色の名前
着物の画像にコメントを付ける時に
色の説明は難しいです。
実感しやすいように 身近な名前を使ってしまいますが
本来、日本の色には美しい名前が付けられています。
古くは 花や自然界の色、染めるのに使った植物の名前が多く
江戸の頃から庶民の色への感心と欲求が高まったことから
様々な名前が付けられるようになりました。
庶民に身近な藍染は 染の濃度の段階によって
1つ1つ名前が付けられています。
薄い方から順に
藍白→あいじろ 水縹→みはなだ 瓶覗→かめのぞき
水浅葱→みずあさぎ 浅葱→あさぎ 薄縹→うすはなだ
薄藍→うすあい 花浅葱→はなあさぎ
浅縹→あさはなだ 納戸→なんど 縹→はなだ
鐵→てつ 熨斗目→のしめ
藍→あい 藍錆→あいさび 紺藍→こんあい
藍鐵→あいてつ 搗→かち
紫紺→しこん 留紺→とめこん・とまりこん
搗返→かちがえし 濃紺→のうこん
素人目には 区別がつかないほどの差だったりしますが
見分けて名前を付ける職人さんの 藍への愛を感じます。
また、目に付くのは 芝翫茶(しかんちゃ)、璃寛茶(りかんちゃ)、
市紅茶、路考茶(ろこうちゃ)、梅幸茶(ばいこうちゃ)など
役者にちなんだ名前です。
江戸時代には「四十八茶、百鼠」といわれるように
茶系、鼠系の色が多くできました。
茶とは 飲みもののお茶の色ですが
番茶の赤茶、煎茶の黄茶、抹茶の緑茶の三系統があり
それを基調にそれぞれの変相色ができました。
江戸時代は 庶民の服装が華美になるのを戒めた
奢侈取締令が何回も出されましたが
「茶・鼠・納戸はおかまいなし」とされていたので
様々な色にこれらの名前を付けて逃れたのです。
名前を付けて流行らせたのは・・・呉服屋です。
かつては呉服屋から流行が発信されていたのですねぇ・・・(しみじみ)
よく質問されるのが 江戸紫と古代紫の違いです。
江戸紫とは 八代将軍吉宗の頃、武蔵野でムラサキ草を育て
吹上御苑内に染殿を作って研究、奨励したもので
京の紫色に対して 新しい江戸の紫、という意味合いで
名付けられました。
京紫とは古代からの紫、という意味で古代紫と
呼ばれることもあります。
古代紫、となると貝紫のことを指す場合もあります。
江戸紫と江戸紫の色味については 諸説があり
「貞丈雑記」という江戸中期の本には
「紫色は今世京紫と云也。葡萄は今世江戸紫と云色也」とあり
葡萄色は赤味の強い紫なので江戸紫は赤味となりますが
別の記述には
「江戸紫と云う色は杜若(かきつばた)の花の色の如し」ともあり
そうなると青味の強い紫の感じになります。
私は お茶の先生に習った
「はんなりと赤味のあるのが京紫で
粋で渋いのが青味の江戸紫」という説を採りたいと思っています。
トップ画像は 京都の藤原さんの紬で
左から 経糸緯糸 100%日本茜。
経糸 茜 緯糸 紫根
経糸 茜 緯糸 刈安
経糸 茜 緯糸 橡
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