平均身長、伸びていないのは日本だけじゃなかった。-統計ソフトJMPの折れ線グラフで可視化-
山崎 礼
■ 30年間平均身長が伸びない日本人
少し前に、あるニュースが話題になりました。日本人の平均身長が、ここ30年ほど伸びていないというものです。
日本人の身長“30年間伸びず” 男性170.8cmで逆に低く…「高身長」若者の意識変化も
All Nippon NewsNetwork(ANN)
その原因として、ニュースではお産の早期化や、体型を崩さないように食事の量を制限する妊婦が増えた等を挙げていました。
でも、これは我々日本人だけの話なんでしょうか?気になったので諸外国の平均身長との比較を統計解析ソフトウェア「JMP」で行ってみました。
■ 外国と日本で17歳の平均身長を比較
まずG7の国々(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダ。EUは除外)と日本を対象に、17歳(ニュースでは17歳男性が対象だったので)の平均身長の推移を比較します。
そして次に、G20のうちアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコといった国々と日本を比較します。四半世紀ほどのデータの推移から、いったい何が見えてくるでしょうか。
■ G7と日本の比較
1. JMPで折れ線グラフを作成
では早速、G7の国々と日本の比較を行いましょう。対象となるデータをエクセルファイルで用意したら、JMPを起動します(無料トライアル版はこちら)。
「ファイル」>「開く」>右下のプルダウンから「Excelファイル」を選択。ちなみにJMPはエクセル以外に、テキストファイルやPDFファイル等さまざまなファイルを開くことができます。
そして、対象のエクセルファイルを選択して開くと、このようにデータテーブルが表示されます。
上のタブの「グラフ」>「グラフビルダー」の順で進めます。
そして、画面の「X」に「年度」、「Y」に「平均身長」、「重ね合わせ」に「国」をドラッグ&ドロップし、上部タブのグラフの種類は「折れ線」を選びます。
すると、簡単に折れ線グラフが作成できました。
ですが、今のままではグラフの出来としては不十分です。データは男女の別がありませんし、線が多すぎてどの線に注目すればいいか分かりづらいです。また、地域ごと、たとえば「日本」「米国」等で色分けすれば、もっと見やすくなるかもしれません。これらはJMPで簡単に実行できます。
2. 折れ線グラフのカスタマイズ
1) 男女別の折れ線グラフを作成
「グラフビルダー」の隣の赤い▼をクリックし、「ローカルデータフィルタ」を選びます。
「フィルタ列の追加」>「性別」>右上の「+」で、男女別のグラフを確認できるようになりました。
・男性のグラフ
・女性のグラフ
こうして見ると、男女ともに1位はドイツで、その後にカナダ、フランス、イギリス、米国、イタリア、日本と続くのは男女ともに同じですね。
また、イタリア人の17歳の平均身長は他の欧米諸国に比べるとそこまで高くないのは意外でした。ファッショナブルで何を着ても似合いそうなイメージのイタリア人は高身長と勝手に思い込んでいました。
2) 線に透明度の差をつけて見やすく
このグラフはこのままでも面白いのですが、ほとんどの国が調査期間(1994-2019)中、1cm程度しか平均身長が伸びていないようです。
そこで、もう少しグラフを見やすくするために、例外的に伸び幅が大きい国(カナダ)と日本になじみの深い米国、そして日本の3国とそれ以外の国で線の透明度を変えてみましょう(男女で傾向が似ているので、ここからは男性のグラフだけを例にとります)。
一番簡単なやり方は、「shift」キーを押しつつ、ハイライトしたい折れ線グラフを1つずつクリックする方法です。
日本人とアメリカ人はこの四半世紀であまり身長が伸びていない一方、94年にアメリカ人と平均身長がほぼ同じだったカナダ人は、同じ期間で随分身長が伸びている様子が分かりますね。
でもこのグラフはまだ若干見づらい気がします。もう少しカナダ、米国、日本を際立たたせてみましょうか。
グラフ右横の「国」の下に並ぶ、カナダ、米国、日本以外の国名を1つずつ右クリックし、それぞれ「透明度」を0.1に設定して「OK」を押すか、Ctrlキーを押しながら透明度を変更したい国々をクリックし、複数を同時に選択した状態で右クリックで一度に透明度を変更できます。
すると、どうでしょう。かなり見やすくなったと思いませんか?
「透明度」は0~1の範囲で自由に決められます。今回は0.1に設定しましたが、皆さんは自分の好きなように設定してみてください。
3) 線の色の変更
ここまででも見やすくなりましたが、カナダと日本のグラフが似通った緑色なので、日本を赤色に変えて差をつけてみます。
さっきと同じく、グラフ右横の「国」の下に並ぶ、「日本」を右クリックしましょう。「線の色」から好きな色に変更できます。
ここでは、赤色を選択します。すると以下のグラフができました。
ここまでの分析から、17歳男性の平均身長について、以下のことが分かりました。
G7では、日本だけではなく米国をはじめとする多くの国で、対象期間中、平均身長はそれほど伸びていなかった(約1cm以内)。
カナダは例外で、対象期間中、平均身長は約2cm程度伸びていた。
とすると、ニュースで言及されていたことは、G7の国で見ると日本だけの事象とまでは言えないかもしれませんね。
では次に、対象を広げてみましょう。G20のうちアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコの国々と日本の17歳男性を比較します。
■ G20(G7除く)と日本の比較
グラフの作り方は、G7の時と同じなので、以下では結果のグラフだけご紹介します。
透明度や色のカスタマイズをしないままだとこうなります。
絡み合った糸のような… 控えめに言っても何が何だか分かりませんね。でもJMPなら、際立つ特徴にフォーカスしたグラフを手早く簡単に作成できるのは、もう皆さんもお気づきになったかと思います。さっきと同じ工程で見やすくしたのが以下のグラフです。
このグラフから何が分かるでしょうか?ざっと見ただけでも次の内容に気づきます。
G7を除いたG20の国々のなかで、平均身長(17歳男性)が1番高いのは、オーストラリア。
オーストラリアや日本は、対象期間中、他の国と比べて平均身長はあまり伸びていなかった(1~1.5cm程度)
韓国、インドネシアは、対象期間中に平均身長が4cm以上伸びていた。中国はさらにその上をいって8cm近く伸びていた(日本は2009年に中国に平均身長で抜かれている)。
たしかに思い返してみると、コロナ前に新宿あたりの街中で多く見かけた中国人観光客の方々は、昔に比べると体格がよく、しかも高身長だった気がします。
近年、経済成長が著しい東南アジア圏の国々では、平均身長も大きく伸びている印象ですね。
一方、G7のような経済発展がひと段落した国々は、平均身長の伸びも落ち着いてきているようでした。
昔のような「高身長、高学歴、高年収」が画一的に良しとされる時代は過ぎました。日本人の平均身長が30年間伸びていないという事実を一面的に見て悲観するよりも、今は身長の高低にコンプレックスを抱かず、どのような身長であっても自分自身のことを肯定でき、自分らしく生きることが格好いいと思われる時代になりつつあると思う方がいいのかもしれませんね。
※ 最後まで読んでいただき有難うございました。せっかくですから、皆さんも折れ線グラフを試しに作ってみませんか?
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