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月のインク

 星が一つ、流れた。

 いつものように流星の行方を夜空に浸した羽ペンで大きな桜色の本に書き込んでいた星の記録屋は、ふと思いついて、夜空に浮かぶ月にペン先を浸してみた。その夜はちょうど、満月だった。

 羽ペンが月の輝きを吸い上げるとインクとなった月の輝きは夜空の色と混ざり合って輝く月夜の色となった。流星の記録屋がそのインクで流星の行方を書き込むと、その行方は記録屋の知るものとは違っていた。

 星の記録屋が見上げた視線の先では月が少し輝きを増したように思え、誰も見ていないところで本に描かれた月が輝いた。


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