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「僕と彼」という映画。

桜も散り始める頃。
日差しが少しあったかくなってきた。

「今日暑いな」と、腕まくりをしだす彼。
少しかいた汗に肌が光って、
少しふわっと彼の匂いがした。

汗の匂いと柔軟剤の匂いと春風の匂いが混ざって
僕の心はうずく。

手で風を煽っては、腕にコブが見えて、
筋トレ続けてんだ、なんて思いながら、
「早よいこ」って言ってわざとくっつく。

汗がべたっとくっつき、
「うわ」なんて声をもらすも、
「拭けばよかけん」なんて言って、
僕のハンカチで彼の汗を拭く。

どうもこうもないが、
当たり前な日々が、僕にとって
映画のワンシーンにさえ感じる。

結ばれる事はないが、
彼といると、いつも映画の中のようだ。
この気持ちだけは、僕だけのもの。
僕の中だけの、「彼と僕」の映画。

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