第一三共株式会社はホワイト企業か?人的資本データから分析
はじめに
本レポートは、第一三共株式会社(以下、第一三共)のホワイト企業度を評価することを目的としています。
転職検討者や人的資本データを重視する経営者・人事部門にとって有益な情報を提供するために、客観的な分析に基づき、問題点も指摘しながら総合的な評価を行います。
第一三共は、「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」というパーパスを掲げ、革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供する、グローバル製薬企業です。
データ分析方針
「ホワイト企業」とは、厚生労働省の「ホワイト企業認定制度」の評価基準に加え、本レポートでは下記のチェックポイントを設定しています。
健全な財務状況か?
優れたビジネスモデルか?
ワーク・ライフ・バランスはとれているか?
人材育成は充分か?
ダイバーシティ&インクルージョンは進んでいるか?
労働安全衛生面は配慮されているか?
新卒採用だけでなく、キャリア採用にも積極的か?
高い平均年収は充分か?
残業時間は長くないか?
それでは早速参りましょう。
経営成績
財務状況: 2023年3月期の連結売上収益は1兆2,785億円、連結当期純利益は1,092億円と、好調な業績を維持しています。自己資本比率は57.6%と高く、安定しており、財務基盤は非常に強固です。(有価証券報告書に記載)
従業員一人当たり売上高: 単体従業員数は5,756人、連結従業員数は18,726人です。(有価証券報告書に記載) 単体従業員一人当たり売上高は約2.2億円、連結従業員一人当たり売上高は約6,800万円と高い水準です。これは、高度な技術力と効率的なビジネスモデルを構築し、高付加価値を生み出していることを示唆しています。
評価: 第一三共は、グローバル規模で事業を展開し、高い収益性と安定した財務基盤を確立しています。特に、がん領域における新薬「エンハーツ」の売上が大きく伸長しており、今後の成長も期待されます。
待遇面
平均年収: 平均年収は1,119万円(平均年齢 45.3歳)と非常に高い水準です。(有価証券報告書に記載)
賃金格差: 男女間の賃金格差は77.5%と、日本企業の平均くらいです。第一三共は「同一職群・同一等級においては男女間の賃金差異はない」(有価証券報告書に記載) と説明していますが、等級構成の男女比に差があることでの賃金格差が大きいと考えられます。
人事評価制度の透明性: 第一三共は、等級制度と目標・コンピテンシーに基づく絶対評価制度を導入しており、社員一人ひとりの成果を公平に評価できる体制を整えています。また、評価制度の透明性と公正性を維持するために、評価者研修なども実施しています。(有価証券報告書に記載)
評価: 平均年収は非常に高く、待遇面は魅力的です。人事評価制度についても、透明性と公正さを重視した取り組みが行われており、社員のモチベーション向上に繋がっていると考えられます。
ワーク・ライフ・バランス
平均労働時間: データは開示されていません。
月間平均残業時間: 35.1時間です。若干長いですね(有価証券報告書に記載)
有給休暇取得率: 79%と高い水準です。(有価証券報告書に記載)
育児休業取得率: 女性100%、男性87.4%です。(有価証券報告書に記載) どちらも高い水準であり、仕事と育児の両立を支援する体制が整っていると言えます。
リモートワーク: リモートワーク制度についても、2010年に初めて制度を導入、その後10年かけて段階的に拡充し、現在ではフルリモートが可能な制度となっています。
これまでの取り組みが評価され、2021年度には厚生労働省が主催するテレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)において厚生労働大臣賞(特別奨励賞)を受賞しています。
評価: 育児休業取得率は非常に高く、ワーク・ライフ・バランスの推進に力を入れている姿勢が伺えます。月間平均残業時間については、厚生労働省が過労死ラインとして提示している月80時間を下回っているものの、更なる削減が望ましいと言えるでしょう。フルリモートOKな労働環境は非常に魅力的ですね。
人材育成
研修制度の内容と費用: グローバル全体で31.3億円の投資を行い、一人当たり約16.7万円の研修費用を投じています。(有価証券報告書に記載) 階層別研修、目的別研修、eラーニングなど、多様な研修プログラムを提供することで、社員のスキルアップを支援しています。また、次世代リーダー育成プログラムとして、「DS Academy」を設立し、将来のリーダー候補育成にも注力しています。(有価証券報告書に記載)
評価: 人材育成への投資額は大きく、充実した研修制度が用意されています。社員の成長を積極的に支援する企業文化が根付いていると考えられます。
多様性(ダイバーシティ)
女性管理職比率: 9.4%と低い水準です。(有価証券報告書に記載) 製薬業界では女性管理職の割合が低い傾向にありますが、他業界のJTCと比較すると、遜色はないです。
外国人従業員比率: データは開示されていませんが、「多様な人材の活躍推進と育成」を重要課題として掲げており、国籍や文化の異なる人材の採用にも積極的に取り組んでいると考えられます。(有価証券報告書に記載)
障害者雇用率: 2.57%と法定雇用率(2.3%)を上回っています。(有価証券報告書に記載)
評価: 人材の多様性確保に関しては、まだ課題が残ります。特に女性管理職比率の低さは深刻です。多様な人材が活躍できる環境づくりを強化することで、企業の競争力強化に繋がる可能性があります。
労働安全衛生
労働災害発生件数: 休業災害0件、死亡災害0件です。(有価証券報告書に記載)
健康診断受診率: 100%です。(有価証券報告書に記載)
評価: 労働災害発生件数は0件であり、労働安全衛生に対する意識の高さが伺えます。社員が安心して働ける環境づくりができていると考えられます。
採用
新卒入社数: 2023年度の国内新卒採用は男性109名、女性108名で、合計424名でした。グローバル全体では、男性1,280名、女性1,560名、合計2,840名でした。(有価証券報告書に記載)
キャリア(中途)入社数: 2023年度のキャリア採用人数は男性146名、女性61名でした。女性の数が少ないのは気になりますが、新卒にも負けないボリュームでキャリア採用をおこなっています。(コーポレートサイトに記載)
キャリア採用比率: 44%と充分な比率です。製薬業界に興味がある方には充分門戸が開かれています。今すぐビズリーチに登録を!
その他
従業員エンゲージメント: 第一三共は、従業員エンゲージメント向上にも注力しており、企業風土・職場環境に関するエンゲージメントサーベイの肯定的回答率は79%、育成・成長機会に関するエンゲージメントサーベイの肯定的回答率は76%と高い水準を維持しています。(ESGデータに記載)
社内表彰制度: 社員の貢献を称えるために、様々な社内表彰制度を設けており、社員のモチベーション向上に繋げています。(コーポレートサイトに記載)
評価: 従業員エンゲージメント向上への取り組みや社内表彰制度など、社員のモチベーション向上と定着率向上に繋がる施策を積極的に導入している点は、ホワイト企業としての魅力を高めていると言えるでしょう。
まとめ
第一三共は、高い平均年収、充実した人材育成制度、ワーク・ライフ・バランスへの配慮など、ホワイト企業として多くの魅力を備えています。特に、製薬業界では平均よりも高い水準の育児休業取得率を誇っており、仕事と育児の両立を支援する企業として、魅力的であると言えるでしょう。
また、私の付き合いのある製薬会社の友人に取材したところ、ホワイトな労働環境だとのことです。これは製薬業界全体に言えることですが、ヒット商品がある企業であれば、利益率が非常に高いので、信憑性は十分にあります。
第一三共株式会社のホワイト企業分析は以上になります。
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