見出し画像

あなたがローカルサーファーに怒られるのは、なぜ? もはや「お約束」のビジターvs.ローカル問題

坂本九が歌い、大ヒットした「上を向いて歩こう」。作詞者の永六輔は、ベストセラー「大往生」(岩波新書)の中でこんな言葉を紹介している。

「子供叱るな 来た道だもの 年寄り笑うな 行く道だもの」

愛知県にある犬山寺の掲示板から、永六輔が書き写したと言われている。子どものいたずらなどは誰しも身に覚えがあるので叱るべきではないし、自分もいずれ年をとるので老人を笑いものにすべきではないという意味だ。

サーフィンで言うと、「ビジターを叱り、ローカルを笑う」。ここ2〜3年は、特にその風潮がまかり通っているように感じる。「最近のビジターは……」などと目くじらを立てるローカルがいれば、一方で「俺がルールだ!」と海で舐めプするビジターもいる。要するにサーファーがあちこちでいざこざしているのだ。

僕はキホン、茅ヶ崎の海のローカルサーファーになるのだろう。でも、人に怒鳴ったり手を出したり、なんてことは一度もない。逆に知らない人から「パドルしてんじゃねーよ」と脅されたことがあるくらい。

例えると、散歩してる人に「歩いてんじゃねーよ」と言うくらい理不尽。今でも納得がいかない。

そんな僕も、あきらかに危険な行動をするサーファーが海にいれば注意する。でも思いやりを忘れずに、極力オブラートに包んでやさしく諭すようにしている。だって怒ったって気持ちよくないもん。

僕と同年代のローカルも同じ考えだ。青筋を立てて怒鳴ったりするのは、「メンツ」を重んじる一部の年配サーファーだけな気がする。その勢いも年々、弱くなってきているけれど。

こんなん来たらションベン漏らす

話を戻そう。ビジターとローカルのトラブルが多発している原因は、コロナ禍以降、単純にサーファー人口が激増したから。移住だったり業務スタイルの変化だったりで、波のいいタイミングを狙って海に行ける人が増えたのだ。

今は見渡す限り、どこのポイントも人だらけ。週末になるとコンディションはさらに悪化して、時にはライン上に「人・人・人・人」のフォーメーションで並ぶこともある。おい、ぷよぷよだったら消えてるぞ。

それに対して、地元のサーフィン組合も注意喚起をしたり、ローカル一人ひとりが“草の根運動”をしていたりするが、正直なところ、急激な変化に誰もついていけていないのが現状。まだ抜本的な解決策は見つかっていないが、今のところはビジターもローカルも、お互いを思いやることを忘れなければそのうち収束するのでは、と僕はのんきに考えている。

まぁ、そもそも“ビジター”と“ローカル”で分けること自体が対立構造を生む原因になるので避けたいところだが。要するに個人間の問題なので。

交通整理がなければ、そりゃ事故も起こっちゃうよね

ビジターは、大げさな挨拶やビーチクリーンは必要ない。でもせめて、初見のポイントに入るときは事前に情報を集めておくこと。海に入っても「俺、俺、俺!」なサーフィンはしないようにすること。海上がりに気が向いたら、片手分のゴミを拾うこと。

対してローカルは、ポイント独特のルールがあるのなら、それを“暗黙の了解”で終わらせずに明文化・声明化すること。あと気に入らないからといってすぐ怒鳴らないこと。やさしい口調で語りかけること。地元に誇りを持っているのは大変いいことだけれど、たまには波をゆずること。

それだけで、ずいぶんとハッピーな海になるし、サーフィン業界もよくなっていくと思う。小さなことでも、積み重ねれば変わっていくだろう。僕も徹底していくつもりだ。

冒頭で紹介した永六輔は他に、こんな詩を書いている。

生きているということは
誰かに借りをつくること
生きていくということは
その借りを返してゆくこと
誰かに借りたら誰かに返そう
誰かにそうして貰ったように
誰かにそうしてあげよう

誰もがやさしさを持てば、いい海に変わっていくはずだ。

R


『あなたがローカルサーファーに怒られるのは、なぜ? もはや「お約束」のビジターvs.ローカル問題』の記事は、インタースタイルの連載コラムを一部修正・加筆してまとめたものです。元記事はこちら⇧


 


いいなと思ったら応援しよう!