ただのラブストーリー Prologue
物心ついた時から、他の人には見えない"モノ"が見えた。
私にとって、その世界は普通で、他の人も同じだと、そう思っていたのに…
「真田ってさ、いつも誰と話してるの?」
「え…誰って、さちこちゃん」
「さちこって、誰?」
クラスメイトだと思っていた女の子は、他の子達には、見えていなかった。
「そっち系?怖いんだけど」
小学4年生の時、私は他と違うことに、気がついた。
「ただいま」
「愛理、おかえり。お父さん今日も仕事遅くなるみたいだから、ご飯先に食べてよっか」
『お父さんが不倫してるなんて、この子には言えない』
「…お母さん、ただいま。お父さん、仕事忙しそうだもんね」
そしてまた、突然聞こえるようになった、他者の心の声。
知りたくないことが、勝手に聞こえてしまう。
見えていた友達は、もう死んでいた人で、私にしか見えていない。
他の人の声が聞こえるのも、普通じゃない。
普通ではないことを知ってしまったその日から、世界がとても、怖くなった。