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【感想】『ビジョナリー・カンパニーZERO』を読んで、「地図」を手に入れました。

本記事は「note×日経BP」の合同企画「#読書の秋2021」の課題図書『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』(ジム・コリンズ【著】、ビル・ラジアー【著】、土方奈美【翻訳】)の読書感想文です。過去に趣味で撮影した写真を交えて読書感想文を書いてみました。本企画の詳細は下記に記載されています。

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私は起業家や中小企業経営者ではないが、製造業で働くエンジニアとしてプロジェクトに応じて少人数のチームを率いることがある。チームを率いる場合は、チームの状況や成果を組織上層部に報告しなければならない。報告する際に経営的視点も加味することができれば、チームメンバーの活躍をより適切に伝えることができると思い、ビジネス書として有名な「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの中から最新刊の本書を読んでみることにした。

本書は『ビジョナリー・カンパニー』シリーズが発行される前の1992年にジム・コリンズが記し、日本語訳されずにいた『Beyond Entrepreneurship(ビヨンド・アントレプレナーシップ)』の改訂版とのことであった。オリジナル版の文章はページが灰色で構成され、新たに書き下ろされた文章はページが白色で構成されており、改定箇所が読者にとって一目瞭然になるように配慮されている。本文中にも新たに書き下ろされた部分には「本書の新しい視点」と記載されている。主な対象読者は起業家や中小企業(大企業のなかの小さな事業部門も含む)のリーダーを想定しているとのことであるが、組織の大小や役職に関係なく幅広い世代の読者にとって多くの気づきが得られる内容であると感じた。

本書の末尾には『Beyond Entrepreneurship(ビヨンド・アントレプレナーシップ)』の序文が再掲されており、本書の冒頭の新たな序文と見比べると、本書の位置づけがより明確になった。「起業家や中小企業のリーダー」に対する強い関心と、ビル・ラジアー氏のレガシーを歴史に残したいという著者の想いを知ることができた。そのため、第1章で語られる共著者(ビル・ラジアー氏)との出会いと別れは印象深く、人の縁の大切さを実感できる内容であった。

本書を読み進めながら気に入った言葉のページに付箋を貼っていくと、すぐに本書は付箋でいっぱいになってしまった。各章の節ごとに有意義な情報が多く含まれていた。経営者が考えるべきことを知ることで、そこから逆算して自分自身の行動指針を得ることができた。読書前の自分自身と読書後の自分自身を比較してみると、「組織の中の人材の重要性」をより強く意識できるようになった。多くの気づきを頂いた本書について、新たに書き下ろされた内容の中から「人材」「幸運」「地図」の3つについて感想を書いてみることにする。

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まず、本書の2章に該当する「人材」について述べる。2章のタイトルが「最高の人材がいなければ最高のビジョンに意味はない」となっている通り、「人材」について多くの示唆に富む意見が述べられており、適材適所に人材を配置することの重要性が語られていた。本章の冒頭で述べられている「正しい事業のアイデアより、正しい人材のほうがはるかに重要だ」という言葉には感銘を受けた。世の中で「人材」という言葉を「人財」と表現しているのはよく見かける。私が所属するエンジニアリング業界でも「技術は人に宿る」ということはよく言われている。「人材」の大切さについては認識しているつもりであったが、本書で書かれているように「人材は、経営陣のミーティングで真っ先に議論されるべき経営指標である」というほど大切であるという認識はなかった。「まず人を選ぶ」への発想の転換の必要性を痛感した。また、「やりがいのある仕事」の根底には「人と人が頼り合う文化の醸成」が不可欠であるとのことであったが、仕事の成果を期待している他者の存在の大きさを改めて認識した。自分自身がチームを取りまとめる際には、文化こそが戦略であるという考えのもと、チームメンバー間の相互理解の文化の醸成に励みたいと思った。一方で、自分自身がチームメンバーの一員である場合は、文化の醸成に寄与できるように行動していかなければならないと思い至った。

つぎに、本書の5章に該当する「幸運」について述べる。5章のタイトルが「幸運は諦めない者に訪れる」となっている通り、「幸運」の捉え方について語られていた。本章では「成功というコインの裏面は失敗ではなく、成長だ」という言葉に感銘を受けた。発明家トーマス・エジソンの伝記などでよく登場する「失敗ではない。 うまくいかない方法を1万通り発見したのだ。」という言葉を思い出した。「失敗ではなく成長機会の獲得」と考えれば、 失敗に対する心構えも大きく変わると思った。また、本書では「幸運な出来事」は3つの基準<(1)自分が引き起こしたものではない、(2)重大な結果を引き起こす可能性がある、(3)意外性がある>を満たすものと定義し、幸運からより多くのリターンを得るようにと述べていた(運の利益率)。巡ってきた幸運を「どう活かすか」と考えるためにも、事前に「幸運」に備える準備力の大切さを痛感した。諦めず粘り強く物事に取り組み、自分の運命に対して責任を引き受ける覚悟が必要である。自分自身がチームを取りまとめる際には、チームメンバーとともに「幸運」を逃さないための準備を徹底したいと思った。一方で、自分自身がチームメンバーの一員である場合は、運を味方につけれるように「成功と成長」の相互作用を最大限に活かしながら物事に取り組みたいと思った。

そして、本書の6章に該当する「地図」について述べる。6章のタイトルが「偉大な企業をつくるための「地図」」となっている通り、本章の「地図(ザ・マップ)」の活用について語られていた。本章では「偉大な会社を動かすもの ザ・マップ」そのものに感銘を受けた。著者の長年の研究の集大成を可視化している点が素晴らしく、そして読者としてとてもありがたく思った。本章の「地図」を構成する原理原則に関しては、既に出版されている『ビジョナリー・カンパニー』シリーズと対応づけて説明されており、各原理原則に著者の情熱を感じることができた。自分自身がチームを取りまとめる際には、「地図」という共通概念のもとにチームメンバ―と議論することで、誤解や認識不足を回避することができると思った。一方で、自分自身がチームメンバーの一員である場合は、「地図」で自分自身のポジションを確認することができ、さらに進むべき方向も明確になると思った。ただマップを見るだけでなく、マップを構成する原理原則を理解し、着実に実践していくことが大切であると感じた。

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本書では、「人材」「幸運」「地図」以外にも、「リーダーシップ・スタイル」「ビジョン」「戦略」「イノベーション」「戦術の遂行」について語られている。経営者にとって必要な多岐にわたる話題を取り扱う 本書であるが、どの章も一切の妥協が無い完成度の高さには驚かされるばかりである。

「ビジネス書は読んで感銘を受けたとしても、数日経てば内容をあっさりと忘れてしまう」と言われることもあるかと思うが、本書の場合は6章の「地図」が人間の忘却を防ぐチェックリストの役割を果たすと思う。なぜならば、「地図」に記載された言葉をすぐに説明することができなければ、それはきっと忘却の予兆であると考えたためである。

本書を通して、経営者が考えておくべきことを学ぶことができたので、自分自身がチームを取りまとめる際には、従来よりも俯瞰的な視点から、組織上層部にチームメンバーの活躍をより効果的に伝えることができると確信した。

最後に、原書の著者であるジム・コリンズ氏とビル・ラジアー氏、わかりやすい日本語に訳して頂いた土方奈美氏、そして本書を生み出して頂いた編集者の方々に感謝致します。誠にありがとうございました。

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#ビジョナリーZERO #読書の秋2021

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