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日本においてオフラインマーケティングが強力な手段である2つの理由

こんにちは、酒居です。

ぼくたちFORCASでは、マーケティング戦略の柱として、セミナーやイベントを中心とした「オフラインマーケティング」に取り組んできました。

普段は戦略や施策について書いてますが、今回は「国内のBtoBマーケティングにおいて、そもそもなぜオフラインマーケティングが有効な手段となりえるのか」について書こうと思います。

日本において「オフラインマーケティング」が強力な手段である2つの理由

ぼくは国内におけるマーケティング戦術として、自社セミナーやイベントを中心とした「オフラインマーケティング(イベントマーケティング)」はとても強力な手段だと考えています。その理由としては大きく2つあります。

理由① 圧倒的な物理的距離の近さ:東京一極集中型の経済構成

日本でオフラインマーケが有効である理由として、まず「圧倒的に物理的距離が近い」というメリットがあります。

日本の企業は特に東京に一極集中型であり、海外に比べて圧倒的に物理的距離の近さがメリットといえます。企業の業種にもよりますが、多くの企業が電車等の交通機関を利用すれば、30分〜1時間程度で直接訪問可能な距離にあります。

大阪-東京間でも3時間もあれば行き来可能で、これは米国ではボストン-ニューヨーク間に相当します。

米国のイベント事情と日本は大きく環境が異なります。米国ではその地域一帯のリードを一気に獲得することが目的となることが多く、優先順位が高いエリアを特定し、数万人規模の巨大なイベントを企画して、一気にリードを獲得するという形が多いです。

イベントは泊まり込みで来ることが前提であり、立地を活かして小規模で小回りよくセミナーをやるよりも、いかに大きくとりにいくかが重要となります。

イベントの設計や考え方が米国と日本とは根本から異なっている中で、圧倒的な近さが日本におけるイベントマーケティングの特殊な環境を構築している要因になっているといえるでしょう。

逆に言えば、これまで米国と比較してマーケティングが発展せず、営業が重視されてきたのも、この物理的距離の近さに要因があるんじゃないかと思います。

イベントは物理的距離だけでなく、精神的距離も近づける

しかし、現代においてはどれだけ物理的距離が近いと言えども、自分がアプローチしたい企業にアプローチできる環境があるとは言えなくなりました。

情報がインターネット上で主体的にとれる今日。飛び込みやテレアポによるアプローチはほぼ受付でブロックされます。仮にその企業にアプローチできたとしても、自分があたりたい部門のキーマンに会えるとも限りません。

近いように思えて遠い。物理的距離は近いままに、潜在顧客との精神的距離が遠くなった状態。それが現代日本の営業環境だと思います。

そのためターゲット企業を開拓するには、顧客自ら能動的に動き、自社サービスへと興味関心を持っていただける環境プロセスをつくることが求められるようになりました。

インバウンドマーケティングの概念が国内でも重視されるようになった背景もここにあるかと思います。

そして、インバウンドによるマーケティング活動において、物理的距離の近さは非常に有効な武器となりえます。

ターゲット顧客がどうしても聴きたいコンテンツを用意したセミナーやイベントをつくることができれば、アウトバウンドでは動かない相手でも、先方自らが自社のイベントやセミナーへ参加してくれます。

物理的距離が近いことは、イベントへ行くハードルを下げてくれる大きな要因となります。

ターゲット企業のキーマン自ら、わざわざ来てくれる。自発的に行動していただき、労力をかけていただけることで、より聴く体勢をつくっていただけるようになります。相手の精神的ハードルを越える意味でも、これはとても大きなメリットといえるでしょう。

オンラインセミナーはオフラインの代替手段となるのか

では最近注目が集まるオンラインセミナー(Webセミナー)はどうか。

実際に米国では物理的距離の遠さから、直接会ってのコミュニケーションは難しい。そのため、代替手段としてオンライン上でのコミュニケーションが活発です。

国内においてもマーケティング施策の一環として、オンラインセミナーを有効活用している事例は多くあります。

物理的に距離が遠い地方企業や、都内でもイベントへの参加が難しいビジネスマンの方々など、これまでオフラインマーケでカバーできていなかった層へのアプローチとして、Webinarを含むオンラインセミナーは有効な手段でしょう。

なので、オンラインセミナーはだめだというわけではなく、それも合わせて実践してみるのが良いんじゃないかと思います。

一方、FORCASではこれまであまりオンラインセミナーには力を入れず、あくまでオフラインでのイベントやセミナーを重視してきました。

それは、オフラインマーケが日本において強力な手段である2つ目の理由にあります。

理由② 「直接話す」ことを重視してきた日本の企業文化

現在インサイドセールスが注目を集め、訪問せずともアプローチから受注まで一気通貫で営業プロセスを行う企業も増えています。

訪問することなしでお客様とコミュニケーションし、エンゲージを高めることができる。インサイドセールスは営業活動の圧倒的な効率化と生産性向上をもたらしています。

実際に我々もインサイドセールスは、営業プロセスの中でとても重要な位置づけとして機能しています。

ですが、そんな状況でもあえて言うと、やはり日本はまだ「直接会う」ということを重視する文化が健在だと思っています。

例えばレイヤーが上の方になればなるほど、いきなりオンラインでのコミュニケーションはなかなか難しい。また、まだ興味喚起ができていない潜在顧客層に対しても同じ状況といえるでしょう。

そんなオンラインでアプローチできない層に対して、「直接的なコミュニケーション」でまずは信頼関係を構築して興味喚起を促すことは、現代のデジタル社会においても有効な手段となりえます。

ビジネス展示会が現在でも盛り上がりを見せており、イベントマーケティングが多くのB2B企業で実施されている背景には、この「直接会う」メリットがあると思います。

人間は直接会うことでコミュニケーションが活性化する

これも結局は物理的距離の近さがなせるものですが、島国国家である我々日本人の文化の根底に残っているのだと思います。

古来より日本人は、直接訪ねて学問や修養を得ることを行ってきました。吉田松陰も知見を得るために九州へ遊学したり、江戸遊学や肥後藩など各藩の有識者に会いに行っていて、ついには脱藩してまで東北遊学へ行っています。

幕末には特に日本各所の有識者のコミュニケーションが活発化し、交流が盛んになりました。電話などの代替手段がなかったということももちろんですが、書面でのやりとりだけではなく、直接会うことは昔から重視されてきた一種の文化だと思います。

また、直接会うことの重要性については、米国においても研究が重ねられています。WIRED.jpの記事『「実際に会う」ことの重要性:研究結果』の中でも、ハーバード大学の経済学者Edward Glaeser氏の著書を引用し、人は物理的に一緒にいるときに最も上手くコミュニケーションがとれることが述べられています。

「直接会って話す機会をつくる」ということは顧客の興味を喚起し、顧客との信頼関係を構築する上で、マーケティング活動上とても有効な方法です。

インサイドセールスが顧客と「直接話す」機会をつくる

ぼくたちがオフラインマーケを重視しているのは、「インサイドセールスが顧客と『直接話す』機会をつくる」ことを目的にしているからでもあります。

インサイドセールスといえば、主に電話やメール等での顧客アプローチをメインに想定されるケースが多いと思います。

ですが、ぼくたちFORCASでは、ぼくがマーケティング&インサイドセールスチームを立ち上げた当初から、セミナーやイベントへのインサイドセールスメンバーの参加を重視してきました。

これは当日運営のために人的リソースが足りないということもあったんですが、それ以上の目的があります。

それは「インサイドセールスと参加者がお互いに顔を合わせる」ということ。

インサイドセールスの顔と人となりを来場者(顧客)に知っていただくことで、その後のコミュニケーションを円滑化し、お互いの信頼関係構築が促進できます。

ぼくたちFORCASのインサイドセールスチームは、現在フィールドセールスへの商談機会供給が主なミッションであり、普段電話やメールなどの顔が見えないオンライン上のコミュニケーションがメインになります。

しかし、顔のわからないコミュニケーションはなかなかハードです。相手としてもいきなり知らない人から連絡がきて、話しをすることは心理的ハードルも高いでしょう。

そのため、電話越しの声だけで相手とのラポールを形成するのはメンバーそれぞれの努力と才能が必要になります。

商談の機会をいただく前提として、やはり「人と人との信頼関係」が重要だと考えています。

そこで、日本に根付く「直接会う」文化をインサイドセールスでも有効に活用しています。

具体的には、インサイドセールスメンバーにセミナーの運営に関わってもらいながら、参加者と積極的にコミュニケーションをとってもらうようにしています。

例えば、セミナーやイベントの来場者リストを事前にインサイドセールスメンバーへ共有し、当日は会場運営は運営メンバーが行い、インサイドセールスメンバーは声掛けや挨拶に集中してもらいます。

インサイドセールスとお客さん、それぞれの顔と人となりがわかるコミュニケーションが生まれることで、電話越しに自分は誰と会話しているかを知り、顔がわかる「人」として会話ができるようになります。

インサイドセールスはお客さんがその企業と初めて会話する入り口であり、企業の第一印象をつくります。

だからこそ、機械的なコミュニケーションではなく、より人となりがわかる人間的な交流をつくり、商談の前に必要となる信頼関係を生むことを心がけています。

また、副次的メリットとして、お客さんと直接会ってインサイドセールスがお話しすることによって、より具体的なヒアリングが可能になったり、別ラインへのご紹介を促したりすることもできるようになります。

そして現在では、ナーチャリングを目的とした数十人規模のセミナーについては、昨年でカタチができてきたこともあり、さらにパワーアップを進めてもらうため、今年からインサイドセールスチームにおいて企画運営を進めてくれています。

オフラインイベントは「体感」を伝えることができる手段

オフラインマーケティングは単に情報伝達ができる場ではありません。

その空間を通して、自分たちが伝えたい世界観を参加者一人一人に「体感」していただくことができる。

これこそがオフラインイベントの最大の強みと言えるでしょう。

新しい考え方や概念は、口頭やテキストでどれだけお話ししたとしても、なかなか伝わりきることはできません。大抵の場合「なるほどなぁ」という情報の入手でとどまってしまいます。

そこでぼくたちがやっているイベントとして、たとえば『ABM入門ワークショップ』があります。

このワークショップは、ぼくたちFORCASでセミナーを始めた当初から毎月続けている人気のセミナーです。

ぼくたちが実践し、FORCASのプロダクトで実現しようとしているマーケティング戦略『ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)』は新しい概念で、まだまだ日本での実践例は少ない状況です。

そのため、言葉のみで概念をお伝えしても、なかなかお伝えしづらく、実感としての理解に至るまでには時間がかかります。

そこで、実際に自社のケースでABMを考えていただくワークを実施することで、「体感」としてABMを理解していただくことができるようになります。

このワークショップはユーザーさんにも人気をいただいており、一度参加いただいた方が自分の部門メンバーを連れてきてくださるケースもあります。

自分たちの伝えたいビジョンや概念をお客さんへ「体感」して理解していただける。オフラインイベントの価値は工夫次第で大きな効力を発揮することが可能です。

ニーズの刈り取りではなくニーズ喚起。そのためには「体感」が重要なキーとなる

さらに言うと、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の実践において、オフラインマーケティングは非常に相性が良い戦術です。

ABMはまず最初にターゲット企業を絞り込み、その企業に対して逆算的な発想でマーケティング戦略や営業戦略をつくっていきます。

ターゲット企業を特定し、絞り込んでいる為、単に顕在化しているニーズを刈り取るだけでなく、まだ潜在的なニーズを掘り起こすことが重要となります。

ニーズを喚起するためには、単に情報を発信するだけでなく、潜在顧客に実際に「体感」を通じて、世界観を理解していただくことが重要となります。

そのため、体感を通して潜在顧客へ自分たちの世界観を伝えられるオフラインマーケティングは、国内において強力に効果を発揮します。

おわりに: コンテンツは「for you」でつくる

企業セミナーやイベントは、これまでも多くの企業で長年実施されてきました。

一方で「セミナーは開催しているものの、なかなか集客できない。受注や成果に結びつかない」という声は多いのではないかと思います。

誤解を恐れずに言えば、そのような場合「オフラインマーケの皮を被ったアウトバウンドセールス」になってしまっていることが往々にしてあるんじゃないかと思います。

たとえば、おもしろそうなタイトルに惹かれてセミナーに参加してみたら、実際には主催企業のサービス紹介がひたすら繰り広げられたというパターンや、そもそも集客のタイミングから「自社サービス説明会」を提示しているパターンがあったりします。

後者の場合であれば、本当にそのサービスを検討してくださっている方であれば参加してくれるので、たとえ参加人数が少数であったとしても、その効果は大きくなるでしょう。

しかし、前者の場合は期待した内容が聞けず、さらに興味がまだ湧いてもいないフェーズで、開催企業が伝えたいことだけをただ聴かされた参加者は、サービスに興味が高まるどころかむしろ嫌気がさしてしまいかねません。

どれだけ物理的な距離が近く、参加ハードルが低いとしても、根底の考え方が「自分たち観点」だとセミナーはなかなか機能しないというのがぼくも経験してきたところです。このあたりのことは、こちらの記事↓で書いてるのでよければご覧ください。

ターゲット顧客が「絶対に参加したい!」と思うコンテンツをつくる。

これがセミナーを行う前提としては必要だと思いますが、顧客思考で企画をつくり、for youの想いでイベントを開催すれば、オフラインマーケティングはこの日本において非常に強力な武器になると考えています。

ターゲット層への興味喚起ができるという短絡的なことではなく、「自分たちがつながりたいお客さんとの信頼関係を構築しながら、サービスとお客さんをつなぐ機会をつくる」ことができる手段となると思います。

ぼくたちもまだまだ試行錯誤の毎日ですが、オフラインマーケティングの新たなカタチを目指して取組みを進めています。ぼくたちの取組みが少しでもご参考になれば嬉しいです。


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酒居 潤平 (Jumpei Sakai)
読んでくださってありがとうございます。まだまだ試行錯誤の連続ながら、自分たちの日々の取組みから得た気づきをシェアしていきたいと思っています。