1,300人が熱狂するコミュニティ空間をつくるために実践した17の取組み
FORCASの酒居です。
コミュニティやオフラインイベントに注目が集まる昨今。
参加者の熱量を高める鍵となるのが、インタラクティブなコミュニケーションの場です。でも、セッションがメインとなり、懇親会含めどのようにインタラクティブな人の交流をつくるかに悩む方も多いのではないでしょうか。
今年2019年7月24日に虎ノ門ヒルズフォーラムにて、SaaS企業が一堂に会するカンファレンス『SaaSway Conference』を開催しました。
当日は来場者1,051名、ご登壇者やスポンサー企業様等を含め1,295名にご参加いただきました。
中でも、参加者同士が自由に交流できるコミュニティの場として設けた『CLOUD LOUNGE(クラウドラウンジ)』は、たくさんの参加者から好評の声をいただきました。
実際にカンファレンス当日は、このCLOUD LOUNGEの盛り上がりが起点となって、参加者の熱量が高まっていきました。
そのCLOUD LOUNGEを企画する上で数ヶ月にわたって「熱量のつくり方」、「コンセプトの形成」に向き合い、取り組んできました。
今回はその空間実現のために実践した17の取組みを、3つのカテゴリに分けてご紹介します。
1. コンセプトを形成する戦略のつくり方
2. 会場誘導の仕掛け
3. ラウンジ内の熱量を高める方法
カンファレンスの企画やイベント時の空間づくりなどのご参考になれば嬉しいです。
なんと13,000字超え!笑 今回は写真がもりだくさん!
カンファレンスの核として「人と人が出会い、つながる場」をつくる
まずはそもそも『CLOUD LOUNGE』がどんなものかご紹介しますね。
「人と人が出会い、つながる場」をコンセプトに、参加者がインタラクティブに交流できるコミュニティ空間。それがCLOUD LOUNGE(クラウドラウンジ)です。
カンファレンスのテーマである「日本のSaaS Shiftを加速する」ことを実現するために、なくてはならない重要なエリアとして、一番力を入れて空間づくりを行いました。
ビジネスカンファレンスの一角には、スポンサーブースが立ち並んだいわゆる「スポンサーエリア」を設置するケースが多いです。
これは参加者へはスポンサー企業の紹介、スポンサーへは参加者のリード獲得としてつくられることが一般的です。
元々CLOUD LOUNGEもスポンサーエリアの位置付けで考えていました。でも、スポンサーエリアはカンファレンスの中でもどこかサブ的な位置付けになるケースが多く、「営業をがっつりされるのではないか」と参加者ぎ懸念を抱いてあえて立ち寄らないケースもよく伺います。
そうなるとスポンサー企業さんからしても、あまりお客さんが集まらない寂しい状況になってしまいがちです。
しかし、それは「SaaS SHIFTの狼煙を上げる」ことを掲げたぼくらのカンファレンスとしては、在りたいカタチではありませんでした。そうではなく、参加者もスポンサー企業も双方が喜んでいただける、熱量が高まる空間をつくりたい。その想いが強くありました。
このエリアのコンセプトを思いついたきっかけは、今年2019年2月に出張で訪れたサンフランシスコでの体験があります。
素敵な人たちとの出会い、アートとの出会い、そして米国型のビジネスカンファレンスの形。
その一つ一つの体験から、出会いこそが新たな道をつくり出すきっかけだと感じ、それを表現した空間をつくりたいと強く考えるようになりました。
コンセプトに行き着いた具体的な経緯や大切にしている想いについては、下記の記事で紹介しています。
⇒ 重責感の伴うわくわく感を体感してほしい。 7.24は狼煙を上げる日
実際にCLOUD LOUNGE内では何ができるのか。
参加者同士が自由にコミュニケーションをとれる場「ミートアップエリア」があり、そのまわりにはスポンサーブースをはじめ、ピッチステージ、ドリンクカウンター、ショップ、パワーステーションなど様々なエリアを設けました。
カンファレンス参加者は、休憩時間やセッション時間にかかわらず、自由に来場していただけるようになっています。
各エリアをもう少し知りたい方は、下記サイトをご覧ください↓
1. コンセプトを表現するために実践した戦略と取組み
ラウンジをつくるにあたり、まずはコンセプトからつくりました。では抽象的なコンセプトをどのようにカタチに落とし込んだのか。
ここではマーケティングと同様に戦略を考えることからスタートし、5つの点を重要視しました。一つずつ紹介します。
① 「ネーミング」が重要
「人と人が出会い、つながる場をつくる」というコンセプトを実現するにあたり決めていたことがあります。
それは「スポンサーエリア」とは一切言わないこと。
企画段階でも誰かが「ここのスポンサーエリアですけど…」と言おうものなら、「クラウドラウンジです」と訂正し、準備段階から社内外での浸透を徹底しました。スポンサーエリアの表記は、スポンサー提案時の資料にちょっと載せたくらいです。
名は体を表すといいますが、言葉の力は想像以上に絶大です。なので、たとえ仮だったとしても「スポンサーエリア」と言ってしまうと、自分たちの意識のどこかにコンセプトとのズレが生じてしまいます。そうすると、空間設計の段階でカタチや見せ方が変わってしまいます。
また、参加者としてもマップに「スポンサーエリア」と表記されると、よっぽど興味がある企業が出ているか、空いた時間にちょっとぶらぶら立ち寄るくらいしかそのエリアには行かなくなってしまいます。
参加者の方々にもスポンサーエリアとしてではなく、「双方向でコミュニケーションをとる場」であり、SaaSwayの一つの重要なコンテンツであることを暗に伝えるためにもラウンジという言葉を選びました。
自分たちの実現したい目的やテーマを表す適切なネーミングをすることが、参加者・企画者ともに重要だと考えています。
② 参考とするイメージは「バイネーム」で考える
コンセプトが決まり、具体的にどのような空間をつくるかの構想の段階になると、ベンチマークになる場・空間を考えていきました。
ここで重視したのは「バイネームで決める」こと。
これは普段のマーケティング活動の中で、対象となるターゲットを決める際にやっていることと同じ流れです。
ふわっとした空想上のイメージよりも、存在している実際の対象から導き出した方が、よりリアルなイメージをつくり上げることができると考えました。
そして、ベンチマークとなる対象をバイネームで見つけ出すことができた後、ぼくは幾度となくその場所を訪問しました。
ネットでググれば画像はいくらでも出てきますが、実際に自分が体感するのはインプット量が全く異なります。
その空間を体感しながら、「なぜここではこういう感覚を感じるのだろう」「なんでこの雑貨を置いてるのだろう」「その雑貨から何を意識するのだろう」など、自分でもよくわからないながら、一つ一つの細部から全体をマクロで見たりと、ぼーっと歩きまわります。完全に変な人です(笑)
でもそんな中から色々と感じるものが出てきて、それをメモしながら、自分なりの言葉に落とし込んでいきました。
バイネームでベンチマークを決めるといっても、そっくりそのまま真似をすればいいというわけではないと思ってます。アイテム一つとっても、それが置かれている背景には、その場所をつくった人や企業それぞれの想いやコンセプトがあります。
形式だけ真似てもその意図が異なれば、全く違う感覚を与えることになりかねません。なので、自分が形而下的に体験したことを、形而上とは言わないまでも一度抽象的なものへ考えていき、そこから自分たちなりのカタチに落とし込み直すということをやっています。
また、参考にするイメージは、メインでは一つに対象を絞り込みます。そこから、部分的に他のものも組み合わせたり、アレンジすることをしていきました。
そうすることで、結果的には自分たちのコンセプトにあったオリジナルの場をつくることができます。
③ フォーカルポイントとして中央に「ミートアップエリア」を設置
▲ CLOUD LOUNGE 施工中の様子
アートや建築の世界で用いられる言葉で、フォーカルポイントという言葉があります。注視点と訳されたりしますが、つまり視線が最も集まる場所のことです。
今回「人と人が出会い、つながる場」というCLOUD LOUNGEのコンセプトは、これまでの日本のビジネスカンファレンスではあまり存在しなかったものです。
そのため、言葉ではなく、視覚的にとらえ、体験として実感して理解していただく必要があります。そこで、中央に一番大きな面積を割いて「ミートアップエリア」をつくることにしました。
ミートアップエリアを中心にとして、まわりに各ブースやカウンター等が並び、参加者はまわって観覧することができるという構図にしました。
参加者の注目が集まるフォーカルポイントとして「ミートアップエリア」をつくり、実際に参加者自らがその空間を体験していただくカタチをつくることで、ぼくたちが伝えたいコンセプトメッセージを体現しました。
当日参加いただいた方々から「JJさん(ぼく)が書いてたクラウドラウンジのコンセプトの意図がすごくわかりました!」と言う声をたくさんいただきました。これはめちゃめちゃ嬉しかったです。
④ スポンサーブース含め全てデザインし、世界観を一貫する
こだわったのはミートアップエリアだけではありません。ラウンジ内に設営するスポンサー企業様用の出展ブースにも力を入れました。
CLOUD LOUNGEで「人と人が出会い、つながる場」を実現するためには、スポンサー企業の方々の協力が不可欠と考えていました。
参加者同士がつながるだけでなく、出展いただいたスポンサー企業の方々と参加者の方々もさまざまな目的でつながっていただくことができれば、一番理想的なカタチです。
そしてラウンジの世界観をつくるためにも、ブースのデザインはとても重要でした。そこで、信頼しているデザイナーさんに協力を求め、一緒に世界観を決めながら、ブースのデザインやショップデザイン等をつくっていただきました。
▲ ブースデザイン案
▲ ブースの表面やミートアップエリア床の素材候補
それを元にして、弊社FORCASのデザイナーとともに素材を一つ一つ選んでいきました。色や材質、あらゆるものを見ていきました。
特に弊社デザイナーのゆうきさんは素材チェックのために、様々なところへでかけて素材を確認し、多数の候補から厳選してくれました。
▲ 完成したFORCASブース
⑤ 「参加者が自ら発信する機会」をつくりたい
CLOUD LOUNGEにはもう一つ込めた想いがあります。
それは、参加者自身が受け身ではなく、「自ら発信する機会」をつくりたいというもの。
たとえインタラクティブにコミュニケーションをとるとしても、それが相手発信で受動的に対話が始まるのと、自身が能動的に動き対話が生まれるのでは、その人にとっての体験は大きく変わってくるのではないでしょうか。
ぼくはかなりの人見知りなので、人のことをとやかく言える立場ではありませんが、日本ではビジネスの場であったとしても自ら対話をつくりにいく、という機会はまだ少ないのではないかと思います。
しかし、米国のカンファレンスに参加した際にはそれと真逆で、自分が何者なのかを示し、自ら率先して対話をつくり出そうとする参加者がたくさんいました。
その姿勢の違いは、もともとの文化の相違もあるでしょう。しかし、今回のカンファレンスのテーマである「日本のSaaS Shiftを加速する」ためには、みんなが一丸となってSaaS SHIFTの狼煙を上げていくことが大切です。
その狼煙をみんなで高く上げるためには、自らが率先してつながり、共創を実現していく必要があります。
その考えから、日本のビジネスカンファレンスであったとしても、「自分が何者であるかを自ら示し、自ら率先して人とつながろうとする環境」をつくりたいと考えました。
それが後に下記でご紹介するEventHubや缶バッジ、採用メッセージボードの施策へとつながりました。
2. ラウンジへの導線をどうつくるか
このようにしてラウンジのコンセプトを表現する方法を実践していきました。
一方で、どれだけラウンジに力を入れたとしても、そもそもその場所へ来てくれなければ意味がありません。
そこでさまざまな導線の仕掛けづくりを実施しました。
① 無料チケットによるラウンジへの誘導
どれだけ魅力的な案内があったとしても、ラウンジの集客を参加者の能動的な判断だけに任せていては、なかなか思うように人は集まりません。ぼくたちが普段やっているイベントでもそれは同じこと。
つまり「CLOUD LOUNGEへ行きたいと思う必然性」をいくつつくることができるかがキーになります。
そこで実践した一つの施策として「無料チケット作戦」があります。
これはラウンジ内に設営した『SaaSway SHOP』で、1,000円相当のアイテムと無料で交換できるというもの。
ショップにはSaaSwayオリジナルのTシャツやマグカップ、タンブラーなどのアイテムを用意しており、一つ一つのアイテムを単なるノベルティにならず、普段使いしていただけるようなアイテムにすることにも力を入れました。
この無料チケットを入場時の受付にて、先着300名様限定でお渡ししました。
300名が一気にラウンジのショップ目掛けて行くことはおそらくなく、各自空いた時間にラウンジへ向かってくれるだろう。300名全員がチケットを使わなかったとしても、8割の方が使ってくれれば240名をラウンジへ誘導することが可能となります。
さらにショップをラウンジ内の奥に設置したこともポイントの一つです。それによって、ショップに向かう道中で、スポンサーブースやピッチステージ等、さまざまなものを観覧しながらすすめるようにしました。
一度ラウンジの空間を体感していただければ、必ずその空間を楽しんでいただける確信はありました。そのため、とにかくまずは参加者にクラウドラウンジに到達していただくことにフォーカスしました。
Tips:無料チケットは受付混雑の緩和も兼ねている
実は無料チケットには参加者をクラウドラウンジへ誘導する目的以外にももう一つ役割があります。
それは「開演直前の受付混在を緩和する」こと。
カンファレンスや大規模なイベントを経験されたはご存知だと思いますが、カンファレンスをやる上で一番のトラブル原因になるのが「受付オペレーション」です。
特に開演直前の15分前あたりから急激に混雑し、その受付オペレーションがカオス化することで、開演の遅れやスタッフアサインが乱れ、その他スケジュールが大幅に変更されるリスクが生じます。
▲ 先日セミナーで紹介したスライドより
そのため、受付オペレーションはリスク管理や混雑緩和対策を徹底してもしすぎることはありません。
無料チケットもこの受付混雑緩和に活用しました。具体的には、申込者への事前のリマインドメール内にて、開演直前は混雑が予想されることを伝えた上で、先着300名限定で無料チケットを配布することをアナウンスしました。
早く来るメリットを用意すれば、少しでも早く来ようとしてくださる方が増え、直前の混雑の緩和になるはず。
結果として当日の受付オペレーションは混雑したものの、受付を統括してくれた張替(普段は経営管理責任者、SaaSway運営メンバー)が上手くコントロールしてくれたこともあり、無事トラブルなくカンファレンス運営ができました。この中でチケットも一定の効果を果たしてくれたように思います。
② セッション会場からの導線づくり
カンファレンスのもう一つの重要なパートなのが、各種講演セッション。
SaaSway Conferenceでは、2つのセッション会場(定員550名と400名)をつくりました。セッション後の休憩時間にいかにCLOUD LOUNGEへ参加者を誘導するか、その導線づくりがとても重要になります。
ここは本当に試行錯誤を繰り返しました。結果として、いろいろな複数の取組みをここだけでも盛り込みました。
たとえば、セッション開始前の休憩中には会場スクリーンでCLOUD LOUNGEの紹介を投影しました。
また、セッション終了後の退場用のドアとして、どこのドアを開けるのかについても議論しました。ぼくたちが開催した虎ノ門ヒルズフォーラムでは、メインのセッション会場とCLOUD LOUNGEの会場との間の通路を開通させ、その通路に近いドアを優先的に開場させるなどの工夫もしています。
さらにセッション終了直後に、ピッチステージやCLOUD LOUNGEでの催しをアナウンスすることで、よりラウンジへ移動してくださる動きを強めることができました。
③ 起業家によるピッチステージをラウンジ内に設置
ラウンジ内に設営した『ピッチステージ(PITCH STAGE)』も重要なパートの一つです。このエリアの運営は、弊社グループの新事業である『ami』のメンバーが担当してくれました。
ここではSaaSのスタートアップ起業家の方々に登壇いただき、自社サービスのコンセプトや想い等を含めた20分間のピッチトークを行っていただくものです。モデレーターは、著名な投資家である前田ヒロさんに務めていただきました。
全6回のピッチステージを用意しましたが、ステージ内容がおもしろかったことはもちろんのこと、誘導という観点でもラウンジ以外でも会場アナウンスをすることで、ラウンジへの誘導、そしてラウンジ内の盛り上がりをさらに高めることにつながりました。
また、ピッチステージの開演時間をセッション会場の休憩時間を合わせることで、ラウンジへ行く理由を強めることも実施しました。実際に、休憩時間中にはピッチステージがあふれかえるほどの人がお越しくださいました。
④ 入り口からオープンに見渡せる見晴らし設計
これはぼくが展示会にブース出展する際にも気をつけていることですが、入り口から中がどういう様子なのかがオープンに見えるようにしています。
これは人はなにかよくわからないものに対しては不安や抵抗を感じやすい心理があるという理由からです。特に「CLOUD LOUNGE」のような聞いたことがないワードには、何があるんだろうという好奇心が湧くより、よくわからないという疑念や無関心になるケースの方が多いでしょう。
なので、覗いてみると中では楽しそうで盛況な空間が広がっているというように、参加者が見渡せるつくりにしておくことも大切だと思っています。たとえば、仕切りや壁で遮りすぎないということも一つ。
一方、すべてがオープンに分かってしまうとそれはそれで興味をなくしてしまうケースもあります。そこで、オープンには見せつつも、どこかに袋とじ的な部分をつくり、中に入ってみようという好奇心を高めるということも必要だと思います。
3. 「出会い」を加速させ、熱量を高めるための空間づくり
ここまでで、CLOUD LOUNGEのコンセプトの体現方法、そしてラウンジへ誘導するための導線のつくり方についてご紹介しました。
ここからはいよいよ「どうやってラウンジ内を活性化させ、熱量の高い空間をつくるか」について、取り組んだ施策や考え方を紹介していきます。
① 居心地の良さと回転率のバランスを意識したミートアップエリア設計
最も議論を重ね、力を入れたのがこの「ミートアップエリア」。このエリアの空間づくりこそ、CLOUD LOUNGEの肝となります。
ここで重視したことはもちろん「出会い、つながる場」を表現し、つながりが促進される空間をつくること。つまり、初対面の方同士でも落ち着いて、ゆっくりとコミュニケーションがとれる空間をつくることです。
そのため、最初につくったラウンジ全体の構想イメージから落とし込み、具体的なカタチを考えていきました。
一方で、もう一つ大切にしたことが「居心地が良すぎないこと」。
矛盾しているように思うかもしれませんが、つまりカフェの発想です。
参加者同士の出会いを一つでも多くつくるためには、場所の確保が重要です。一組があまりにも長く滞留しすぎてしまうと、回転率が下がり、新たな出会いができない機会損失にもつながってしまいかねません。
そのため、居心地良く落ち着いてコミュニケーションはとれるけれど、長居せずある程度スピード感も感じられるような、バランスがとれた環境をつくることを心がけました。
ここでは社内デザイナーのゆうきさんから紹介してもらった空間デザイン会社さんに大変ご協力いただきました。
ぼくたちからコンセプトと意図をお伝えし、先方から構図案や雑貨候補を提示いただいて、一緒に何度も議論を繰り返しながら、自分たちが表現したいカタチをつくっていきました。
▲ ミートアップエリアの構想案
特にこだわった点は、テーブルや椅子の種類。
これが居心地は良さと回転率のバランスに一番影響するだろうと考えました。具体的にはテーブルや椅子のタイプで大きく3つのエリアに分けてデザイン設計をしていただきました。
ハイテーブルは立ったままカジュアルに会話ができる一方で、回転率も高くできます。一方、もう少しゆったり会話したい、3人以上で会話したいという方には、ソファ席や4人が座れるテーブル席をつくりました。
▲ ゆったりとくつろぎながら、会話できるソファエリア
▲ ハイテーブルのみのミートアップエリア。気軽に話せ、回転率は一番高い
▲ ミートアップエリアを彩ってくれた装飾。素敵だなーと思った一角
② ドリンクカウンター『SaaSway CAFE』の併設
中央のミートアップエリアに併設して、ドリンクカウンター『SaaSway CAFE』もつくりました。こちらではコーヒーやジュースを無料でお配りしており、セッション中も常時オープンしておくようにしました。
ここでドリンクを受け取り、ミートアップエリアでゆっくりと会話をする流れをつくりたい。
結果として、売り切れになり追加が必要なほど多くの方に利用いただき、その流れのままミートアップエリアで談笑いただく風景を何度もみました。見ていてほんとに嬉しくなる一場面でした。
③ 出会う約束をつくれる「EventHub」の活用
来場者や出展社間の「出会い」を促進する目的として、イベント特化型ビジネスSNSである『EventHub』を利用させていただきました。
申込者やスポンサー企業の方々には、カンファレンス当日前からEventHubに参加いただき、興味がある方へマッチング依頼を送り、インタラクティブに当日出会う約束をつくっていただきました。
当日の待ち合わせ場所としては、ミートアップエリア付近にいくつかのミートアップポイントを設置しました。そこで待ち合わせをした後、ミートアップエリアで自由な会話をしていただく流れです。
実際にEventHubを使ってのマッチングは下記のような流れで成立数が推移しました。
結果として、219組のマッチングが成立し、のべ438名の新たな出会いとつながりを実現することができました。
カンファレンス前から当日出会う約束をつくれる環境を構築することで、『人と人が出会い、つながる場』のコンセプトの実現を大きく促進してくれました。
日本でも海外と同様に、自らアクティブにコミュニケーションをとりたいというニーズがあることを、ぼく自身実感できたことが大きな収穫でした。
④ 自分が何者かを表す「職種缶バッジ」
これはぼくが以前に参加した米国のカンファレンスで体験したことを元につくったものです。
経営者、マーケティングやインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、エンジニア、デザイナー、投資家など、自身の役割を示せる「オリジナル缶バッジ」を作成。
ラウンジ内のさまざまなところに設置したり、FORCASメンバーがユーザーさんを中心に渡してくれたりして、無料で配布しました。
セールスは他社のセールスと話したいだろうし、エンジニアはエンジニアと話してみたいだろう。また、投資家の方に声をかけたいスタートアップ起業家もいるかもしれない。
「自分が何者であるかを自ら示す」ことで、よりオープンかつアクティブにコミュニケーションをとろうという動きが生まれるのではないかと考えたことが一番の理由です。EventHubだけでなく、その場で瞬間的に出会う仕掛けとしてこれも上手く効果を発揮してくれました。
▲ 左から2人目、こっちを向いてるのがデザイナーゆうきさん
ちなみに、この缶バッジが実現できたのは、弊社デザイナーのゆうきさん(SaaSwayデザイン担当)に依るところが大きいです。
当初ノベルティ案を考えている際に、ゆうきさんがロゴの缶バッジ案を出してくれたのですが、全然ノリ気になりませんでした(笑)
でも、あきらめずに缶バッジをつくりたい!と言い続けてくれ、その後せっかくつくるなら単にお土産ではなく、当日活用できるものにしようとを考えたことで、ラウンジ内の重要なアイテムの一つとなりました。
⑤ 「逃げられる場」をつくる
自分たちがつくりたいものをつくろうとする際、「加える」ことに集中しがちですが、もう一つ大切だと思っているのが「除く」こと。
とくに自分たちがつくりたいものを体現する上で、現実的にダウンサイドリスクになりうる、阻害要因になりうるものを予め想定し、それをいかに回避するかを考え、対策を練っておくことが大切です。これはよく見落とされがちですが、ほんとうに重要。
その観点でぼくが最も危険視したことが、ミートアップエリアでの一人滞留でした。
「人と人が出会い、つながる場」をカタチにするために、中央にミートアップエリアを設け、人が居心地が良い空間をつくる一方、「居心地が良い」ということは一人で休憩したり、PCを開いて仕事をされる方も出てきてしまう可能性があります。
もちろんその行動自体はまったく否定するわけではなく、休憩したり、合間に仕事をしたい気持ちはわかります。しかし、もしその一人滞在を許諾してしまうと、中央のミートアップエリアが上手く機能しなくなってしまいます。
重要なことは、自分の期待値を参加者へ押し付けることではなく、いかに参加者を個別化し、それぞれのニーズを満たしながら導線を設計し、自分たちが実現したいカタチを体現するかだと思います。
そこで、仕事をしたい方のためのエリアとして、『Power Station(パワーステーション)』をラウンジ内に設置しました。
ここはコンセントがあり、充電が可能なエリアで、自由に出入りできるスペース。実際、当日一人でミートアップエリアに滞在される方はほとんどいらっしゃらず、パワーステーションをたくさんの方々が利用してくださいました。
思うように人が動いてくれないと当日悩むのではなく、参加者の各層のニーズを想定し、それをふまえて空間を設計することが重要だと実感しました。
⑥ ラウンジの外をあえて使わない
CLOUD LOUNGE内の空間づくりに力を入れた一方で、ラウンジとセッション会場以外の場所、ホワイエ(廊下やオープンスペース)についてはあえて何も置かないようにしました。
特に虎ノ門ヒルズフォーラムは、5Fのメインホール横のスペースや4Fホール前のホワイエ部分等が広く、そこにテーブルや椅子を設置し、休憩スポットにすることも多いです。
しかし、ここに大々的に休憩スポットをつくってしまうと、参加者の動きが拡散し、CLOUD LOUNGEへの人の集約が難しくなります。
そのため、廊下部分のホワイエにデフォルトで設置してあるベンチ以外には、あえてスポットは設けないというつくりにしました。
ちなみにいえば、他スペースの利用はしませんが、導線のための案内板やデジタルサイネージのデザインについては、SaaSwayの世界観が一貫できるようにデザイナーゆうきさんが、オリジナルの看板やサイネージをつくってくれました。
⑦ 採用メッセージボード&写真撮影スポット
CLOUD LOUNGE内で最も熱量が高かったのではないかと思うのが、この「採用メッセージボード」。
元は真っ白な壁面で、そこに自由に自社で求めている人材の募集内容を書くことができるものです。
これは、ユーザーさんと他愛もない会話をしている中で出てきたアイデアと、日本ドラマのぼくが好きなシーンのイメージが合わさって思いつきました。
別記事でも紹介しましたが、ここは本当に熱量が高く、たくさんの方々が自社の紹介や求める人材などを自由に書き込んでくださり、真っ白だった壁面はカラフルに彩られました。ぼくたちも感動した嬉しいスポットです。
また、このエリアを一つのフォトジェニックスポットにしたいという意図もありました。そこで、写真映えするためにどういうものをつくるかの観点も合わせて重視しました。
⑧ アフターパーティーはラウンジ全体を巻き込む
全セッション終了後にはアフターパーティー、いわゆる懇親会を用意しました。
通常のカンファレンスはこの時間でスポンサーブースの運営は終了し、片付けに入ることが多いです。そして、ブースエリアと別にスペースを確保しておいて、その一部のエリアでパーティーが開催されます。
しかし、今回のカンファレンスではあえて、別スペースを確保するというやり方はとりませんでした。
CLOUD LOUNGEの世界観をそのまま活かして懇親会ができれば、人と人の出会いをさらに加速することができる。そして、休憩時間にはゆっくりスポンサーブースを回れなかった方も、改めてブースまわりをすることができるかもしれない。
そのため、スポンサーの方々にお願いして、アフターパーティー中もブースをオープンしていただきました。
結果として、多くの参加者の方々がアフターパーティーに残ってくださり、スポンサーブースのまわりも含め、至るところでコミュニケーションが生まれました。ご協力くださった皆さんに感謝です。
おわりに:「共創」によって生まれた「共創をつくり出す場」
CLOUD LOUNGE、そしてSaaSwayカンファレンス全体を通して言えることですが、想像以上の素晴らしい空間を実現することができたのは、ひとえに信頼のおけるデザイナーの方々の協力があったおかげです。
FORCASのデザイナーでSaaSwayクリエイティブの土台をつくってくれた廣田さん(途中からグループ会社・JVRへ移籍)、5月に入社したのに即戦力として無茶なボリュームとスケジュールの中でクオリティに妥協せずに創り上げてくれたゆうきさん。
二人をはじめ、社外のとてもリスペクトしているデザイナーさん、素晴らしい空間を演出してくださった空間デザイン会社の方々、いつも素敵な写真を撮ってくださるカメラマンの方々。
ぼくの妄想とよくわからない説明を忍耐強く聴いて理解し、カタチに落とし込んでいってくれたみなさんに心から感謝しています。ほんとうにありがとうございました。
ぼくは空間づくりもグラフィックもプロではありません。でも、だからこそぼくは信頼するデザイナーさんとの仕事が大好きです。
イベントのバナーをつくる際にも「ここの見せ方はこうしよう。この文字のフォントサイズを○ポイント変えよう」などと、いっしょに何かをつくる機会は本当に楽しい時間です。
クリエイターの方のアイデアが掛け合わさることで、ぼくだけでは到底考えつくこともできない素晴らしいカタチをつくることができる。この共創の体験はとても大変だけど、完成したときの喜びはそれを大きく上回ります。
CLOUD LOUNGEのコンセプトは、もはやしつこいですが「人と人が出会い、つながる場」。これはつまるところ、「共創をつくり出す場」です。
全く異なる人がつながり、共創が生まれ、お互いのアイデアが掛け合わさることで、想像もできなかったような新たな未来をつくることができる。そんなカタチをこのカンファレンスを起点として生み出せれば素晴らしいなと思っていました。
そんな「共創をつくり出す場」をぼくたちも「共創」によってつくり出すことができたことは本当に嬉しい。
今回ご紹介しきれなかったですが、CLOUD LOUNGEには参加者の方々の熱量を高める仕掛けがまだまだあります。
しかし、すでに12,000字を超えてるのと内容がマニアックすぎるので、このあたりでやめておきます(笑)
大切なことは、自分たちが表現したい空間を常にイメージしてつくることで、それをつくるために必要だと思うものを愚直に、かつ妥協せずにつくっていくことだと改めて実感しました。
今回は空間づくりというテーマで書きました。もはや自分が何屋さんなのかよくわからない(笑)そもそもこの記事に需要があるのかもわからないけれど、書きたすぎたので書きました。
でも、ぼくの中で「熱量」というものを考えるのは一つの大きなテーマで、それをカタチにしながら自身でも体験できたとても良い経験でした。こういう機会をくださったみなさんに大変感謝しています。
今回も長文にもかかわらず、お付き合いくだってありがとうございました!
Twitterでも記事になる前のネタをつぶやいてます↓
ぼくたちFORCASの会社紹介資料も公開中。
⇒『FORCAS会社紹介資料』
SaaSway Conferenceに関連するnoteはこちら↓
・『7.24 SaaSway Conferenceが終了。 カンファレンスをつくるということ』
・『重責感の伴うわくわく感を体感してほしい。 7.24は狼煙を上げる日』
デザイナーゆうきさんによる、SaaSway Conference クリエイティブの舞台裏の記事も近日公開予定。