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雨と蓮の音
令和5年8月某日 台風は去ったが雨
台風は過ぎ去っても、雨は降り続く日々で。とある帰り道、小雨が降るなか急ぎ足で蓮畑の前を通った。
8月の蓮畑は、花は終わって、ただただ緑色の美しい葉が天に向かって伸びている。水面には蓮の実が落ちてフカフカと浮かんでいた。連日の雨で蓮畑の水嵩は増え、こちらの歩道まで水が溢れ出してきている。
「ぱすぱす、ぱすぱすぱすぱす…ぱらぱら、ぱらぱら…」
と、雨音の中に聴き慣れない乾いた音が耳に入ってきた。
「なんだろう?スカスカしてる。スカスカ。」
見廻すと、雨粒が蓮の葉に当たる音だとわかった。
「音がパスパスって聞こえる。だからハスっていう名前がついたのかな、なんて、そんなことはないか。」
柔らかくて間が抜けていて面白い音。蓮の葉は不思議な音の出る楽器のようだ。
行き道の時の激しい大雨の中では、聞こえなかった。少しの気象条件の違いで、聴こえてくる音が違うんだなぁ。
もっとゆっくり不思議な音を聴いていたかったけど、そうはいかなくて。
振り返ってみると、あの、ちょっと腑抜けた蓮の音は、「力を抜いて、一息つきなよ」にも聴こえるような。
そんな、ばたばたした日々の中のひととき。