九州一人旅② シェフとの再会&一人旅の出会い
前回の鉄旅につづき一人旅②。
武雄温泉からバスで30分余り。多久市に着いた。
今回の一人旅の目的は、市役所のはす向かいにあるお店「びすとろ ひろ」に行くことだった。このお店を経営する吉野好宏さん、飯盛博子さんは私が幼い頃からお世話になった方々で、今回お会いするのは十数年ぶり。
アレルギーのひどかった私にも本格的な料理をと、幼少期から毎年誕生日の頃に都内のお店で美味しいフレンチを振る舞ってくださった。数年後、吉野シェフは宇都宮や唐津へ、飯盛さんはメルボルンへと移られ、しばらく連絡は途絶えていた。
数年前にシェフが多久市でお店を出していてことは知っていたし、ずっと行きたいと思っていた。しかしなかなか九州に行く機会がない。そんなこんなで十数年の月日が経ってしまったのだが、今回ようやく九州旅行をすることになり、一人旅をするなら何としても多久へ、と思っていたのだった。
ドラマ『王様のレストラン』を監修するような一流のシェフ。70代になられた今はリーズナブルな価格で地元の食材を使った料理などを出されている。
予約の電話をしたとき、本当に突然の連絡だったのでシェフも相当驚いていたが、一人ではるばる九州へ来るのを涙ながらに喜んでくれた。
飯盛さんも一緒であることを知らなかったので私はびっくりしたのだが、お二人に会えることがたいへん嬉しい。
電話で私は音大に通っていることなど近況報告をした。するとシェフは、4月に東京湾のクルージングで料理を出すのでピアノを弾いてくれないかと声をかけてくださった。その打ち合わせも楽しみにしつつ、お店に伺うことになったのである。
お店で
なんとなく緊張して入ったお店。
内装は品があって、モーツァルトやベートーヴェンが流れている。飯盛さんが案内してくれて、端の席に通してもらった。シェフもすぐに出てきてくれて、お二人と久々にお話しする。
積もる話がたくさんあったので、一品目の前に長話になってしまったのだが、相変わらず大声のシェフ。近くのお客さんにも我々の会話はよく聞こえていて、みなさん混ざってお喋りした。
リアル「天皇の料理番」だった話、ロンドンのヒルトンホテルで小澤征爾氏の食事を毎朝作っていた話、統廃合で閉校になる学校で料理を振る舞った話…
シェフの料理は長い月日が経ってコンセプトが変わっても味わいが変わることはない。「最近は食材が良くなったから誰でも美味しいものを作れる」と冗談めいて話していたが、だからこそ自分自身にしかできないことをしたいのだと言う。ここ数年はことさら社会貢献に力を入れていて、先ほどの小学校を含め、子供たちにもたくさん料理を作っているのだとか。
シェフはその閉校になる小学校に電話をしていたらしく、この後の予定がそんなにないなら学校のピアノで何か弾いてよ、と無茶振りされた。島にいたので数日ピアノに触れていなかったが、せっかくなので行くことにし、お客さん二人もついてくる流れになった。
厳木小学校にて
車で移動した先は唐津にある厳木(きゅうらぎ)小学校。今年度末で役目を終える、小さな学校だった。
音楽室にアップライトピアノがあり、シェフの親戚の方々も集まっていた。リクエストを受けて《愛の夢》や《エリーゼのために》など定番のものを色々。少し弾いただけで皆さん感激してくださり、私も嬉しかった。というか、その反応の大きさに私がびっくりしてしまった。
ここでシェフ達とはお別れ。また4月に、と言って車で帰っていった。
実は小学校に向かう道中、お二人(姉妹だと知った)のお客さんの車に乗せてもらっていた。
私がこの後特別な予定を立てていないことを知っていたので(博多にカプセルホテルをとっていたので太宰府にでも行こうかと思っていた)、唐津で観光しないかと誘われる。一人でノープランの旅を続けるのもいいが、最終日前日がいい思い出になるかもしれないとフットワーク軽く誘拐されてみた。
このお二人はピアノ経験者なのだそう。それぞれのお子さんたちもピアノを弾いている・いたとのことで偶然にびっくり。いい機会だし、二つの家族で集まって夜ご飯を食べようとなった。
しかし、お目当てのお店は定休日。色々考えて、お二人の実家に大集合して宴をすることになった。そのお家にもアップライトがあるとのことで。
つづく。
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