#9. Hike Day 1

🎈Agnew Meadowsまで

Mammoth Lake RV Parkの夜は静かでとても快適だった。まだ暗いうちに起きてテントをたたみ、パッキングをして歩き出した。まずはバス停があるVillage canyonを目指す。ただ街を歩いているだけだったが、世界がキラキラして見えたし、遠くに見える山も陽の光もとても美しかった。

朝日を背に歩き出した。

途中ハイカーらしき人たちとすれ違い挨拶を交わしてたら、1人で歩いていた女性に日本人ですか？と声をかけられた。どうやらザックにぶら下げていた手拭いで日本人だとわかったらしい。その方も日本人。Tuolumne Meadowsから入ってMammothまで降りてきたそうで、とにかく蚊がすごかったと言っていた。ぼくらにはディート98%があるからきっと大丈夫だ。

Village canyonからバスに乗り、運転手にAgnew Meadows まで行きたいこと、Main Lodgeで一度降りてチケットを発券しないといけないと伝えると、なんだかわからないが紙のチケットをくれた。どうやらそのままAgnew Meadowsまで乗っていて良いらしい。

もらったチケット。

Agnew Meadows でバスを降りてトレイルヘッドまで歩く。途中でロバが繋がれている小屋がみえた。そしてHigh Trailへ入るトレイルヘッドには立派なトイレが。そこで身支度やハイカータイムを済ませ、いよいよ歩き出しだ。木にめり込んだPCTの看板に心が躍った。

巨大な木にめり込んでいる。

トレイルヘッドの道標。

🎈Thousand Island Lakeまで

地図にあった通りいきなり登りが始まり、どんどん標高を上げていく。道は歩きやすいが、馬のフンらしきものがかなり多く落ちていた。
歩いていてわかったのだが、どうやらJMTやPCTの一部は馬やロバを使って旅をするアクティビティがあるらしく、道にずうっとフンが落ちているのだ。ぼくらはこれをロバボムと呼ぶことにした。

ロバボムを踏まないようにしばらく歩いていると、ものすごい絶景が見えてきた。雪を冠した岩山の真ん中に湖があり、それが滝になって流れているのがわかる。そうだ、こんな絶景を見るためにHigh Trailを歩くことを選択したのだ……やっぱりこっちでよかった。

遠くに見える景色。

足元にはワイルドフラワーたち。

お腹も減ってきたので、さっきAgnew Meadows で拾ったチョコバーを齧った。朝食第二弾だ。あっこさんが心配げに、どういうコースタイムで何時にThousand Island Lakeなの？と聞いてきた。(こういうあっこさんの慎重さには何度も助けられた。)

ぼくはこの旅で、日本の山みたいに何時までどこに着かないといけないみたいな歩き方はせずに、ゆっくり歩くことを楽しむと決めていた。アメリカの地図を見ていて気づいたのが、コースタイムではなく距離が書いてある。日本ではある時間までにどこどこにいないとビバークになってしまう、急峻な山々ではビバークできる場所も限られていてあくまで最終手段という事情があるが、アメリカはルールさえ守れば基本はどこにテントを張ってもいいのと、遅れても道が長いのでどこかしらで帳尻を合わせることができるのだ。ピークハントしなきゃいけないわけでもないし。山歩きの価値観そのものが違うから、アメリカ式で歩きたい。だから時間を決めずに、歩いていくうちにどこまで歩くかを考えればよいのだ。そのことを伝えると納得してくれたようだった。

誰かの忘れ物。

その後も景色がよい場所を見つけたらランチしたりお昼寝したりしながらテクテク歩いた。最後の急登を登りきったらいよいよDAY1の目的地、Thousand Island Lakeだ。

ランチはもっぱらトルティーヤ。

お昼寝💤

Thousand Island Lakeはかなり期待していた(旅の期待の30%ぐらいを占めていた)が、それでもはるかに上回る絶景が待っていた。ここは標高が3,000メートルぐらいなのに大きな湖があってそれが川の流れになっている。湖の向こうには雪が残る岩山が聳え立っていた。Mt.リッターに連なるBanner Peakだ。

風もそこまで強くなく、湖面が午後の光を受けてキラキラ輝いている。なんて美しい場所なんだろう。夢中で何度もシャッターを切った。湖畔にたどり着いてしばらく湖を眺めながらボーっとする。逆方向から歩いてきた日本にルーツがあるお母さんと軽く声を交わした。ベビーキャリーを背負って母子ふたりでDonohue Passを超えてきたらしく、とても印象的だった。

Banner Peakが近づいてきた。

輝く湖面。

湖沿いにもう少し歩くとDAY1の宿泊地だ。宿泊地にはすでに何組か先客が。まずはテントを張って飲料水の確保とトイレになる場所を探した。(トイレは水辺から30メートル離れたところに、15センチ以上の穴を掘って「いたす」というルールがある)
トイレもうまいこと見つかり、ご飯を食べてボーっとする。標高が高くて寒いのに真っ裸で水浴びをしているハイカーや、空の色が変わっていく様を眺めていた。贅沢な時間だ。日が落ちると一気に寒くなり、ベアキャニスターを遠くに置きにいって早々にシュラフに潜り込む。明日は今回の最高地点、Donohue Passを超えるのだ。どんな景色が見れるのだろうか。

夕陽が沈んだ直後。

月が出てきた。

🇺🇸でもいい色だった。

🦟蚊対策

なお、テントを張ってから気づいたのだが、長袖フーディを着ていたにも関わらず肩から腕、胸にかけていくつも蚊に刺されていた。薄いメリノのフーディだったので、突き抜けて刺されてしまったのだ。アメリカの蚊の恐ろしさを痛感したぼくは、次の日から半袖メリノTに長袖シャツで歩くことにした。肌が露出している部分には日焼け止めとディートを塗りたくる。また、テント場についたらまず長ズボンを履いたり、長く停滞している時の露出を抑えることで被害に遭うことは無くなった。日本から持っていった蚊取り線香も効き目があったし、しっかりめな蚊対策をお勧めする。