有価証券の売買 1 自己資産の運用
金融商品取引法第2条第8項第1号の「有価証券の売買」は、いわゆる自己売買をいいます。
では、一般企業が自己資金を上場株券等で運用することは「金融商品取引業」に当たるでしょうか。
結論としては、当たりません。この結論で特に不都合はないと考えられます。
一般に「売買」は、取引所売買と相対売買、自己の計算で行う売買と他者の計算で行う売買という計4類型の売買をいいます。
まず、上場株券等の取引所売買は、自己の計算であろうと他者の計算であろうと、取引所の会員しかできません。取引所の会員は、通常、証券会社などの金融商品取引業者です。
他方で、上場株券等は、取引所を通さず、1対1の相対で売買することもできます。証券会社などの金融商品取引業者が上場株券等を1対1の相対で買い付け、これを転売することは可能です。
しかしながら、一般企業がこのような相対売買を行うことは、パブコメのいう「対公衆性」を伴い、金融商品取引業に当たるとされる可能性が高いと考えられます。
これに対し、一般企業が自己のために行う上場株券等の相対売買(事業承継の手段として行われる場合など)は、「対公衆性」を欠き、金融商品取引業に当たらないと説明されることが考えられます。