編集者とは何ぞや
編集者のみなさんは、どのような答えを出されますか?
編集者の仕事は多岐に渡ります。
企画立案から、著者へのアポ、打ち合わせ、ライターさんなどのキャスティング、撮影にイラスト手配……はたまた外注費精算に至るまで、雑務から大枠の設定まで本の制作に関するすべてと言っても過言ではないかもしれません。
その中から、あなたならどう答えますか?
私は、交通手段だと思っています。
孤島にいる著者まで、本島にいる読者をどのように繋ぐのか。ある著者なら奄美大島のように直行便、しかもLCCも走らせて、アクセス抜群! 東京からひとっ飛びという見せ方にしますし、ある著者ならむしろ小笠原諸島のように、竹芝から片道24時間船に乗らないとたどり着けない、でもだからこその自然が待ちわびている。
そんな交通手段の方法を考える人が編集者なのではないかと、思っています。
だから、ちょっとわかりづらければ、どんどん赤字で戻すし、逆に内容が薄ければどんどん突っ込んで取材をします。
本島にいる読者がわざわざ来たい!と思うにはどうすればいいのか、孤島が一番輝くのはどんな見せ方なのか。それをあらゆる手段を使って実現させる、それが編集者なのではないかと、たかだか10年ちょっとの編集歴ですが、最近強く思っています。
そのきっかけとなったのが、神吉晴夫(かんきはるお)さんの『カッパ兵法』。
神吉晴夫さんといえば、光文社二代目社長であり、光文社を一躍ベストセラー出版社に仕立てた張本人。
「戦後最大の出版プロデューサー」と言われている方です。
少し上の世代には、「カッパ・ブックス」を作った人といえばわかるかもしれません。少し下の世代には、今の著者と編集者が二人三脚で本を作る「創作出版」の礎を作った方といえばわかりやすいかもしれません。
私たちは現在、著者の原稿をそのまま印刷所に流すなんて、仕事の仕方はしません。最初の本の方向性から一緒に悩み、また持ち込み原稿であろうと「ここがわかりづらいです」「ここを軸にしませんか」と何度もやり取りをするのが一般的でしょう。
この方法を確立されたのが、神吉晴夫さんなのです。
そんな神吉晴夫さんはいくつか著書を残されています。
中でもご本人が執筆し、編集論を惜しげもなく書いているのが『カッパ兵法』なのですが、残念ながらすでに廃刊され、出版社もなくなっていました。
古本でたまに1万円を超える値付けを見ますが、なかなか手が出せない。こんなに面白く、熱くさせてくれる本なので、後世に残らないのはもったいない!
そこで、今回『編集者、それはペンを持たない作家である』と題して、復刊することとなりました。
長いタイトルですが、これは神吉さんが本文内でおっしゃっていた言葉をそのまま引用しました。
これが、神吉さんにとっての「編集者とは何ぞや」の答えだと思ったからです。
そして、サブタイトルは『私は人間記録として、自分の感動を多くの読者に伝えたかった。』。
本書を通して、自分が心震えるものをきちんと読者に届けられているかを、私自身もう一度考えたかったのです。
現在、日に約200冊の新刊が発売されています。
出版点数が増える中、会社員としてノルマもあると思いますが、本書をきっかけに「編集者とは何ぞや」を一度考えてみてはいかがでしょうか。
『編集者、それはペンを持たない作家である』1500円+税 好評発売中!
www.amazon.co.jp/dp/4408650153
『嫌われる勇気』でおなじみのベストセラー編集者・柿内芳文さんによるオンラインイベントの音声はこちらの固定ツイートから
https://twitter.com/kankiharuokappa
(文・金潤雅)