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【感想】『14歳から考えたい レイシズム 』を読んで、「質問」から始めようと思いました。

 本記事は「note×すばる舎」の合同企画「#読書の秋2021」の課題図書『14歳から考えたい レイシズム 』(アリ・ラッタンシ 【著】/久保美代子 【訳】)の読書感想文です。過去に趣味で撮影した写真を交えて読書感想文を書いてみました。本企画の詳細は下記に記載されています。

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将来的に人類が宇宙に進出して、他の惑星に移住するような時代が到来したとする。そのような世界には、地球出身の地球人と△△星出身の△△星人がいるとする。ある日、地球人が初対面の△△星人から「私達のような△△星人と比較して、地球人は劣っている!」と突然言われたら、地球人はどう感じるだろうか?。一方で、△△星人が初対面の地球人から「われわれ地球人は△△星人より優れている!地球人と△△星人は同等であるはずがない!」と突然言われたら、△△星人はどう感じるだろうか?。地球人も△△星人もルーツは同じ地球の人類のはずなのに、、、、。こんな私の妄想を「ただの妄想」で終わらせるためには、現代の「レイシズム」に対して適切に向き合い、将来に禍根を残すことがないようにしていく必要があると感じている。

しかし、「レイシズム」に関して知識がない私は、何をどう考えればよいのか、まったくわからなかった。そんな私に本書は過去から現在までの欧米社会の「レイシズム」の変化やその意味を教えてくれた。「レイシズム」に関する話題は「言葉」の取り扱いに細心の注意が必要な話題の一つである、と私は思っている。その点において、本書では各ページの上段に本文中の用語を解説するための注釈が豊富に記載されている。読者が理解を深めるために、訳者の方(久保美代子さん)や編集者の方々の多大な配慮を感じることができた。

本書を読み終えたいまでも、「レイシズム」に関して私の理解が足りていない部分は多々あると感じている。繊細な話題のため、正直なところ読書感想文を書くかどうか悩んだ。「人間の輪郭のみが描かれた絵」に対して「肌の色を塗って下さい」と頼まれた場合、迷わず「薄いオレンジ色」を選んでしまう視野の狭い私が果たして本書の感想文を書けるのだろうか。そこで、『14歳から考えたい』というタイトルに込められた想いを自分なりに考えてみることにした。

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原書はオクスフォード大学出版“A Very Short Introduction”シリーズの「Racism」である。和訳書のタイトル『14歳から考えたい レイシズム』となっている。内容としては年齢に関係なく知っておいた方が良い、と私は思っている。本書の内容を14歳から考えるとすると、「周囲の大人」と議論して理解を深める作業が必要になってくると思う。このとき、本書の内容に関して、何らかの見解を持っている「周囲の大人」の存在が重要になってくる。「レイシズム」に対して14歳が議論できる環境を整えておくことが「周囲の大人」の責務である、と本書は示唆しているのかもしれないと思った。そう考えると、年齢的には大人に分類される私は、何らかのアウトプットを出さなければならないと思い至った。ただし、私の理解不足のため「レイシズム」に関して論じることはできないので、本書を読んで感じたことや考えたことを備忘録的に書きたいと思う。専門家ではない私の読書感想文なので、寛大な心で読んで頂ければと思う。

ところで、「すばる舎」のHPには本書の内容を下記のように紹介されている。本書を読み終えて、改めて下記の内容紹介を読むことで、本書の主題を理解する上で助けになった。

「現代のさまざまなレイシズムを簡潔明瞭に分析するとともに、そのルーツを解説し、新たなレイシズムの形態に私たちが疑問を投げかける後押しもしてくれる貴重な一冊。教養課程の選択図書として最適!」
──ハワード・ワイナント(カリフォルニア大学教授)                                 前世紀末から現在まで続々と新たなトピックを世に送り出しているオックスフォード大学出版の教養入門書《A Very Short Introduction》シリーズ。そのなかから近年とくに注目されているホットイシューを取り上げる。
第一弾は、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動で世界に再燃・噴出した《レイシズム=人種主義》の問題。
《人種》という実はとらえどころない《ものさし》で、あちこちに《壁》をつくって対立してきた世界史をひもとき、人間存在のありようと未来を問う。多様性が叫ばれる時代、しっかりと考えておきたい《人種と差別》の話。

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本書から「“人種”はただの概念である」ということを学んだ。生物学的な実体が存在しない“人種”は一種の幻想である、という著者からのメッセージを受け取った気がする。著者は、「遺伝学では人類を生物的に分けることはできない」と繰り返し強調していた。しかしながら、“人種差別”は存在している。“人種差別”という存在が生まれたのは何故なのか?。本書では、まず歴史的な視点から“人種”という概念の成り立ちについて丁寧に解説されていた。過去の植民地政策に起因する「支配する側」と「支配される側」の関係性、および「支配する側の人間」が意図的に、制度的に、構造的に、そして組織的に「支配される側の人間」を区分する過程を知ることができた。「制度の効果」を狙って意図的に推し進めた人達がいる一方で、「制度の弊害」で苦しめられている人達がいることを、本書は歴史的な経緯から明らかにしていった。歴史を知ることで、「どういった仕組みをつくった結果、人々がどうなったのか?」ということを学べた。帝国主義、奴隷制度、植民地政策など“人種”に関連する世界史の一連の流れを体系的に知ることができ、今まで私の中で曖昧だった知識を整理することができた。

本書では、私が知らなかった多くの言葉たちと出会うことができた。例えば、人種化、科学的レイシズム、構造的・制度的レイシズム、インターセクショナリティ、白人性・黒人性などである。相手への明らかな侮辱行為である「古典的なレイシズム」と比較して、特定の集団の中に慣習として根付いてしまった「新たなレイシズム」を可視化するのは非常に厄介であると感じた。特に、本書で紹介されているように政治家達の巧みな演説の中に盛り込まれている「新たなレイシズム」は、その集団から外にいる人たちでないと見抜くのは難しいと感じた。その要因として、“国民”という概念が“人種”と密接につながっており、一般的な言説のなかで“人種-国民-エスニシティ”が互いの領域に入り込んで複雑な関係性を構築しているということを知ることができた。

本書の最後は「レイシズムの研究者はだれも、未来を楽観してはいないのです。」という一文で締めくくられていた。近年の世界の動向に対して著者は、SNSでのヘイトスピーチの増加や、人種化されたエスニック・マイノリティに対する身体的な攻撃を憂いていた。様々な形態で現れる「レイシズム」であるが、少しずつでも改善されていって欲しいと強く思う。

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本書を読んだ私には、「レイシズム」をどう解決していけば良いのか、という問いかけに対してまだ明確な答えはない。明確な答えはないが、まずは「質問」から始めてみようかと考えている。冒頭に記載した「人間の輪郭のみが描かれた絵」に対して「肌の色を塗って下さい」と頼まれた場合、「肌の色の選択肢は多いが、あなたは何色を想定していますか?」と問いかけてみようと思う。それは人間の多様性に関する議論などに発展していくと期待している。同様に、地球人が△△星人に対して「われわれ地球人は△△星人より優れている!地球人と△△星人は同等であるはずがない!」と差別的な発言をした場合は、「なぜ、△△星人は劣っていると考えるのか?」と地球人に問いかけてみる。掘り下げて質問していくことで、発言の背景に隠された社会構造的な課題や制度的な矛盾が明らかになっていくのではないかと考えている。そして、「過去」の歴史を繰り返さないために、建設的な議論に発展していくと期待している。

原書の著者であるアリ・ラッタンシ氏、理解しやすい日本語に訳して頂いた久保美代子氏、そして本書を日本にいながら楽しめるようにご尽力頂いた編集者の方々に感謝致します。本書から「レイシズム」に関して、とても多くの気づきを頂けました。ありがとうございました。

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#14歳から考えたいレイシズム #読書の秋2021 #すばる舎

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