粒胡椒の呼気のこと【勝手にリレーエッセイ2023"春"#5】
エビデンスがないと無意味なのか。
エビデンスがあれば有意義なのか。
実際に検証しようがない、いや、努力すればできるのかもしれないけれど、私にはその勇気もサンプルも持ち合わせていない、その内容をここで書こうと思う。
この度参加させていただいたリレーエッセイ、長谷川林太郎さんからバトンを受け取りました。
まずは長谷川林太郎さんのエッセイを読んで、キューバ音楽で明るく元気な気持ちになって、そしてグーグルマップでキューバの位置を確認して、そしてその地図を好きな方向に横にぐぐーっと動かして、まあこの辺かなと見当をつけて、私の記事を読んでいただけると嬉しいです。
南国の風をぜひ感じてください!
私は元助産師なので、ほかの業種の方々に比べて「シモ」のお話をすることにあまり抵抗はないけれど、それゆえ若干下品になってしまう可能性もあります。これを読んで不快になった方がいらっしゃったらお許しください。先に謝っておきます。
2003年5月に産まれた息子はもうじき20歳になる。
日本ではない南の国で息子を生んだ私は、それまでにこちらでできたお友達などなどの様子から、出産後は周りが手厚く至れり尽くせりのお世話をしてくれるので、産後はゆっくりできるものだろう、と思っていた。
が、南の国の人である義母は高齢であり、そして私が助産師だったことも邪魔をしてほかの人もあまり手伝ってはくれなかった。なんだよ、もっと大事にしてもらえるかと思ったのに。
しかしそんな中、義母はなぜか「孫の沐浴」だけにはこだわった。赤ん坊の沐浴なんて私は仕事でじゃんじゃんやってきたから慣れてるし、ほかのこと手伝ってもらう方がありがたかったけれども。
沐浴は義母にとって儀式だった。
我々の寝室にベビーバス、ほぼ水じゃね?という温度の水、義母が座るための小さな椅子、息子に水をかけるためのココナッツの殻、(ココナッツの殻には穴が開いている)、そして粒胡椒をもってくる。
息子を裸にして義母に渡すと、小さな椅子に座った義母は、ベビーバスに息子を入れて、ココナッツの殻で水をすくって頭にかける。毎回回数を数える。何回かけてたんだろ。ココナッツの殻の小さな穴から出てくる水を息子にかける。
ベビーソープを泡も立てずに塗りたくり、そしてゆっくりと洗い流す。息子が泣いていたかどうか、覚えてはいない。
沐浴を終えて体をふき、足がまっすぐになるように足をマッサージし(股関節脱臼したらどうするねん)、お母さん(私のこと)のように鼻が低くならないようにとか言いながら(ひどいな)鼻筋をつまんで引っ張り上げ(そんなことで高くならんと思うが)、そして、おむつをつける前に、粒胡椒を口の中に入れてかみ砕き、息子の股間に向かって息を吹きかける。
へ?
思う存分息子の股間に息を吹きかけた後は窓からかみ砕いた粒胡椒を唾液とともに吐き捨てる。
毎日毎日それが執り行われるのだ。
さすがに毎日見てると私も感覚が麻痺してきて、普通のことのような気がしてくる。粒胡椒をかみ砕いたヒリヒリした呼気に消毒効果でもあるのかしら、程度には麻痺してくる。でも、どう考えても普通の行動ではない。
理由が知りたい・・・でもそれを義母に聞く勇気がない。
なので夫に聞くことにした。
「沐浴の後に、お義母さんが胡椒を噛んで息子の股間にフーフー息を吹きかけるけど、あれはいったい何なの?」
「あー、あれはね、年取ってから玉袋が垂れ下がらないようにするためだよ。玉袋が垂れ下がったらみっともないからね。」
は?
何を基準にそれを判断するんだ?
「粒胡椒をかみ砕いた呼気を吹きかけることで玉袋の伸び率が減少するかどうかの検証」
介入群、粒胡椒を噛みつぶした呼気を吹きかける。
対象群、何もしない。
10年ごとに伸び率を測定する。そんなデータなどどこにもない。
粒胡椒をかみ砕いた呼気で袋がきゅっと縮むんかいな。
20年前フーフーとおばあちゃんに粒胡椒をかみ砕いた呼気を何度も吹きかけられた息子の玉袋の観察など私には恥ずかしくてできない。
50年以上前に義母に粒胡椒をかみ砕いた呼気を吹きかけられたであろう夫の玉袋の観察は出来なくもないけれど、でも、吹きかけられなかった場合、とは比較しようがない。
粒胡椒をかみ砕いた呼気を新生児時代に股間に吹きかけることは無意味なのか有意義なのか、義母が生きてる間に聞けばよかった。義母には聞くことはできなかったけれども、これを読んだすべての袋を持った人が自分の袋のことを想い、これを読んだすべての袋を持たない人が自分の身近な袋のことを想ってくれたら、このエッセイはきっと有意義になるかな。
ならへんわ。
社会人一年目のMayu.さんにバトンをつなぎます!
地下鉄サリン事件があった年に社会人一年目(産婆一年目)だった私ですが、その時にはまだ、Mayu.さんは生まれていないですね・・・ひっ!
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