『鉄道の旅手帖 四訂版』までの14年
『鉄道の旅手帖 四訂版』が発売になりました。本書は2007年4月に出た『鉄道の旅手帖』(左)を元に、改訂を重ねているもので、さらに間には東西に分けた「カラー版」もありまして、具体的に書くと、こうなります。
2007/4 鉄道の旅手帖
2010/5 カラー版 鉄道の旅手帖 東日本編/西日本編
2015/2 改訂新版 鉄道の旅手帖
2019/2 鉄道の旅手帖 三訂版
2021/3 鉄道の旅手帖 四訂版
合間にそれぞれ重版しているので、重版のたびに最新情報に更新していましたが、重版は「配本」できないため、頭打ちになります。本当は2020年春に『三訂版』を重版しようとしたのですが、DTP上の問題(※)があり、それに相当時間がかかるということで、物流上の問題もあってとりやめました。そこで、すべてを刷新して、2年という短いスパンですが、新刊として出しました。
(※)QuarkXPressという、MacOS9でしか動かないソフトで作られていました。十数年前に生産を終えたMacでの作業は現代においては適切ではなく、すべてInDesignに切り換えるために、DTPデータをイチから作り直す必要がありました。
本書の使い方は、このとおり。乗った路線を塗りつぶし、記録を集計するのみ。これが、実は楽しい。やってみないとわからない楽しさです。(地図と駅リストは2007年版、集計欄は『四訂版』)
今回も、フォトライター・栗原景さんに悉皆調査をしていただき、扱いに悩んでいたBRT等に判断を下しました。上の写真のように、災害で不通になっているところはわかるようにしています。
本書の最大の特長は、「1980年以降の廃止路線・廃止駅」が載っていることです。これは、国鉄末期の廃止第一号・白糠線以降から入れたかったのを、キリがよい1980年まで遡ったものです。そうすれば夕張線登川支川も入ります(国鉄目線ですみません)。また、地図の図取り(区切り)も、「ファンならこう乗ることも多いだろう」というまとめにしています。中国・四国地方はうまくいっていないのですが…。
『鉄道の旅手帖』は、最初から最高のものを作ろうと思いました。地図と駅リストだけ、という単純な作りですので、アイデアは簡単に真似できます。本書が売れれば他社からもすぐ類似商品が出るだろうと思いました。しかし実際は、14年経ついまに至っても、「劣化コピー」は多々あるけれど、本書に比肩する本は出ていません。「劣化コピー」というのは、一見似ている他社の本は、どれも「現在の路線図」で作っているからです。それだと「使えない」んです。最近でいえば、三江線に乗ったことがある人も、JR北海道の廃止駅で乗り降りした人も、それを記録できない。そんな「使えない」ものはいりません。
なお、開業が正式に決定している路線や駅も、未開業だとわかるように掲載しています。これも本書の特長で、「買った後で開業した路線はどうしよう」とならないように配慮しています。
「最高のもの」といっても、当時はシームレスで空中写真が見られるわけではなく、廃止駅や信号場の位置を特定するのには手元にあった1980年頃の全国の20万分の1地勢図を参照し、仮乗降場や信号場など載っていないものは国土地理院の空中写真を1点1点確認していきました。当時、空中写真が公開されはじめたのは福音でした。
余談ですが、その20万図は、会社移転時にブルーガイド編集部が保管していたものを処分するというので、私がひきとっておいたものです。実際、実務では使う必要がないので処分は仕方がありません。60年代、70年代の2万5000図や5万図もたくさんあって、それもすべて引き取っておけばよかったと後悔しています。
これは2007年版。ビニールカバーにペンタブがついていますが、けっこう原価高いのでやめました。また、駅リストには「南びわ湖(仮称)」駅があります。先に「開業が正式に決定している路線や駅も掲載」と書きましたが、一回は正式決定した駅ですからね。稀にこういうことも生じます。
個人的にはexcelでも管理しています。これは国鉄・国鉄由来三セク・JRの集計で、もっとも、2013年以降ほとんど伸びていなくて、3週間前に四国に行く用事があったので、そこで280kmほど増えました。
こんな歴史を持った『鉄道の旅手帖』シリーズ。一生分の旅の記録を残せます。累計で8万部を超えているというのは、それを評価していただいたことだと思っています。ぜひあなたのお手元に1冊を。ビニールカバーつきなので、旅に持って行くのも便利ですよ。私も持っていきます。
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