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背の高い方の着物

ずいぶん久し振りの投稿になってしまいました。
今日、来られたお客様とお話していて
お嬢様のご身長が175cmだという。。
お嬢様のご希望で無地の振袖をお誂えになられたとき、
無地の反物を2反用意してお仕立になったとのこと。
振袖だとそうなりますね・・・

うちのお客さまで180越えの方がいらっしゃいました。
その方のお着物のお仕立で試行錯誤した時のことを
思い出しまして
その時の覚書?を書いてみます。

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背が高い方が着物をお召しになりたい時
まず 反物を選ぶ段階で選択肢に限りが出てしまいます。
問題点は
裄が出ないのが1つ目。
身丈が出ないのが2つ目。
どこでどう繰り回していくか・・・
もしくは 何を優先して仕立てるのか。
今回は そんなお話です。

まず 裄。
昔の反物は幅も狭く(並幅9寸5分)で
取れる裄は 1尺8寸がぎりぎりのことも
多かったのですが この頃は一部の紬を除いて
広めになってきてはいます。
うちの店では 少なくとも1尺はあるものを
扱うようにしています。(無理なのもありますが・・)
1尺8寸5分?1尺9寸は無理なく取れます。
問題は 肩幅と袖幅の割合とバランスですが
これは 長くなるので次回に。
 
そして身丈。
紬や木綿を多く扱っていますが
身長のある方の場合、裄より身丈に
問題が出ることが多いです。
特に木綿・・・・。
元々反物の長さが短い上に縮む(--;
反物には12・9メートル、と書いてあるのに
地入れしたら 20センチも縮んでしまったり。
反幅は 反物を見ればすぐにわかりますが
長さは巻を全部解いて 湯のし・水通ししてみないと 
どれくらいの身丈が取れるのか判らないのです。

ご身長が 180センチのお客様がいらっしゃいます。
この方の着物をお仕立するのに
仕立屋さんを交えて ご本人と意見を出し合いました。 
仕立てる予定の反物を並べて・・・。

反物は湯のし水通しが済んで それぞれの長さを測ってあります。
ご本人は対丈で着るのも厭わない、とおっしゃいます。
事実、別の呉服屋さんで対丈で仕立ててもらった
着物もお持ちです。
さて 今回仕立てたい反物たちは・・・
反物によっては 身丈を4尺6寸取ると
袖丈が1尺2寸しか出ない。
身長からすると小紋や柔らかものなら
袖丈は1尺4寸は欲しいところです。
しかし うちでお求め頂いたのは木綿と紬。
袖丈は短くして キビキビ着るのも
普段着ならではの楽しい着方、とおっしゃって頂けました。
それなら 袖丈を短くした分、身丈に廻した方がいいのでは?
対丈は どうしても着崩れしやすくなります。
身丈優先で 寸法を決めることになりました。
厚手の木綿を除いて
揚げ無しなら 身丈4尺6寸、
袖丈 1尺2寸を確保できることがわかりました。
対丈にするには 何年後に裾が擦り切れてから
仕立て直しする時で充分間に合いますし。
最後の最後は 胴にハギを入れて
身丈を伸ばすこともできます。

丹波布という 厚手の木綿はどうしても短く
ご自分で洗えば さらに短くなる可能性があります。
この木綿の風合いは 
ざっくりと暖かで ほっこりとして
着慣れない内は 硬さがありますが
こなれてくると 柔らかく包む込むような温かさがあります。
そこで 出てきた意見は。。。

袖丈を最小限にして 
丸みを大きく、船底にしたら可愛いかな?
この生地なら対丈で半幅帯でも面白いかも。
生地が厚いから袖丸を大きくしたら
丸みを折り込むと厚みが出て
袂がゴソゴソしてしまうので切らなくちゃならない・・・
そうすると仕立て直しで袖を伸ばすことは出来ないけど?
対丈にすると衿の角度が強くなるので
襟元の合わせがきつくなるけど。
繰越をどうしたらきれいかな?
繰越5分じゃ大きいから、3分?2分??
衿幅はどうしよう?
対丈だと帯も低めに締めるのがカッコいいと思う。。

対丈、といっても
男物を女性が着るのではなく
女性用に対丈を仕立てるのですから 
着た時の姿が男装になってしまうのではなく
きれいに、それで着易い、
着崩れし難い形にしなくてはなりません。

お客さまと仕立屋さん、私の
試行錯誤はまだ続きます・・・。 
 
でも こうやって
こんな風に着物を着たい、
こんなことできないか、とご意見を頂いて
出来る限りの知恵を絞って
時には仕立屋さん、場合によっては
メーカーさんにも入ってもらって
意見を出し合える場を持つことは
とても楽しく 有意義な時間です。
 
どんどん疑問や意見をぶつけてください。
どうやったら 本当にいいものが作れるか
その人に合ったものができるのか
一緒に考えたいと思います。


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