と処遇の実現を目指しています。(コーポレートサイト「人事制度」)
ワーク・ライフ・バランス
オリンパスの月間平均残業時間は、約10時間です。(有価証券報告書p.20)。これは、日本の製造業平均と比較しても低い水準であり、ワーク・ライフ・バランスへの配慮が行き届いていると言えます。
有給休暇取得率は約72.9%、育児休業取得率は女性100%、男性70.2%と高い水準です。(有価証券報告書p.2)。育児休暇の取得を推奨する風土があり、仕事と育児の両立を支援しています。
離職率は公表されていませんが、新卒入社者の定着率が高いことから、社員の定着率も高いと推察されます。(有価証券報告書p.2)。
人材育成
オリンパスは、人材育成に力を入れており、一人当たりの研修費用は約10万円、研修時間は約15時間です。(有価証券報告書p.2)。研修制度の内容は、階層別研修、職種別研修、自己啓発支援など多岐にわたります。(コーポレートサイト「人材育成」)。
また、グローバルに活躍できるリーダーシップ人材の育成にも注力しており、グローバル共通のリーダーシップ・コンピテンシー・モデルを導入しています。(有価証券報告書p.20)。
多様性(ダイバーシティ)
オリンパスの女性管理職比率は9.1%です。(有価証券報告書p.20)。目標値は30%であるため、引き続き課題となっています。女性活躍推進法に基づく認定は「えるぼし3段階目」を取得済です。(有価証券報告書p.2)。
新卒採用とキャリア採用はどちらも行っており、2024年3月期の新卒採用数は66名、キャリア採用数は176名です。(有価証券報告書p.22)。キャリア採用比率は約72.7%となります。(キャリア採用数176名、新卒採用数66名で算出)。
労働安全衛生
オリンパスは、労働安全衛生にも力を入れており、労働災害発生件数は0件です。(有価証券報告書p.2)。健康診断受診率は100%であり、従業員の健康管理を徹底しています。(コーポレートサイト「健康経営」)。また、ストレスチェックも実施しています。(有価証券報告書p.12)。
総合評価
オリンパスは、高水準の年収・待遇、充実したワーク・ライフ・バランス、人材育成への積極的な投資といった点で、ホワイト企業としての魅力を備えています。一方で、女性の管理職比率の低さや、外国人従業員比率、障害者雇用率の非開示といった点が課題として挙げられます。
今後の展望
オリンパスは、医療分野に特化したグローバル企業として、今後も成長を続けていくことが期待されます。その中で、多様性を重視した経営を推進し、情報開示をより充実させることで、さらなる企業価値向上を目指していくと考えられます。
オリンパスのホワイト企業分析は以上になります。
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