夜行列車で起きた珍事件
夜行列車をたくさん利用してホテルと交通費の合わせ技にした今回の旅。大きな遅延もなくスムーズに移動できたのだが、結構な迷惑を被った事件があった。
予約とったのに!
国際路線の夜行列車ナイトジェット。
去年はパリとウィーンを結ぶ長距離列車を使った。今年も色々乗ったが、この話はチューリッヒからベルリンに向かう時のこと。
私はいつも6人部屋のクシェットをとる。
ナイトジェットには3種類の席がある。
①個室寝台
値段は高いがゆったり過ごせる。
シャワーつきのいわゆる寝台。
②6人部屋クシェット
向かい合わせの座席の背もたれを90度回転させ水平にし、ベッドの中段に。
上段は荷物置き、下段は座面がベッドになる。
つごう3段ベッドが1部屋に2つ。起き上がれないくらい狭いが寝るくらいなら十分。値段もそこそこ。
③一般席
向かい合わせの3人席×2。
ほぼ水平にリクライニングできるが、ここに6人はさすがに厳しい。究極の安さを求めるならここ。
個室を取るほどでもないし、クシェットだと見知らぬ人たちとの出会いがある。治安もさほど悪くないし、何かしようものなら電車の中でお縄だ。
去年のウィーン往復で2組の若者たちと楽しく会話した記憶もあり、今回もクシェットを予約した。
いざ乗車。
チケットには号車とベッドの番号が書いてある。
指定の号車に乗ったのだが、自分のベッド(95番)が見つからない!その号車のベッドは80番台で終わっていた。
同じような境遇に陥った若いカップル2人がいた。
後から知ったが、彼らはアルゼンチンから来ていて、2人はスペイン語で会話している。男性は英語をよく話せるみたいで、我々は一体どういうことだと話した。
車掌さんがホームにいたので一度降りて聞いてみる。あーそうそう、ごめん違う号車に移動して、この号車ね。
迷いながら移動して部屋を見てみると、3人掛け向かい合わせの席(一番低いランク)にこんな貼り紙があるのを見つけた。
クシェットと書いてあるのに狭い普通席。
彼と一緒に男性の車掌さんへ抗議した。
どうやら今日は車両の変更があり、6人部屋でなく4人部屋の車両を使うことになった。だからどうしても溢れてしまうクシェット予約者が出てしまう。悪いがこっちに移ってくれ。
そう言って車掌さんは戻ってしまった。
すぐ後に女性の車掌さんが来る。
彼女は英語がからっきしだった(オーストリア国鉄なのでみんなドイツ語を話すが、英語を話せない車掌さんはごく稀ではないだろうか)。
我々3人とその車掌さんでGoogle翻訳を使いながらコミュニケーションをとった。こういう時にドイツ語がよく話せたらと思うのだが…
ドイツ語、英語、スペイン語、日本語とGoogleも大忙し。ベッドがないなら諦めるから、せめてダウングレードの証明書をくれと頼んだ。先ほどの男性の車掌さんもやってきて、彼がその書類を発行してくれた。
証明として、我々の自撮りもとった。
これを一緒に本社へメールしてくれとのこと。
また面倒なことをしなくてはならない。
アルゼンチンから来た2人とのはなし
ずいぶん遠くから来た2人。まあ自分も人のことは言えないが、彼らも相当なフライト時間だったようだ。
日本にもアルゼンチンから有名なバンドネオン奏者がきたよ、なんていう話をした。彼らもタンゴは好きらしい。男性はピアノを少し弾けて、お母さんがピアノの先生だという。
楽しい話をしようとみんな思っていたのだが、結局はダウングレードの愚痴ばかり。この寝にくいところで一夜過ごすんだね、と。いまが3人で、増えても1人なのはまだ救いだ。6人になったら絶望的である。
そんな話をしながら、私は買っておいたビールを開け、だらだら飲んでいた。20時頃の発車だったから、寝るには早いし車内で飲もうと買っておいたのだった。
なんだかんだで22時。歯を磨きに洗面所へ立ち、帰ってくると、男性が車掌さん来てたよ、と教えてくれた。
どうやらクシェットに1人キャンセルが出たらしく、1名分なら移動できるとのこと。
彼らは別々になる選択肢を持たないので、君が行っていいよと言ってくれた。
荷物をまとめてありがたく移動。
インスタを交換した。君が有名なピアニストになったらこの自撮りを自慢しようかな、と冗談混じりに別れの言葉をくれた。
クシェットに移動
4人部屋クシェットに移動。
新型車両のようで、何から何まできれい。
2段ベッドなので余裕もあり、ゆったりと過ごせる。
既に乗っていた3人家族。上段には母娘が既に寝ていて、下段ではお父さんがほぼ裸でスマホをいじっている。
3人+1人はなかなか気まずいが、翌朝の雰囲気は決して悪くなかった。
ナポリからさらに船で2時間というリゾート地に行った彼ら。両親はそれぞれで日本に来たことがあるらしく、お父さんは船好きでなぜか鹿児島や宮崎に行ったという。
クシェットは本当に色々な出会いがあり、その場限りの会話も楽しい。
無事ベルリンにつき、荷物をまとめ、車掌さんに催促されながら列車を降りた。
アルゼンチンの2人はちゃんと眠れただろうか…