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流星の記録屋。

 星が一つ、流れた。

 大きな桜色の本にその行方を描きこむと、星の記録屋はふうと一つ息をついた。星の記録屋は、全ての星の行方を知っていた。ならばいまさら記録などは必要なさそうなものだが、星の記録屋は今日も流れる星の行方を記録し続ける。そうしてもう、どれほどの月日が流れただろうか。それは、星の記録屋がブレスレットをつけるようになる前だったか後だったか。今日はこのくらいにしておこうと思い、星の記録屋は腰を上げた。見上げた空には満天の星。向日葵色の瞳の視界の端に流れた星を見逃さず、記録屋は立ったまま羽ペンでその行方を書き込む。

 もう一度星空を見まわしたあとで、今度こそ記録屋はねぐらへと歩き出した。

 明日は、行方を知らない流星が見つかるかもしれない。



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