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日本と中国の温浴施設の違い。

中国と日本の温浴施設の違いを大きめの視点で書いていきます。
私は自己紹介文にも書いたように日本と中国で温浴関連の仕事に12年ほど従事しています。

日本と中国ではそもそも国土が違い、特に中国はあまりに広大な国土を有するので、どのような事柄においても「中国」を一括りにするのは簡単ではありません。
私が経験した中で、特に上海市近郊を中心とした中国温浴施設についての雑感を語っていきたいと思います。

日本と中国の温浴業界全体の最大の違いは、人口当たりの温浴施設数ではないでしょうか。
対人口比の温浴施設数は、日本の方が圧倒的に多いのは間違いありません。
日本人にとって入浴する、という行為が、生活の一部であるからです。

一方で中国ではバスタブがあるような家庭はほんの一部で、週末の夕方に父親がふらっと
「よし、今日は家族で風呂でも入りに行くか!」
なあんて、子供に語り掛けるようなコミュニケーションはまず成立しません。

あえていうならば、
「明日は一日やることないな、そうだディズニーランドに行くか?それともカラオケ行くか?それともお風呂でも入りに行くか?」
そういうレベルではないかと思います。

上海極楽湯の館内の様子
入場料に岩盤浴などの施設利用料は含まれているが飲食やマッサージは別途。

中国人にとっての概念的には、お風呂に入りに行く=レジャー感覚が圧倒的に強く、実際に中国の温浴施設の施設規模は一般的に日本のスーパー銭湯よりもかなり大きく、大きさで言えば昔の健康ランド、近年で言えば滞在型の大型スーパー銭湯並みの敷地面積があります(10,000m2=300坪クラス)。

フラッとお風呂に入りに立ち寄った、ということはほとんどなく、半日、もしくは一日中館内でゆっくり過ごすようなイメージが強いのです。

このようなイメージは、中国人にとって元々存在していた価値観ではなく、上海市近郊では10年前ほどに起こった日本式温浴ブームを呼び水として、大きな敷地面積を誇る滞在型が人気を得た、ことによります。
要するに、現代の中国人に合致した温浴施設のモデルケースがこのような滞在型であったということになる訳です。

もちろん、こうしたスタイルだけが中国人にとっての、ごくごく一般的な温浴施設の概念という訳でもありません。

少し話が逸れてしまいますが、2010年代以前の中国でのお風呂屋さんは、シャワー等がない家庭のための公衆浴場的な意味合いもあったり、いわゆる性接待を伴う違法行為の隠れ蓑だったりもしました。
それから忘れてはいけないのが、仲間を集めて麻雀やトランプをしたりと、憩いの場の一つでもあったのが、中国での温浴施設でした。
このような傾向は今でも一部では残っており、こじんまりとした施設でこうしたそれぞれの目的のために運営をしている施設も少なくはありません。

こうした昔ながらの温浴施設は「澡堂」と呼ばれ、目的に合わせた簡易的な作りになっていることが多く、今回はこれらの例は除外してより健全な温浴施設を例とします。

中国のいわゆる澡堂と呼ばれる公衆浴場
シャワーブースだけで汚れを洗い流すだけで、浴槽がなかったりもします。

さて、話を戻して、近年のお風呂事情にフォーカスします。
やはり先述の通り、中国ではお風呂=レジャーという感覚が強く、少し贅沢して長時間滞在するという感覚が、特に富裕層や都市部在住者にはあります。

日本のスーパー銭湯ではお風呂の入る時間が在館時間の大半を占めることがほとんどですが、中国の場合はお風呂に入る時間は約2割程度とも言われます。

それから最後にもう一つ大きな違いとして挙げると、それは中国の温浴施設が高単価であることです。

例えば上海極楽湯、150元前後の価格設定となっていて、日本円に直すと3,000円程度の入場料になります。
客単価は250~300元(約5,000円~6,000円)程度となります。
上海市の平均月収が10,000元程度(約20万円)と言われており、価値観で言っても、テーマパークや遊園地といったレジャー施設に分類されておかしくありません。

一方、日本の一般的なスーパー銭湯の客単価は1,000円強で、少し大きめの施設であっても3,000円の客単価を超えるのは難しいと言われています。

施設側としては家賃やその他のコスト、来館者にしてみれば施設の充実度など、日中でいくつもの相違があるため単純に比較はできませんが、概念的にもいくつも違いがあることは明白です。

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