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【エッセイ】日記本のススメ

他人の日記を読みたくなった。

元々、浅草キッドの水道橋博士が、休養前までnoteに毎日日記を投稿して、それを読んでいた。何を買ったか、誰と会ったか、どんな仕事をしたか、どこで何を食べたかなどの一日の記録を、写真付きで綴った日記を楽しみにしていた。

博士が議員になってからは、仕事の内容も機密事項が多いので、noteの日記に書くことが少なくなって、載せている写真も減っていった。うつ病を患い、議員を辞職し、最近になって徐々に復帰の兆しを見せているが、noteを更新していないので、以前のように博士の新しい日記を読むことは出来ない。

博士の日記を読むのが毎日の楽しみだった私は、少し寂しい日々を過ごしている。とりあえず、集英社新書プラスで連載されていた、博士が日記について書いたエッセイ「水道橋博士の『日記のススメ』」を初回から読んだ。

その後は、博士のnoteをさかのぼり、日々の記録を最初から読み始めた。多岐にわたって話題を提供する「はかせ日記」は、読み物としての濃度が高く、満足感を得られる。

ふと、書籍で他人の日記を読みたくなり、自室の本棚を見た。「エッセイ」ではなく「日記」と呼べる本が三冊あったので、紹介する。

No.1「スットコランド日記」(宮田珠己著/幻冬舎文庫/2013)

旅行記を中心に、大仏や石拾いなど、自らの興味の赴くままに題材を選び、脱力感いっぱいの文章を書く作家である宮田珠己さんの、2008年4月から2009年3月までの1年間をまとめた日記本。自宅からの眺めがスコットランドの風景に見えなくもないから、スットコランドと呼ぶことにしたのがタイトルの由来である。

これまでも、宮田さんが日常を綴ったエッセイ本は多数刊行されているが、「何月何日に何が起きたか」がわかる本はこれだけのはず。妻と子供二人と暮らしていて、毎日何かしらの出来事は起きているが、他人にとってはどうでもいいことばかり書かれていて、それが魅力的だったりもする。日によって文字数が大きく変わり、「娘、幼稚園をサボる」の1行だけの日もあった。

No.2「オーストリア滞在記」(中谷美紀著/幻冬舎文庫/2021)

俳優・中谷美紀さんの日記本。ドイツ人ヴィオラ奏者との結婚により、1年の半分をオーストリアで生活している中谷さん。2020年の5月1日から7月24日までの日々が綴られている。言うまでもなく、こちらは本物の外国での生活である。

中谷さんは、現地の人とふれあって、現地の食材で料理をして、日々を過ごす。伝えたいのは、日本とオーストリアのどちらが優れているかではなく、あくまでオーストリアでの平凡な日々。

外国人の夫とは価値観も生活習慣も異なるが、それに対して嘆きも怒りも悲しみもせず、ただ無理をせず違いを受け入れることを選んだ。彼女は「違うこと」を恐れない。

No.3「ブックセラーズ・ダイアリー スコットランド最大の古書店の一年」(ショーン・バイセル著/矢倉尚子訳/白水社/2021)

今度は本物のスコットランドでの日記。著者のショーン・バイセルは、帰省中に老舗古書店の「ザ・ブックショップ」を店ごと購入し、そこから書店員としての日々を過ごすことになるというちょっとぶっ飛んだ経緯から日記は始まる。

書かれているのは店を買い取ってから1年間の記録で、どんなお客さんが来たか、どんな本を仕入れたかといったように、基本的には書店員の仕事を淡々としたトーンで綴っている。本好きをアピールしながら、一冊も買わずに店を出る客への皮肉が隠しきれていなくて面白い。

作中に実在する本が出てくる小説やエッセイは多数読んだことある。この「ブックセラーズ・ダイアリー」も、文中に本のタイトルが山ほど出てくる。ただ、どの本も著者にとっては商品でしかなく、そこの絶妙な距離感を味わうのも楽しい。

以上で、自室の本棚にあった日記本の紹介を終わります。noteで毎日日記を書いている人がいましたら、コメント等で教えて下さい。

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Jナカノ@大喜利ライター
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