久米島紬とその染め。
一時の沖縄ブームもすっかりなりを潜めました。
それでも紅型と久米島紬には根強い人気があります。
紅型や花織が南国の華やかな色彩を持つのに対し
久米島は一見地味な色目です。
しかし飽きの来ないその色は
土地の染料を使いこなした独自の美しさがあり、
泥染の中の赤茶や金茶、辛子の絣が息づいています。
久米島紬は1反ごとに染めるのではなく
一度に半年分~1年分の量を染めてしまいます。
染める前にはデザインを決めて絣をくくる作業があります。
久米島紬の中で一番有名で多いのが泥染で赤みのある黒。
大島紬の泥染もそうですが ただ糸を泥に浸しても染まりません。
ティチカ(シャリンバイ)と交互に100回以上も繰り返し染めることで
初めてあの艶のある美しい黒が染まるのです。
もちろん1日では染まりません。
ティチカを煮出した液を煮詰めて各々が自宅で染め、
それを共同の泥染場に持ち込んでは染めます。
繰り返し繰り返し・・・1日の中で染めては干し、染めては干し、
を繰り替えすのは日差しの強い沖縄ならでは。
でも雨が降ったら染められません。
朝日の昇る早朝から日の沈むまで重労働が続くのです。
泥に漬けず、ティチカだけで染めたものは赤みの強い深い茶色になります。
ティチカに似た色にグール(サルトリイバラ)があります。
これはグールの地下茎を細かく切ったチップにして煮出して煮詰め、
この液を別の溶器に移して浸しては干す、を繰り返します。
これも朝から晩まで、天気が良ければ十数回も漬けては干し、
夜になったら蒸し上げます。
翌日になればまた漬けては干し、漬けては干し。
数日~1週間ほどで好みの濃さまで染め上げます。
鮮やかな黄色になるのはフクギです。
フクギの根元の樹皮を煎じて沸騰しない程度の温度で煮染にします。
フクギは染まりやすいので10~20回の染めては干し、で大丈夫です。
近頃人気なのはグレーのゆうな染です。
ゆうなという木で染めていると思われがちですが
ゆうなの木を乾燥させてからカマドで墨になるまで焼き
この灰を粉にしたものを使います。
大豆を臼で挽いてご汁をつくり、
これとゆうなの灰、水を混ぜて甕で発酵させたもので染めます。
漬けては水洗い、漬けては水洗いを繰り返し1週間ほどかかります。
久米島紬の染色はどれもとても手間の掛かるもので
堅牢度も高い染です。
どの色も美しく それぞれに良さがありますね。