エンターテイメントと文化盗用
2020年4月、韓国の女性アイドルグループOH MY GIRLは7thミニアルバム「nonstop」をリリース。
この活動を通して彼女たちは、国内外での音楽ランキングで自己最高記録を更新しました。
そして5か月後の9月、OH MY GIRLのユアが初のミニアルバムソロデビュー。OH MY GIRL、及びユアを応援している世界中のファンたちからは歓喜と応援の声が上がったのですが…。
事の発端はミニアルバムへの先駆けとして8月29日にOH MY GIRL公式Instagramに投稿された写真でした。この写真の投稿により、ユアのメイクと首飾り・服装は「文化盗用ではないか?」と批判を浴びたのです。
https://www.instagram.com/p/CEuA2D_HiYK/?igshid=YmMyMTA2M2Y= より
賛否両論が起こる中、OH MY GIRLのファンである私は考えました。文化盗用とはいったい何なのか?
そして私はこの件から文化盗用について勉強し、文化盗用の当事者(文化盗用をされる側)であるアフリカ系アメリカ人のパートナーにも話を聞き、文化盗用は特定の民族・文化の汚名に繋がる放っておいてはいけない問題だと感じました。
そこでこの記事では、「文化盗用とはいったいどのようなものなのか」「エンターテイメントと文化盗用の関係性」を主に取り挙げて何故私がそこまで文化盗用を問題視したのか説明したいと思います。尚、文化盗用は世界中で行われていることなので、OH MY GIRLのファンはもちろんエンターテイメントの世界で活躍しているアイドルやアーティストたちを応援している人にもこの記事を読んでいただければ幸いです。
文化盗用とは
文化盗用とは、ある文化圏の人々の文化や宗教・伝統的衣装などのシンボルとなるような要素をほかの文化圏の人々が流用することを指します。
尚、流用される文化圏の中にはネイティブアメリカンやインド系、アジア系、アフリカ系などの人種や少数民族が多いです。
では、エンターテイメントで行われる文化盗用とはどのようなものでしょうか?
今回は私が始めて文化盗用のことを知るきっかけとなったOH MY GIRLのQueendomでのパフォーマンス「Guerilla」を題材にご紹介したいと思います。
このパフォーマンスを見た当初、私は文化盗用のことなど何も知らずただただ無知で、「あぁ、おまごるちゃんかっこいいなぁ」くらいにしか思っていなかったのですが、アフリカ系アメリカ人であるパートナーからの指摘により文化盗用の存在に気付くことになりました。
皆さんは、このパフォーマンスのどこが文化盗用なのかわかりますか?
実は、彼女が文化盗用として指摘したのは「衣装の髪飾り・額のアクセサリー」です。
まず、髪飾りについて。調べてみるとこの髪飾り、元々はインドの女性が結婚式の時にだけ特別に付ける「ティッカ」というものでした。
そして額のアクセサリーは、「ビンディー」というものでした。調べてみるとこのアクセサリーは結婚しているインド人女性のみがしているものであり、未婚のインド人女性・夫が亡くなってしまったインド人女性は基本的には付けないそうです。
さて、OH MY GIRLが身に着けていたものがインドの伝統的なアクセサリーだと分かったところで本題に戻ります。OH MY GIRLはよくパフォーマンスをする時にコンセプトを決めますが、今回のGuerillaのパフォーマンスでは特定のコンセプトが決められた様子はありませんでした。
ではなぜ、インドの伝統的アクセサリーであるビンディーやティッカを衣装に取り入れたのでしょうか?無論、OH MY GIRLはメンバーの誰かが結婚しているわけでもないのにそのアクセサリーに意味はあったのでしょうか?
ちなみにQueendomの番組内でも、OH MY GIRLはGuerillaでなぜこのアクセサリーを使用したのか説明をしていません。
『インドの女性が特別な理由で付けるアクセサリーを意味も知らずファッションとして使ってしまった』
やはりこの答えが、ただ画面上で、Queendom上で彼女たちを見ていた人たちにはしっくりくる答えだと思います。
ちなみに、当初私はこの『文化の意味を知らずに使ってしまった』という点が文化盗用に当たることを知り、パフォーマンスはとても好きだっただけになんだか複雑な気分になったのを今でも覚えています。(実はこのGuerillaの文化盗用に関しても、Guerillaが放送された当時、海外では問題として取り上げられていました↓)
文化盗用で起こる問題
では、何故エンターテイメントで文化盗用をすることは問題になってしまうのでしょうか?エンターテイメントで有名な人がその文化をファッションとして使用することによって、使用された国の人々は文化の宣伝になって良いんじゃないの?と思う人もいるかもしれません。
文化盗用によって起こる問題はいくつかあるのですが、この記事ではその中から一つだけピックアップして紹介したいと思います。
文化盗用をするとどのような問題が起こるのか。
その答えは、単刀直入に言うと「元来の文化が伝わらなくなってしまうこと」です。
例えば先ほどのOH MY GIRL 「Guerilla」の例を見てみましょう。
Guerillaではインド人女性が特別なシチュエーションで使用するアクセサリーがファッションとして取り入れられていましたね。
では、ここで質問です。
≪Guerillaの髪飾り・額のアクセサリーが、実はインド人女性が特別なシチュエーションの時にだけするアクセサリーであることを、あなたは知っていましたか?≫
私の場合、答えはNOです。
私は自分で調べるまでそれらのアクセサリーがインド人女性にとって特別な理由で使用されているものだとは知りませんでした。
ただ単純に、(これは曲の雰囲気に合わせたファッションなんだな。インドのアクセサリーっぽいけど、似合ってるな)と思っただけです。
しかしそれではインドの正しい文化が伝わりません。だからこそ、アーティストとして文化を正しく知り、その文化を使って活動を行うのであれば正しい文化を視聴者やファンに伝える必要性があるのだと思います。
例えば、それらのアクセサリーは元々はどのように誕生したものなのか?誰がどのような理由で使用していたものなのか?
それらのアクセサリーを使用するにあたり、間違った使い方はしていないか?きちんとそれらのアクセサリーを使っている当事者、この場合はインド人女性やインドの人々に、使用して良いか許可は得たのか?など。
そこまでする必要はないと思う人もいるかもしれません。でも、エンターテイメント、特に芸能界で活動しているアーティストやモデル・役者は多くの人に見られる仕事をしています。つまり他の国の文化を間違った形で利用する・流用することは、多くの人に間違った情報を流していることになるのです。
ちなみに、文化盗用の件に関しては文化盗用が起こった時から当事者もずっと批判を行っています。
しかし、当事者が声を上げてもエンターテイメント業界では文化盗用が頻繁に起こり改善される見通しはありません。そこで、当事者の力になりたい人々も声を上げているというのが今の現状です。
最後に
今回はたまたま私がOH MY GIRLのファンであり、「ユアのミニアルバムのビジュアルが文化盗用ではないか」という問題を目にしたことから文化盗用について知ることができました。
(尚、ユアのミニアルバムのビジュアルに関してはアルバムのコンセプトがどのようなものなのか、そのビジュアルはどこの民族の文化を取り入れたものなのかなど、色々と文化盗用の有無に関する情報が足りなかったので取り挙げませんでした)
しかし、多くの人(特に文化盗用にあまり馴染みのない日本人)は文化盗用についての知識をあまり持っていないと思います。
また、文化盗用もどこまでが良くてどこまでが悪いのか突き詰めるとその定義は難しいとされています。
ただ一つ、私が文化盗用を学んでみて知ったこと。それは、「エンターテイメント業界で活躍するアーティストやアイドルが世界を視野に活動を進めていくのであれば、文化盗用についてきちんと理解しなければならない」ということです。
世界を広く見るほど、文化は多様に広がっていきます。その文化をすべて理解するのは難しい事です。しかし、自分が取り入れたいコンセプトがどこかの民族の文化であるのなら、まずその文化を取り入れる前に自分でその文化について調べることができます。
今回はたまたまOH MY GIRLを例に出して記事を書きましたが、世界では多くのアーティスト・アイドルが文化盗用を行っています。
私は変わらずOH MY GIRLが大好きであり、彼女たちのファンですが、今回のユアの件で個人的に思ったことがありました。それは、「誰かを傷つけかねない活動をしてほしくない」ということです。だからこそしっかりと問題提起を行い、他のファンにも知ってほしいと思ってこの記事を書きました。
ーー最後に。
この記事をきっかけに、文化盗用に関する皆さんの知識が増え、文化盗用はやり方次第では誰かを傷つける可能性があることを知ってもらえると嬉しいです。
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