JMVAイベントレポート🖊️「ヘルスケア・医療領域における官民データ活用に関する勉強会」
12月5日(木)に、医療・ヘルスケア業界団体、一般社団法人日本医療ベンチャー協会(JMVA)は、「ヘルスケア・医療領域における官民データ活用に関する勉強会」を開催しました。日本デジタルヘルス・アライアンス様、PHRサービス事業協会様の共催で開催いたしました。
本イベントでは、ヘルスケア・医療業界におけるPHR(個人健康記録)や医療情報データの活用に関して産学官それぞれの立場からさまざまなユースケースが共有され、ユーザー体験の向上やアカデミアでの分析といった新たな可能性が示されました。また、今後の医療DX推進に伴い、マイナポータル上で活用可能なデータの拡大が予定されており、官民のデータ活用がさらに進むことが期待されています。参加者は、今後の医療データ活用の方向性について新たな知見を得ることができました。
橋本 泰輔 氏(経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課長):経済産業省のPHRに関する取組
橋本様からは、我が国が直面する課題をもとにヘルスケア政策の目指す姿と施策についてお話くださいました。
PHRの全体像
経済産業省としては、①マイナポータルから取得できるデータを民間PHR事業者が活用できるための環境整備、民間団体と連携して②ライフログデータの標準化、③様々な分野と連携したユースケース創出を促進を進めていくというお話でした。
また、経産省の支援などを受け、令和5年7月、PHRサービス事業協会が設立。業界ガイドライン策定等の事業環境整備を推進していることをご紹介くださいました。
役割としては、①データ標準化に向けた検討、②サービス品質確保に向けた検討、③ステークホルダー間の対話促進、政策提言等の窓口機能、などになります。
PHRを活用した新たなサービスの創出
ユースケースとして、医療機関での利活用、日常生活での利活用についてお話しされ、セブン−イレブン・ジャパンの取り組みやNTTドコモの取り組みの紹介もして頂きました。詳しくは全編動画(会員登録)をご覧ください。
PHRを活用した万博での実証実験を予定
食事、運動、睡眠、ライフスタイルなどに注目したユースケースの創出や、情報連携基盤「PHR CYCLE」:データを提供する「PHR事業者」とサービスを創出する「サービス事業者」のPHR連携を行う情報連携基盤「PHR CYCLE」を構築する予定とのことです。
最後に、PHR基本的指針の見直しに関して、課題やスケジュールについてお示しいただき、講演終了となりました。
落合 孝文 氏(渥美坂井法律事務所 弁護士/JMVA理事):次世代医療基盤法をはじめとするデータ活用の制度について
落合様より、医療分野を題材にした情報利活用に関する政策・規制・事業の進展と今後の課題についてお話いただきました。
次世代医療基盤法の改正について、加工情報を利用できるようにする、一定のデータベース間の連結を図っていく、個人情報として収集した医療情報を匿名加工情報や匿名加工情報にしやすくするための仕組みが整理されてきている状況とお話いただきました。その他、規制改革推進会議での医療データ利活用の法制整備に向けた議論や日本総研ヘルスケアラウンドテーブル、医療情報に関連する政策の動向、デジタル行財政改革会議や規制改革推進会議における今後の議論の予定についてお話いただきました。詳しくは全編動画にてご覧ください。
上田 尚弘 氏(デジタル庁 マイナポータル担当参事官):マイナポータルに関する制度・取組について
上田様からは厚労省が作っている全体像をもとにデジタル庁だけでなく厚労省で行われている内容も包括的にお話くださいました。
オンライン資格確認システムを基盤として様々なデータベースを構築していきます。医療機関からデータを載せていきます。例えば電子カルテ共有サービスや電子処方箋サービスなどでデータを医療機関で共有していきます。また介護事業者間、自治体と医療機関でも自治体が行っている受給者証や予防接種、母子保健などの事業があるため繋いでいきます。さらに共有されたこのデータを救急隊が見れるようにする、マイナポータルで見れるようにするなど、マイナポータルのAPIを使って民間のヘルスケアサービスに繋いでいきます。
集まったデータをビッグデータとして2次利用していくという流れになります。
マイナ保険証の仕組み
マイナンバーカードがいわゆる鍵またはキャッシュカードのような役割となります。
1.確実な本人確認
2.電子証明書等の送付
3.医療情報の提供
現在マイナ保険証の利用率は15%台で引き上げていく必要があるとのことです。
電子処方箋はリアルタイムでなるべく当日中に反映されるように進めていて、すでに5割程度の薬局が電子処方箋を行っています。医療機関が紙の処方箋で電子処方箋ではなくても、電子処方箋に対応している薬局では、データベースに登録していくようにお願いしています。結果的に薬局から広がっていくことを期待しています。
来年の1月からモデル事業を開始し、4月から本格開始していく予定です。厚労省が作ろうとしているプラットフォームがあります。
患者のサマリーや傷病名、アレルギー、生活習慣病の検査値を登録してもらって、別の医療機関やマイナポータルで見れるようにします。
実際は医療機関側から入力してもらう必要がありますが、検査値を医療機関側が入力するのは現実的ではないため、検査会社から標準型電子カルテにAPI連携してもらうよう検討しています。
最後に以下のお話で締めくくりました。マイナポータルの持続的API連携によって、これまでその都度かざす必要があったものが一度かざすことである程度の期間連携することができるようになる提言が厚労省から出されています。それによって民間会社の健康・医療アプリとマイナポータルの連携において受診勧奨や服薬などのプッシュ通知を出すなどができるようになります。また、来年マイナカードがスマホに入っていきます。
中野 暢也 氏(株式会社Welby 上級執行役員 営業・商品戦略統括):PHRを活用した取組について
中野様からは、以下の3つのお話をしていただきました。
1.Welby会社概要
Welby社は約42疾患領域でPHRを提供し、診療ガイドラインへの掲載やPHRを利用した頻度が高い方が臨床アウトカムが良いという結果が糖尿病学会誌に掲載されています。
また、がん患者さんにおいてアプリによるモニタリングで予後が改善したという論文も過去に出ていることから、がん患者さんと医療機関をつなぐ疾患管理PHRによってアプリを通じて症状を豊富に見れるような機能を提供しています。
その他、社会課題解決をパートナー企業と連携して推進している例として、中部電力や日本生命、ドコモとの提携をご紹介いただきました。
また、PHRサービス事業協会が正式設立・参画し、その執行役を務めていること、経産省による「令和6年度PHR医療機関実証」に採択され、生活習慣病に係る疾患管理に関して医療DXとしてソリューションを提供することをご紹介いただきました。
2.データポータビリティ社会におけるPHRの可能性
Society5.0社会の実現にむけて、データがヘルスケアの主役になる時代がくるだろうと予想されています。
医療DX令和ビジョン2030において、全国医療情報プラットフォームによって全国の医療情報を国が一元管理可能となり、マイナポータルを通じて国民に還元することが示されています。
また、最後に2030年までの方向性と医療変革の主要ポイント、ステークホルダーの変化、医療・ヘルスケア企業はどうするのかについて以下のようにまとめています。
3.Welbyが次世代PHRプラットフォームで実現した世界観
データをまずは一時利用でPHRに落とし込んで、さらにきちんと規則を作った上で二次利用として、同意をとった上で利活用をしていくということを実現していきたいとお話されました。最後に今後達成したい世界観を共有いただきました。
イベント終了後も参加者、登壇者との交流で活発な意見交換が行われていました。様々な方と交流できるもまたJMVAの魅力の一つです。
JMVAでは定期的に勉強会と交流会を実施しています。入会されますと過去のものも勉強会の動画や資料をご覧いただけます。
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