流星のインク

 星がひとつ、流れた。

 星の記録屋が手を止めたのは、星の行方を書き込んでいた羽ペンのインクが切れてしまったからだ。その羽ペンは大きな桜色の本に星の記録を書きこむためのもので、当然ながら星の記録屋がいつも持ち歩いているものだ。ペンにインクが十分あるときには羽がインクの色に染まっているのだが、今や羽はすっかり白くなってしまっていた。

 星の記録屋が羽ペンを持った手を夜空に延ばすと、星のないところを選んでペン先を浸した。ほどなくしてすっかり夜空に染まった羽ペンで、星の記録屋は星の行方を書き込み続けた。


前作はこちら。

元ネタはこちら


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