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オリンピック

確かアテネオリンピックだったと思う。当時ぼくは小学3年生だった。日本代表は連日の大活躍で、毎日ニュースに取り上げられていたことを覚えている。体操ニッポン復活とか何とかで世間は大盛り上がりだった。

ぼくは運動音痴で体育は好きじゃなかった。それでもぼくなりに頑張っていた。その時の体育はマット運動だった。授業では前転や後転などマット運動としては基本的なことをやっていた。ぼくは前転ですらやっとで後転なんてもってのほかだった。

何週かの授業の後、達成度テストが行われることになった。今までの体育であれば、前転を何回するなどの課題がだされそれの出来で成績が決定されるはずであった。しかし、オリンピックイヤーである。体操ニッポンの活躍に感化されたのか担任の先生は、皆の前でマット運動の演技をしてそれで成績評価をすると言い始めた。

バク転や側転などしてきっちりポーズを決めると良いとか、オリンピックに出場してる気持ちでやってと説明した。ぼくは人見知りがちでかなりの恥ずかしがり屋で、人前で何かをするのが大の苦手であった。いまでもそうであり、どんなことをしても変な汗が出てくるのである。この時も例外ではなくとても憂鬱な気持ちだった。

とうとう自分の番が来た。ぼくは少し前にも述べたが前転しかできない。前転しかできないことの恥ずかしさと気まずさから早く終わりにしてしまいたかった。それでも何とか出来る限りのことをしたつもりだった。そんなぼくに対し、担任の先生は「もっとオリンピックらしくポーズを決めようよ」

とても恥ずかしかった。とても悔しかった。泣きたかった。

ぼくはこの時以来、オリンピックは嫌いだし、教師というか大人に対してあまり良い感情を抱いていない駄目な人間になってしまった。

ぼくが駄目な人間であることをこの出来事が原因ではないと思うが、オリンピックの話題を聞く度にこの出来事を思い出す。

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