ゴリせんの真の恐ろしさ 〜本当に叩き壊されているのは読者!?〜
Twitterで話題沸騰中の漫画「ゴリせん」第2巻が本日発売されました! https://www.amazon.co.jp/gp/product/4065264723/ref=ppx_yo_dt_b_asin_image_o00_s00?ie=UTF8&psc=1
作者の酒井大輔先生のファンで、第1巻から読んでいる「ゴリせん」。実はこの作品、初めて読んだ瞬間からずっと感じていた、大いなる不思議が秘められているのでした・・・
「フラグを折る」という構造だけの物語なのに何故こんなに面白いのか
「ゴリせん」には確固たる物語のパターンが存在します。単行本帯にも書かれているように「死亡フラグを折り倒す」です。
ゴリせんの一番最初、第1時限目で提示された「ルール」は
1. 死亡フラグが立つ(怪異がゴリせんを襲う)
2. 死を予想する(ゴリせんが喰われる)
3. 予想を叩き壊す(喰われても死なない)
でした。2 → 3で「なんだこの男!?」と予想をバキバキに折られてしまいました。
しかし、この第1時限目を読んだ時点で僕が思ったのは「パターンが見えてしまったのに、この先漫画が展開するんだろうか!?」ということでした(恐れ多いですが・・・)。
しかし、この漫画の基本ルールをまんまと理解してしまったことが全ての始まり「フラグ」でした。このフラグも、フラグクラッシャーゴリせんが見逃すわけがなく、バッチリ破壊されてしまいます。
物語に銃が出てきても、発射されないかもしれない
以降、ゴリせんを読む時の脳内は
1. 死亡フラグが立つ(怪異がゴリせんを襲う、死の気配が近づく・・・)
2. こういう風にフラグが折られるだろうと予想する
3. 予想を叩き壊す
になります。
ゴリせんはこの3の叩き壊し方のバリエーションが尋常ではないと思うのです。
ゴリせんが死なないだけではなく、人外のキャラを改心させてアルバイトさせるとか・・・
何ページも先の大ゴマでフラグが折られるだろうと思っていたら、同じページの些細なセリフで実はあっさり折られていたとか・・・
最大の被害者は実は人ではなく家具だった(第19時限目より。爆笑しました)とか・・・
今までに触れたサスペンス、ホラー映画、ミステリ、推理もの、そこで覚えてしまった展開、空気感、物語のリズム感、物語に固有の「あるある」・・・それがこの男(ゴリラ)(表現はお借りしました)によってことごとく壊されてしまいます。
「物語に銃が出てきたら、それは発射されなければならない」という物語制作上の表現「チェーホフの銃」というのがありますが、ゴリせんにはこの理屈は通用しません。それどころか銃の方がゴリせんにバキバキにへし折られて、被害者にすらなってしまいそうです(チェーホフ涙目)
ゴリせんが本当に叱ってるのは読者かもしれない
さらに漫画「ゴリせん」のすごいところは、オチでゴリせんに毎回毎回怒られるキャラたちを通して、読んでいるこっちまで叱られている気分に陥るところです。「そんな安っぽい理屈、俺には通用せんぞ!」「もっと考えてから出直せ!」という声が聞こえてきそうです。
だからなのか、人外のキャラであっても謎に感情移入してしまい、ゴリせんに指導されて掃除を始めるキャラたちなんかを見てると無性にカワイかったりします。こんな漫画今まであったでしょうか?
世の中に存在するあらゆる「物語のパターン」「定番」「お約束」・・・それがゴリせんによって全て叩き壊される日は来るのでしょうか。
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